ある魔王と呼ばれた少女の旅

プロローグ

　その村は昔、勇者を輩出したことで有名な村だった。

　その村は昔、魔王も排出したことで有名な村だった。

　その時代を生きた者達も少なくなり、本の中でしかその出来事を知らぬ者達が大人になる頃、彼女はその村で生まれた。

　赤の髪、赤の瞳。

　彼女は成長するごとに聡く、その雰囲気はとある存在を思い起こさせた。

　老人達とそれに付き従う大人達は皆、彼女を恐れるように目を背けた。

　子供達はその真似をするように彼女を避けた。

　そして、それは強く雨の降る日に起きた。