戦艦ダンジョン・コスモアイリーン2
「ななな、なんと! このように巨大な戦艦はスパロウ帝国でさえ珍しい。艦星の見た目とは違い完全なる戦艦。よぉし、我らの運命をコスモアイリーンに懸けるとしよう! 皆の者つづけぇぇぇ!」
「「「おおっ!」」」
付近に着陸したアイカ――もといコスモアイリーンに、オットーたちが意気揚々と乗り込んでいく。
そういえば内装はどうなってるんだろ? 衣食住の方も調整してないだろうし、テキトーに提供する? その辺はアイカに任せよう。
「そんじゃあたしらも行くか」
「――の前にね、コイツから情報を引き出したいのよ」
オットーたちに続こうとしたマリアを止め、足元に転がるエドガルへと視線を落とした。
目が覚めるまで待つつもりはないわ。ちょっと刺激を与えて――
コツン。
「んんぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
神経が10倍過敏になる魔法をかけ、軽く顔を蹴ってやった。今エドガルは、おもいっきり蹴りあげられた痛みを味わってるのよ。
「ひぃ……ひぃ……ゆ、夢を見たぞぃ、無表情なオーガに顔面を蹴られる夢じゃった!」
ムカッ!
「誰がオーガよ!」
ゲシッ!
「ほんげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! か、顔が割れるぅぅぅぅぅぅ!」
「ふざけんじゃないわよクソ爺ぃ! こ~~~んな美少女に対してよくオーガとか抜かせたわね!? 今度言ったら両手両足を斬り落としてやる!」
ったく、礼儀のなってない爺ぃは嫌ね。
「でも腕力だけならオーガ並……」ボソボソ
「シッ! 聴こえるよカズト!」ボソボソ
「そこの2人、聴こえてるわよ?」
「「ヒェッ!?」」
「私がオーガより弱いとでも思ってるの?」
「「思いません!」」キッパリ
「でしょ?」
――って、こんなところで漫才やってても意味ないし、さっさと情報を吐かせよう。
「さてエドガル、アンタに聞きたいことがあるわ。話さなくてもいいけど、答えないなら痛みを味わうから」
「……よかろう。知ってることなら話してやるわぃ」
「賢明ね。ならズバリ聞くけど、異世界から召喚した者を送り返すことは可能?」
「異世界召喚を知っておるのか。フン、ならば分かるじゃろ? 送り返せるのなら無能を召喚した時点ですぐに返しておるわぃ」
「んだとぉ!?」
「はいはい、落ち着いて」
掴みかかろうとしたカズトを押さえ、続きを促す。
「召喚と言ってもな、何度も繰り返した内の1%すら満たない確率での成功じゃ。次にいつ成功するかが分からない以上、簡単には捨てられん。後を考え様々な可能性を考慮した育成プログラムを組んだが、それでもその少年は開花せんかった」
そりゃね、カズトの場合は強者が使っていた剣を持つとステータスにバフがかかるっていうスキルだもの、この世界じゃ何の役にも立たないわ。
「しかしじゃ、半ば諦めかけた時、新たな生命体の召喚に成功したのじゃ! 同時に装置が壊れてしまい以降の召喚が困難に陥ったが、それでも此度のは本物! その生命体さえ確保できれば帝国は安泰。最近ジェイラーに送られてきた1人がその生命体である可能性が高く、ワシが来たのもそれのため――」
「その話はもういい。代わりの質問に答えなさい」
現時点では元の世界に戻れない。これは理解した。となれば、今後送り返す装置を作れるかが重要になってくる。
「召喚した生命体を元の世界に返す装置。それをアンタに作ってもらうわ」
「フン、簡単に言うでない。召喚できたのは事故みたいなものじゃ。異世界が幾つあるかも知らんし場所も分からん。不可能じゃな」
だろうとは思った。期待してなかったけど自力でどうにかするしかないか。
「じゃあ別の質問。この写真の女を召喚したのはアンタね?」
「これは……サオリくんではないか」
見せたのはサオリ・アカツキの写真よ。どうせエドガルが召喚したんだと思ってね。
ところが……
「何を勘違いしとるのか知らんが、サオリくんは生まれも育ちもスパロウ本星じゃぞ?」
「……へ?」
「実戦での功績は目を見張るものがあるが、それでも常識の範囲内じゃろ。そもそも召喚1つとっても――」
エドガルの自慢話が始まったところで思考の海に身を落とす。
この反応を見るに嘘は言ってない。つまり本当にこの世界に転生した人間ってこと?
私の鑑定スキルが弾かれたのは神の加護を持ってる証拠。どうせスパロウ帝国に喧嘩売っちゃったんだし、堂々と捕まえて自白させよう。
「なぁ、ちょっといいか? サオリってやつの事なんだが……」
思考の海から呼び戻された。
「マリアの知り合い?」
「いや、違う。むしろ仲間の仇だ。アイリの知ってるやつがサオリ・アカツキならな。前に話したろ? あたしに罪をおっ被せたやつさ」
あの女、過去にとんでもない事を仕出かしてるのね。
同僚であるコスモエリートを皆殺しにしてマリアに罪を擦り付けてたって事よ。
「そのサオリで間違いないわ」
「やっぱりか……」
写真を見せたら怒りを再燃させ、グシャリと握り潰した。同名同名の別人じゃなかったみたいね。
ガバッ!
「アイリ、1つ頼まれてくれ!」
「土下座しなくても分かってるわよ。サオリ・アカツキに復讐したいんでしょ? ちゃんと舞台は整えてあげる」
「ホントか!?」
「もちろん」
私としてもサオリ・アカツキを放置する気はない。危険な人物は排除しなきゃね。
「けどその前にスパロウ本星に向かうわ。いろいろと回収しなきゃならないから」
「構わねぇさ。チャンスをくれるってんなら何年でも待てる。例えババァになってもな」
何年も放置はしないけどね。早ければ数週間以内には何とかしたい。
今頃はワーテール共和国に攻め込んでるだろうし、背後から襲うのもありかな?
「じゃあ全員乗り込んで。すぐに出発するから」
マリア、カズト、レミオールが乗り込む。これでジェイラーともお別れね~って感じに私も続こうとしたら、転がっていたエドガルが暴れだした。
「ままま、待ちんしゃい! スパロウ帝国の財産とも言えるワシはどうなるんじゃ! まさかジェイラーに残す気か!?」
「そうだけど?」
「バカを申すでない! そうなればスパロウ帝国にとっての多大な損失となるのだぞ!」
「知らないわよそんなの。帝国がどうなろうと知ったこっちゃないし」
「……ほへ?」
「帝国なんかどうでもいいってこと。じゃあね」
ポカーンとするエドガルを残し、ジェイラーを後にした。次の目的地はスパロウ帝国で、スパロウ本星が目の前に…………あら? 防衛軍が見当たらない。
『アイカ、帝国の守備隊が居ないみたいだけど』
『恐らくですが、あの件が原因かと』
『あの件?』
『戦況がスパロウ帝国側に傾いたのを受け、現皇帝が前線へと向かったのですよ。降伏勧告でもするつもりだったのでしょう』
戦況は聞いてたけど、そこまで傾いてるとは思わなかった。
『持てる全戦力を前線に注ぎ込んだため、守備隊もいなかったと』
『違います。皇帝が出向いた先で暗殺されたのが主な原因かと』
あ~なるほど。皇帝が暗殺されたらそりゃもう――
『ちょっと待った。誰が暗殺されたって?』
『現皇帝のベイグルーニですよ。今頃スパロウ本星では大混乱でしょうね』
『……初耳だけど?』
『今日の出来事ですからね。先ほどお姉様は後で聞くと仰いましたので』
これもうスパロウ帝国終わるんじゃ……




