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監獄惑星ジェイラー8

 遠くから爆音が聴こえる。アイリが派手に暴れてるらしい。

 戦闘機に乗らずしてどのように上空へと向かったのか。恐らくは単身で飛べるのだろう。

 非科学的だがアイリなら不思議ではない。


「大丈夫だろうか」

「アイリなら大丈夫だろ。あたしらより遥かに強いんだしな。アイツでダメなら諦めるしかないさ」

「それによ、こっちには俺もいるんだ。勇者の剣さえあれば俺だって無敵だぜ!」


 心配し過ぎか。子供みたいに剣を振り回すカズトはともかく、アイリなら鼻歌交じりに無双しているだろう。


「おいレミオール、今俺のことを雑に扱ったろ?」

「そんなことはないよ。ボクよりも強そうじゃないか」

「お、やっぱそう思うか! 勇者の剣を手にした俺の活躍を期待してくれよな!」

「うん。頼むよ」


 こんなお調子者でもボクよりは強い。アイリがいない今、貴重な戦力だと言える。

 勇者の剣があればボクも――とは言えないのが悔しい。剣も銃も使えないからね。


 ――が、そんな事を考えてる余裕はなさそうだ。


「司令、熱源動作感知装置(サーモサーチャー)に反応あり! 基地正面です!」

「チッ、別動隊か……」


 やはり来たか。


「ゲートはどうなってる!?」

「すべて閉じています。回線も遮断しましたので、遠隔でも開けられる心配はありません」

「よし、何としてでもアイリ君が来るまで持ちこたえるんだ!」


 これでしばらくは持つだろう。後はアイリが戻ってくれば――



 ジジジジジジ!



「し、司令、ゲートが!」

「強引に焼き切るつもりか!」



 そう甘くはないようだ。分厚いゲートから火花が見え始め、徐々に長方形が出来上がりつつある。

 入口近くの兵が柱の陰に身を隠し、離れているボクらはバリケードから様子を(うかが)った。



 ジジジジジ……



 やがて火花が収まり静寂(せいじゃく)が訪れると、息を飲んで注視する。

 敵はいる。しかし、こちらが待ち構えてるのは向こうも分かっているはずで、中々突入してこない。


「…………」


 心臓の鼓動がやけに大きい。緊張もあるが、それだけ静まり返っているんだ。敵の動きを一歩たりとも聞き逃すまいとして。



 グラッ――



 ゲートが揺れた?


 間違いない、大きく傾いていく!



 ズダーーーーーーン!



「撃てぇぇぇぇぇぇ!」


 ズダダダダダダダダダダダダダダダ!



 ゲートが倒れたのを皮切りに一斉射撃が行われた。向こうにいるのは間違いないないんだ、ここを通すわけにはいかない。



「銃撃やめぇぇぇい!」


 撃つのを止め、煙が収まるのを待つ。

 やがて見えてきたのは……



「……む? むぉっ!? そ、そんな……敵がいない――だと!?」


 いるはずの敵はなく、抉れた地面が見えるのみ。これはいったい……



 ダダ……ダダ……ダダダダダダダダ……


 基地の奥から銃声!?

 直後に血相を変えた兵士が走ってきた。


「た、大変です! 裏口が破られ、中になだれ込んで来ました!」

「何だと!?」


 やられた、正面は陽動か!


「こうしてはおれん! 迎撃に向かわねば!」

「俺も行くぜ!」


 最低限の人員を残し、オットーとカズトが離れていく。こうなると厄介だ。正面から来ないことを祈るしかない。


「はぁ……」

「不安か?」

「そりゃね。だけど……」


 つい漏らしたタメ息にマリアが反応する。

 不安かと聞かれたら頷く他ないが、それ以上に不甲斐なく思う。


「今の自分では役に立ちそうにないってところに苛立ちを感じるよ。アイリは敵艦に、カズトは敵兵に向かっていった。コスモエリートのマリアだってライフル片手に戦闘待機だ。なのにボクときたら、結界を張るだけの簡単な役目だけ」

「けどお前じゃ銃は使えねぇだろ」

「分かってる。だからこそ悔しいんだ。自分はただただ足を引っ張るだけの存在なのかと」


 これでは無能な皇帝を笑えないな。いつかは父上の仇をとり、ボクが遺志を継いで皇帝にと考えた。

 ――が、そんな話は夢物語だ。今のボクでは自分の身を護ることすら危ういのだから。



 ポンッ!


「……マリア?」

「そう悄気(しょげ)んな。誰にだって向き不向きはある。お前にだってあるはずさ、自分にしかできないことが」

「ボクにしか……できないこと?」

「ああ。少なくともあたしやカズトよりも帝国の本星に詳しいだろ? 政治的な人脈だってお前の方が上のはずさ。これはアイリにも勝る部分だろう。違うか?」


 そうかもしれない。戦闘の役に立たないのなら、他で補えばいいんだ。

 反皇帝派はまだ健在だろうし、彼らとの接触なら難しくはない。必要とあらばアイリに紹介するのもありだろう。


「ありがとうマリア。だいぶスッキリしたよ」

「ああ。だいぶマシな顔になったな。戦闘は任せとけ。いざとなりゃ結界を頼むぜ」

「分かったよ」


 常に思うが、この場にいる誰よりもボクは弱い。

 だけど適材適所だ。ここはマリアや兵士たちに任せて――


 いや。やはりマリアに任せっきりはよくないな。せめて彼女の盾になれば――!?



「うっ……」

「ん? どした?」

「い、いや、なんでも……」


 マリアのやつ、よく見たら上着の前を開けてるじゃないか! しかもその……ブ、ブ、ブラジャーをしてないせいで、中のシャツが汗で透けて……



「お前、意外とスケベなやつだな……」

「あ! ち、違う! そんなつもりは――」


 ついつい胸元に目が行ってたのがバレてしまった。


「女はな、男の()()()()()()はすぐに分かんだよ」

「す、すまない……」

「ま、逆に言や余裕が出てきた証拠でもあるけどな。だが時と場所は弁えろ。敵がいつ現れるか分かんねぇんだからな」


 そうだ。マリアの言う通り、今は敵に集中を――



「な、なんだ!? 正面に誰かいるぞ!」

「敵だ、撃て撃てぇ!」


 言ってるそばから現れたらしく、兵たちが再度銃撃を開始。

 それにしては姿が見えない気が――な!?



 シュバッ!


「コイツ、なんて身体能力だ!」

「後ろに回られたぞ、気をつけろ!」


 黒い影が飛び上がったと思ったら、壁や柱を蹴ってバリケードを越えてきた!


「ははっ、今日は大漁だなぁ」


 ボクの前でそう呟くのは、パーカーにジーンズといったラフな格好の男だ。

 その見た目だけでも異常だと分かる。そう、普通の格好こそが()()()()()()。この場ではあまりにも不釣り合いなんだ。


「レミオール、下がれ!」



 ズダダダダダ!


「へっ、遅いぜ」



 シュバッ!


「チッ、外したか!」


 今度はバリケードの上に立った。単独で突入し、銃撃も難なく回避するとは、特殊部隊のエリートですら難しいはず。コイツはいったい……


「お? いいねいいねぇ、敵意が恐怖に変わるその瞬間。その表情を味わえるから戦いはやめられねぇ。エドガルの誘いに乗った甲斐があったってもんだ」


 エドガルだと? 軍事局局長からわざわざ頼まれるなんて余程のことだぞ!?


「お前はいったい何者だ? エドガルが絡むくらいだ、ただの軍人じゃないんだろう?」

「そうさなぁ。強いて言や人外ってとこか?」

「……人外?」

「ま、どうせすぐに食っちまうんだ。特別に教えてやっから、目を凝らしてよ~く見てな」



 ググググ……


 何をする気かと思えば、奴の全身が一回りも二回りも大きくなっていく。


「お、おい、コイツは……」

「バババババ、バケモノ!?」


 兵たちも恐怖に染まるその見た目は、人間の三倍はあるかと思われる狼男。

 この場合は人狼(ウェアウルフ)と言った方が正しいかもしれない。何せ見た目の特徴がWEBで見た人狼まんまだからね。


「これが俺の正体さ。噂程度なら聞いたことあんだろ? エドガルがやってる異世界召喚をな」

「なるほど。それならエドガルと繋がってのも理解できる」

「んん? あんま驚かねぇな? 普通ならそこの雑魚兵みたいに腰を抜かすんだが。……まぁいい。大量の人間を食えるってんなら文句は言わねぇ。この俺様――皇帝直属のエリート部隊のガルフ様が、テメェら全員食らい尽くしてやるぜ!」


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