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63A列車 西行きプランニング

 僕は時刻表を眺めていた。時刻表は2016年3月号。2017年3月4日にダイヤ改正されているから、この時刻表自体はもう意味のないものとなっている。しかし、ただ見るだけなら問題のないものだ。

「なぁに、見てるの。」

そう言いながら、萌は僕の頭の上に腕をのせてきた。

「またどっか行くの。今度はどこに連れてってくれるのかしら。」

と続ける。

「・・・まぁ、どこかには行くつもりだけど・・・。萌はやめておいた方が良いんじゃないかな。結構無理な行程組むつもりだから。」

僕はそう言った。

「ふぅん。そうなの。」

そう言うと萌は僕の左隣に来て、

「何に乗りに行くつもりなのかな。」

と聞いた。

「これだよ。」

僕はそう言いながら、ある列車を指さした。その列車は博多(はかた)18時58分発の「のぞみ64号」東京(とうきょう)行き。ダイヤ改正以降は博多(はかた)の出発時刻が18時59分となっている。

「「のぞみ64号」・・・。これって最速列車だよね。」

萌の言うとおりこの列車は東京(とうきょう)博多(はかた)間を走る「のぞみ号」の中で最も速い列車である。所要時間は4時46分(2017年6月現在)。現在ほぼ全ての「のぞみ」がパターン停車する姫路(ひめじ)福山(ふくやま)徳山(とくやま)新山口(しんやまぐち)を全て通過。山陽新幹線(さんようしんかんせん)内では最高速度300キロ、東海道新幹線(とうかいどうしんかんせん)内では最高速度285キロで走る。

「乗りに行きたいの。「のぞみ64号」は前にも乗ってなかったっけ。」

「乗ったけど、あのときはまだ4時間50分かかってた時だよ。」

「ああ、500系の最速超える前だったかぁ・・・。」

「そうなんだよ。」

500系が時速300キロ運転を開始した当時、東京(とうきょう)博多(はかた)間の所要時間は4時間49分であった。N700系が投入され、東海道新幹線(とうかいどうしんかんせん)の所要時間が最大5分短縮されて以降も「のぞみ」の停車駅の増加により所要時間は4時間50分となっていた。その後、東海道新幹線(とうかいどうしんかんせん)の最高速度が270キロから285キロにスピードアップした時、所要時間が最大2分短縮され4時間47分となり500系運行開始以来、初めて所要時間が短縮された。そして、今年のダイヤ改正で山陽新幹線(さんようしんかんせん)を走る「のぞみ」・「みずほ」の所要時間が平均1分短縮されたことにより現在の所要時間となったのである。

「行きたいなら、行っていいわよ。」

「いいの。」

「どうせいつか行くんでしょ。」

「ああ・・・。よく分かってるね。」

「当たり前じゃない。何年ナガシィとつきあってると思ってるのよ。」

そう言うと萌は僕が渡した6月のシフトを手に取った。

「18切符のシーズンには行くつもり無いの。」

「うーん。そのときが一番お金かからないんだけどね・・・。」

「でも18切符はしんどいよね。山陽本線(さんようほんせん)姫路(ひめじ)から向こうと東海道本線(とうかいどうほんせん)熱海(あたみ)から豊橋(とよはし)までの間はほとんど普通だもんね。」

それなんだよな。何回もやるような行程ではないんだよな。寝ながら移動すれば、苦ではないのかもしれないけど・・・。

「まっ、いくらぐらいかかるかは後で私に教えてよ。」

「うん。」

萌の言葉を聞いてから、僕は行程を組んだ。行程は以下の通りだ。

1日目:守山(もりやま)~「新快速(しんかいそく)」~新大阪(しんおおさか)~「さくら557号」~博多(はかた)~「のぞみ64号」~東京(とうきょう)品川(しながわ)

2日目:品川(しながわ)~普通~小田原(おだわら)~「ひかり493号」~名古屋(なごや)~「ひかり495号」~米原(まいばら)~「新快速(しんかいそく)」~守山(もりやま)

 それを萌に見せると、

「結構ハードね。」

と言った。

「ハードなのは仕方ないね。でも、これは夜勤が終わってから行く場合かな。昼から行くなら結構長く在来線に乗ってから新幹線に乗ろうと思うけど。」

「うーん・・・。」

萌はそう言うと時刻表を手に取り、パラパラとページをめくった。

「うーん、10時02分発の新快速(しんかいそく)がこの時刻表だと播州赤穂(ばんしゅうあこう)行きになってるけど、これって今も播州赤穂(ばんしゅうあこう)行きなのかな。」

「だと思うよ。だいたい変わらないでしょ。」

「そうよね・・・。」

次に見たページは時刻表に後ろにあるピンク色のページだ。ここには切符に関すること、料金に関することなどいろんなものが載っている。萌は東海道(とうかいどう)山陽新幹線(さんようしんかんせん)の運賃・特急料金の三角表を指でなぞる。

新大阪(しんおおさか)からは5390円かぁ・・・。「さくら」も高いね。」

料金は普通車指定席のものだ。これより先、料金に関係するものは全て普通車指定席での乗車を前提とする。

「「のぞみ」・「みずほ」はもうちょっと高いけどね。」

「うーん・・・。あっ、姫路(ひめじ)から新幹線載ったらどうかな。」

萌はそう言うと、今度はページを前にめくり新幹線の時刻表を出す。萌は姫路(ひめじ)に止まる新幹線を左から右へとなぞる。だが、すぐにあることに気づいた。

「「さくら」って姫路(ひめじ)通過する列車多いのね。」

とつぶやいた。見てみると確かに日中走る定期列車の「さくら」は「のぞみ」の停車駅に福山(ふくやま)新山口(しんやまぐち)を足したものが基本パターンとなっており姫路(ひめじ)を通過している。さらに、「ひかり」、「こだま」から「さくら」への岡山(おかやま)での接続は悪い。

「・・・金額ってどうなんだろう。」

するとまたピンクのページを開き、三角表をなぞる。

「あっ、姫路(ひめじ)からも5390円で変わってない・・・。」

「てことは場合によっては姫路(ひめじ)から新幹線に乗ると新大阪(しんおおさか)から「さくら」に乗るよりも高くなるのか。」

僕はそう続けた。そうなる理由は「のぞみ」料金と「ひかり」料金は別体系になっているためである。因みに姫路(ひめじ)から「ひかり」・「さくら」・「こだま」に乗車し、岡山(おかやま)で「のぞみ」に乗り換える場合、特急料金5390円に「のぞみ」料金と「ひかり」料金の差額310円をプラスした5700円が姫路(ひめじ)博多(はかた)の特急料金となる。

「・・・ナガシィ。頑張って。」

「いや、頑張るほどのものでもないけど・・・。」

行程が確定するまではもうちょっと時間がかかる模様だ。


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