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セイレーンVSセイレーン

『あらあらまぁまぁ~、ここは不思議なところですね~♪ 呼び出したのは~、貴女でしょうか~?』


 名前:セレン

 性別:女

 年齢:永遠の17歳

 種族:セイレーン

 階級:Bランク

 備考:普段は金髪セミロングの少女で居る。一見するとおっとりな性格に見えるが、年齢に触れると激怒するという危険な存在。人化を解くと翼が生え、飛行できるようになる。


『う、うん、よく分かんないけどそうみたい。貴女がセレン……さん?』

『はい~♪ よろしくお願いします~♪』


 リズィの後ろに召喚された金髪セミロングの少女。この少女はセイレーンが人化した姿で、間延びした喋り方がおっとりした性格を演出している。


『うんよろしく――って、それよりもあのゴーストシップを何とかして! あの戦艦にはセイレーンが乗ってるらしいの!』

『……ほほ~』


 セレンが目を細めた。あの目は多分、自分以外がセイレーンとして存在するのが許せないとか、そんな感情が籠ってる気がする。


『どうするセレン? 相手が相手だし、私が援護しつつ倒す感じにする?』

『おやアイリ様~、このようなところで奇遇ですね~♪』

『うん、奇遇はいいんだけど……随分余裕そうね?』

『はい~! 相手がセイレーンなら~、負ける気はしませんね~♪ ここは私にお任せを~』


 何か考えがあるらしく、アイカに指示してゴーストシップへと接近していく。


「ねねねねアイリ、何か青白い光が迫ってくるんだけどぉぉぉ!」


 ――っと、こっちも気を抜けない。ゴーストシップから魔法が飛んできたわ。


「フレディア、機体表面に障壁を張ったから、そのまま突っ込んで」

「ええ!?」

「大丈夫、簡単には破られないから」

「ホントにホントね? 嘘だったら化けて出てやるからね!?」

「その時はキチンと浄化してあげるわ」

「そうならないようにしろって話よ!」


 文句を言いつつも言うとおりに突っ込み、魔法を突き抜けて向こう側へと出た。

 セレンの方も同様に突き抜けたところで、宇宙服を着た怪しいやつから通信が入る。


 ピー……ピピー……


 ブゥン!


『貴女たちね、ワレの生け贄を横取りしたのは』

「勝手に民間人を生け贄にしないでちょうだい。食料が欲しければ、その辺に浮いてるガラクタでも食べてれば?」

『セイレーンのワレが捕食するのは生命体。ガラクタは口に合わない。動物や魔物もいいが、やはり人間や獣人が望ましい』

「贅沢なやつね。ならこんなとこに居ないでテキトーな星に降りればいいじゃない。下手くそな歌で他人に迷惑かけんじゃないわよ!」

『…………』ピクッ


 歌をバカにしたら表情が険しくなった。


『……今、ワレの歌をバカにした?』

「ええ、馬鹿にしたわよ? そもそも宇宙服着て歌ってるセイレーンなんか、ダサ過ぎて笑いのネタにしかならないわ。目障りだから通信入れないでくれる?」

『…………』ギロリ!


 怒ってる怒ってる。


『許さん……ワレをバカにした事、あの世で後悔するがいい!』


 まんまと挑発に乗ったセイレーンが大音量で歌い始めた。もちろん効かない。

 その間にセレンたちが側面へと回り込み、土手っ腹に大穴を空けて内部へと突入。

 こうなると私を気にしてる余裕もないし、戦艦内部に籠城するしかなくなる。


「私たちも続きましょ」

「もう向かってるわ。それより聞きたいんだけど、あのセイレーンっておとぎ話に出てくるあのセイレーンなの?」

「多分ね」


 ここに居る理由が不明だから、できれば経緯を吐かせたいところよ。元の世界に戻れるヒントになり得るし。


「アイリ、あそこ! リズィの小型機!」

「向かいには例のセイレーンもいるわね」


 進んだ先にはセレモニーホールのような場所があり、ステージ上ではあのセイレーンがマイクを握っていた。


「ここまでたどり着いたのは貴様らが初めてだ。一応は誉めてやろう。しかし、その勇気ある行動も無に帰すこととなる。貴様らはここで終わりだ!」


 ラスボスっぽい台詞を吐きつつ、マイク片手に大きく息を吸い込む。一瞬だけ口の端を吊り上げると、音が割れんばかりの歌声が艦内のスピーカーから流された。


『ラーラララーラーラーーー♪』


「うっわぁ……凄い声。けどうるさくはないわね?」

「障壁で護られてるからよ。もし無かったら、とっくに鼓膜が破れてるわ」

「ああ、そういうこと」


 本来なら精神に異常が発生するところを物理的に壊しにくるとか、セイレーンとしてはどうなんだろ~的な感じには思う。


『ハァ……ハァ……ど、どうだ貴様ら。ハァ……ハァ……も、もはや……立ち上がることすら……できまい?』


 なぜか歌うことに体力を消耗したらしく、息を切らしながらも勝ち誇った様子。

 アンタこそ立ってられないんじゃない? ――という台詞を辛うじて飲み込む。

 一方の私たちはというと、ご覧の通りなんともない。はい残念~。


『フッフッフッ~♪ その程度ですか~?』

『な!? ま、まさか無事だというのか!?』

『はい~♪ こぶしの効かせ方が甘いようですので~、私がお手本をお見せします~♪』


 どこからか取り出したマイクを手に、今度はセレンが歌い始める。


『は~どっこいしょ~どっこいしょ♪ (どっこいしょ~どっこいしょ♪) あ、そ~らんそ~らん♪ (そ~らんそ~らん♪)』



 え……この歌はまさか……


『や~~~~~~れんそ~らんそ~らんそ~らんそ~らんそ~らん♪』

『『はい~はい~!』』



『は!? しまった! つい乗せられてしまうとは……』


 向こうのセイレーンも乗せられて、ソーラン節に同調する。まさかよさこいソーラン節を歌い出すとか思わなかったわ。



『にしん来たかとカモメに問~えば♪』

『わたしゃ立つ鳥、波に聞けチョイ♪』



 というかなんで歌詞を知ってるん? いや、それよりもセイレーン(敵)の様子が……


『な、なんという歌唱力。これほどの歌声を出すには1000年――いや2000年は要するというもの……』


 ここだけの話、セレンの年齢は5000を越えてるらしい。だけど注意しなきゃらならないのは、こちらから年齢に触れるのは厳禁ということよ。触れたら最後、怒りが大爆発するからね。

 ――なぁんて話は置いといて、セレンの歌声を聞き入ったセイレーン(敵)が苦しみ出す。


『グ、グォォォ! ……こんな……こんなところで終わるというのかぁぁぁ……ガハッ!』

『哀れですね~? 襲ってこなければ~、延命できたものを~』

『おのれ……いったい……ワレに何を……何をしたぁ!?』

『知らないんですか~? 強いセイレーンは~、弱いセイレーンから~、生気を奪い取れるんですよ~♪』

『なんだと!?』


 そっか。生気を吸いとられてるから苦しんでるんだ。


『そろそろ終わりです~。あの世でお達者で~♪』

『ガァァァ……ァ……ァ……』


 最後はミイラみたいになり、セイレーン(敵)は動かなくなる。

 たかが数百年が数千年のセレンに勝てるわけなかったわね。亀の甲より年の功――っと危ない危ない。こんなこと言ったらセレンが暴れちゃうわ。


『討伐完了です~♪』

『セレンさん凄~い!』

『できれば~、セレンちゃんと呼んでくれると~、嬉しいです~♪』

『オッケ~。セレンちゃんマジすご!』


 さっそくちゃん付けで呼ばせてるし。セレンの実年齢には触れないようにと後でみんなに教えとこう。

 


 ――って、しまった! ここに来た経緯を聞こうと思ったのに聞けなかったじゃない!


『あ~~せっかくの手掛かりが……』

『まぁいいじゃありませんかお姉様。この世界にも魔物がいたことが分かったのですし。そこらの惑星にいる可能性だってあるんですから、時間を作って探索してみては?』

『そうよね。一体いるなら二体いても不思議じゃないもんね。よ~し、徹底的に探してやろうじゃない!』


 待ってなさい、まだ見ぬ魔物。宇宙のどこに隠れても見つけ出してやるんだから!


『ヤンデレみたいで怖いですね』

『アイカ! やる気を損なうような発言はしないこと!』


 間違ってもヤンデレじゃないわ。でも……うん、そうね。フレディアやリズィにも異性に興味がなさそうって言われたし、魔物に固持するのはほどほどにしとこう。うん。


『あ、そうだ! せっかくだしさ~、ここら辺を探索してかない? こういう場所ってお宝が眠ってるのが定番っしょ!』

「あのねリズィ、ここがバミューダ宙域だってことを忘れたの? 私だけならいいけど、二人を護りながらは大変なんだからね」

『いいじゃんケチ~、アイリのドケチ~』

「はいはい。ケチでいいから帰るわよ」


 暇をみてまた来ることにしよう。


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