ゴーレム姉妹VSセバスタン
あわや眷族が巻き添えを食らうだけに終わろうとしたところ、レミオールのルー召喚という英断(偶然だけど)により窮地を脱した。
人化したミリーとはいえ、相手はSランクに対抗できる実力者よ。メンフィス共和国の再興とかおかしな事を言ってるし、この場で仕留める以外はない。
『見たことのないバトルギアですねぇ? たかが海賊の所有物だと断言するには早計とも言えます。どこの国に属するのでしょう?』
『……マスターはどこにも属さないし、海賊でもない。強いて言えばアイリーン?』
『アイリーン? 聞いたことのない名前ですねぇ。それにマスターと言いましたか? キミのマスターが神の眷属という事ですね。早く出て来るように呼び掛けてはどうです? さもなければキミたちが犠牲に――』
『……ならない。何故なら――』
シュッ――――ドゴォ!
『ナゴッ!?』
『お前はルーを本気にさせたから』
ザッ!
ロケットパンチを受けて空高く舞うセバスタン。それを追いかけ、雲を突き抜けたところで頭部をキャッチ。今度は真下へとブン投げた。
ドォォォン!
『グ……ググ……。な、なんだお前は――いったい何者だ!?』
『……ルーはルー。オリハルコンゴーレム。例え伝説の勇者と言えど、簡単にキズをつける事はできない』
『クッ、生意気なぁ!』
ダッ!
何とか立ち上がったセバスタンがルーに突っ込んでいき、怒涛のパンチを浴びせていく。
『なにがゴーレムだ、なにがオリハルコンだ、ボクが本気になればお前なんぞ一溜りもないんだ。神の眷属であるボクを怒らせたこと、後悔するがいい!』
ドゴゴゴゴゴゴゴッ!
『フハハハ! どうだ虫ケラ、ボクの動きについてこれまい!? 悔しかったら――』
『……悔しくはない。ついていく必要がないから』
『そんな負け惜しみ――』
――と言いかけ言葉を止める。
『バ、バカな……。あれほどの連打を受けて傷一つついてないだと!?』
『……そりゃもぅ。魔法でも使わない限りルーを倒すのは不可能。物理攻撃でルーに対抗するのは愚か者。もしくはバカ』
『クッ……グググ…………クソッ!』
ならばと真上に飛び上がり、先ほどと同じように両手を構えると……
『今度こそ焼き尽くしてくれる! 我が最大級の火計、灼熱の――』
『……脳天落とし』
ズガァァァァァァン!
『ゲボェア!?』
更に上空から降ってきた巨大なゴーレムにより、セバスタンは地上へと叩き落とされた。
『……お前はミリーを怒らせた。さっき殴られたせいで少しクラクラする。マスターにだってあんなに強く殴られたことはないのに。よってこの場で百倍返しが確定』
ゴーレムの正体はミリー。人化を解かないと勝てない相手だと分かったらしい。
というかね、ミリーやルーを殴ったら私の手が損傷するのよ。それだけ強いゴーレム姉妹にどこまで持つかしらね。
『グフッ……お、おのれぇ……』
バトルギアは丈夫でも、中にいるセバスタンは生身の人間でしかない。度重なる衝撃で身体がついて行かないみたいね。
フラフラと起き上がったものの、今のコイツは隙だらけよ。
ガシッ!
『……そろそろ終わらせる』
『何をする……離……せ』
『ピッチャールー選手、第1球目を投げる』
ブン!
『ヒェッ!?』
『バッターミリー選手、初球から満振りする』
ドゴッ!
『グヘッ!』
何故だか野球を始めるゴーレム姉妹。というかミリーは素手で殴ってるし、野球とは少し違う――――のかな?
『残念ファールだぜ、あらよっと!』
ブン!
キャッチしたマリアも悪乗りし、再びルーへと戻っていく。
『……ミリー、この1球で決着をつける』
『……望むところ。勝った方がお菓子を総取りで』
『……よろしい、ならば魔球だ。打ってみるがいい、粗大ゴミ1号』
ブゥン!
粗大ゴミ扱いされた哀れなセバスタンがミリーに向けて投られる。
『……もらった。第1号ソロホームラン』
ドゴッ――――ズドォォォォォォン!
『……残念。失敗した』
そりゃね。両手で地面に向けて叩きつけたらダメでしょうよ。ホームランならずでこの勝負はルーの勝ちね。
……あれ、勝負なんかしてたっけ? まぁいいや。
『……これでお菓子はルーのもの。マスター、早くプリーズ』
「その前にセバスタンよ」
地面にめり込んだバトルギアをこじ開け、中から血塗れのセバスタンを抱え出す。一応は生きてるみたいだし、色々と情報を聞き出してみよう。
「や、止めろ、ボクに触るな! 早くバトルギアに戻すんだ!」
「何をそんなに狼狽えてるのよ……」
「バトルギアから離れたらボクのスキルが無意味になるからに決まってるじゃないか!」
だったら余計戻せないんだけど。
「どのみちアンタは終わりよ。ほら、見てみなさい」
「え…………あ!」
バトルギアから降りたセバスチャンと見覚えのない男性が、宮廷からこちらに歩いてくるのが見えた。
鑑定の結果、見覚えのない男性は曹邦だということが判明。どうやら幽閉されてただけで生きていたらしい。
「よくもこれまで好き勝手してくれたな? これまでの狼藉、断じて許すわけにはいかん」
「ひぃ! お、お待ちください曹邦様! ボクも祖父上のようになりたかっただけなのです! だから命だけは――」
「フン、バカめ。貴様のような小童がセバスチャンになれるわけなかろう。貴様がやったことは力だけの恐怖政治。いや、政治と言えることは何一つできてはいない。できないからこそワシを生かしておいたのだろう? 貴様なんぞ生かしておくメリットはないわ!」
「うっ……」
聞けばこれまでのセバスタンは力を示すだけで政治的なことは全く触れてこなかったらしい。生かしておくのを条件に、曹邦の助言に頼りっぱなしだったとか。
できる事と言えば行軍くらいで、スパロウ帝国とラーテール共和国が混乱している隙に国土を増やそうと画策したようだ。
「大変申し訳ありません、曹邦様。我が孫が野心に取りつかれる事を想定しておりませんでした」
「よいよい。こうして無事だったのだ、お前が気に病むことはない。それに様付けなど堅苦しいぞ? 昔のように劉邦と呼び捨ててくれぃ」
「いや、しかし……」
和やかな2人を尻目にセバスタンへの尋問を開始しますか。
「アンタが知ってる事を言いなさい」
「言うって……何を?」
「神の眷属についてよ。神の正体とか、他の眷属がどこにいるとか」
「そ、そんな事は知らないよ。ボクが知ってるのは銀河の統治者になれるのが神の眷属であって、全部で11人と2人いるって事くらいで……」
11人と2人? 全部で13人いるってことか。
「じゃあ神については?」
「だから知らないって。ボクが伝説のメンフィス共和国を再興するって言ったら大変良い心がけだって褒めてくれたんだ。他の眷属を全て倒したらしかるべき場所に来いとも言われた」
「どこよそれ?」
「し、知らないよ。その時になったら教えてくれるんだと思ってたけど……」
う~ん、嘘は言ってないようだし、これ以上は聞いても無駄か。
「ね、ねぇ、これだけ話したんだし、キミからもお願いしてよ。ボクに情状酌量の余地ありって」
「嫌よ。アンタみたいな神の眷属を生かしておく理由はないもの」
「そんな!」
曹邦さんに視線を向けると意図を察し、近くにいた部下たちに命じた。
「罪人を連れていけ」
「「ハッ!」」
「そ、曹邦様、おおおお待ちを――」
「うるさい! 明日にでも皆の前で処刑してくれる。諦めるんだな!」
「ヒィィィ……」
情けない声を出すセバスタンが連行されていく。それにしても……
「しかるべき場所――ねぇ」
宇宙のどこかにあるのは間違いない。恐らくはメンフィス共和国と関係があることも。
そんな事を考えてると、セバスチャンに伴われた曹邦さんが近付いてきた。
「貴女がアイリ殿だね? 貴殿のお陰で助かったよ。心より礼を言う。ありがとう、コスモアイリーンの主導者よ」
「あ~いえ、成り行きですから。今は只の海賊みたいなものですし」
「いやいや、海賊が人助けなんぞせんよ。張から聞いたがスパロウ帝国で内戦に突入した際、艦星にいる住民たちを保護したそうじゃないか。民のために動ける者はそう多くは居らぬ」
「あ、ははは……」
面と向かって言われると照れるわね。普段からクソガキとか挑発されることが多いし、褒められるのは慣れないなぁ。しかも一国の代表だし。
あ、そうだ。国家権力者なら知ってる事が多そうだし、いろいろと聞いてみよう。
「それより聞きたいんですが、セバスタンみたいに豹変した人物に心当たりはありませんか? 例えば神に選ばれた~とか自慢気に語ってるやつとか」
「豹変か……。他国の代表と顔を会わせるたびに思うことが多いな。昨日までにこやかだったのが突然横暴になったりとかは日常茶飯事だ。ま、政治とはそういうものなのだろうが」
それ、地球も同じです。
「豹変した人物に心当たりが多すぎるが、それとは別に突然消えた者なら知っているよ」
「突然消えた?」
「うむ。ギュスターヴの敏腕エージェントなのだが、外遊中に突如消息を絶ったと聞いておる。噂では惑星レバルスタッドに立ち寄った際に行方不明になったとか。あの惑星には神隠しの噂もあるというのに、なぜ立ち寄ったのかも不明だが……」
その敏腕エージェントはギュスターヴの国家代表候補でもあったらしく、他の連合国にも知られるほどの知名度らしい。
レバルスタッドで事故に合ったとまとめられたみたいだけど、神隠しというのも気になるわね。だってエージェントの男は戦闘も得意だったらしいから、猛獣に襲われてっというのも考えにくい。
そしてなにより私の感が告げている。惑星レバルスタッドには何かがある――ってね。
セバスタン「どうでもいいことですが、曹邦の正式名は曹劉邦という設定です。どうでもいいことですか」
曹邦「今すぐ処刑してやろうか貴様?」




