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第二脱出実験【隠れ鬼ごっこ】其ノ1

 舞台の時間は2日目へと移る。

 朝食もほどほどに、僕たちは再び一階のモニターのある広間へと来ていた。

 昨日の通り、マネキンの腕を左腕に移植された染町魔熊は、普段通りに歩けていた。

 出血も、してはいない……が、腕にはガッチリとマネキンの腕がはめられていた。

 せすがに、切り落とされぐちゃぐちゃにされた左腕を再び彼の腕に戻すことなどは、出来なかったようだ。

 全員が広間へと揃った段階で、2階へ通じる階段はシャッターで頑丈に閉じられたのだった。

 そして、モニターには、再び審判者が映し出される。

 『おはよう、みなさん‼おいらは軽く眠いけど……今日も張り切って、実験(ゲーム)を開始していくぞ』

 いやいや。

 自分から呼んでおいて眠いって、「わがままか」って。

 実は今朝のこと、みんなで適当に朝食を食べていたとき、居間にあった置時計が喋ったのだ。

 『オマエタチ、モウスグ実験(ゲーム)ダゾ‼広間(ヒロマ)(アツ)マレ』

 って感じでな。

 だから、俺たちはこんな朝学校にいくような時間帯に集められているのだ。

 『さて、今日君達にしてもらうのは……ずばり、【隠れ鬼ごっこ】だ』

 隠れ鬼ごっこ、か……小学生の時にやったな。

 確か、普通の鬼ごっこと同じだけど、この鬼ごっこは隠れていいんだよな。

 タッチされた人間が次の鬼になる。

 僕のとこでのルールだと、タッチされると、鬼の交代ってのがなくて、単に新しい鬼として増える……つまりは、逃げる者が減って、捕まえる者が増えていくって遊びだったな。

 明確にゲームを終わらせるために、逃げる者が居なくなった時点でゲームセット……または、開始後60分経過で逃げる者の勝ちってルールにしてた記憶がある。

 『うふふふ……今回の【隠れ鬼ごっこ】のルールは(おおむ)ね、昨日の【鬼ごっこ】と同じですよ。ただし、昨日が獰猛な動物だったのに対して、今日は【人間】が君達を追いかけまーす』

 「人間が僕たちを追いかける?」

 僕の問いに、審判者は再び笑いながら説明をする。

 『そうです。今回の鬼は【人間】。それも、全世界の警察の特殊奇襲部隊です♪精鋭たちを御用意させていただきましたよ』

 「警察の部隊……しかも、奇襲部隊……だと?」

 『あ、安心して。別に君達がここにいるってことを密告しただけだから、あと見つけ次第殺害して構わないって言ってあるだけだから』

 「「それのどこが安心すればいいんだ‼」」

 僕たち殺人鬼たちは、声を揃えて審判者に言ったのだった。

 安心の欠片もない、殺しの命令を与えられた奇襲部隊……それも、全世界分とは。

 審判者は、どんな人脈があるんだよ。

 『奇襲部隊に捕まらずに一定時間生き延びるか……それとも、今回のゴール地点まで辿り着くことができれば、君たちの勝利だからね~。あ、もちろん殺せるものなら奇襲部隊も殺しても構わないからね』

 奇襲部隊殺すって……発想が猟奇的……とまあ、猟奇殺人鬼がなにを考えてるんだって話だけどね。

 『今回のゴール地点は、プラネタリウムです。さあ、張り切って逃げましょう♪』

 モニターに数字がカウントで表示される。

 3、2、1……0‼

 の表示が終わり、時間は3時間からゆっくりとカウントを切り始める。

 今回のタイムリミットは3時間……そして、広間には閃光手榴弾が投げられたのだった。

 

 

 「突撃‼」と言う声の元、黒い軍服の集団、緑色の軍服集団など、数多くの顔を隠した集団がこの広間へと流れ込んできた。

 だが、僕たちはここにいて、ここにいない。

 僕たちの存在を確認できなかった特殊奇襲部隊の面々は、それぞれの部隊ごとに散開して、広間に数人を残して通路へと向かった。

 なぜ僕たちが見つからなかったのか……それは、「雪女事件」の犯人であるところの東雲氷河の殺人武器【鏡】が関係している。

 僕たちは現在、部屋のすみに集まった状態でいる。

 その周りを、東雲氷河の三面鏡で囲んでいて、周りの壁を反射して写して、どうにか壁と同化している……と言うところだ。

 だが、これはほんの気休めに過ぎない。

 例えば近づかれてしまったり、例えば光を当てられてしまえば、直ぐ様に見破られてしまうのだ。

 「これから、どうしますか?皆さん」

 ボソッと、東雲氷河は僕たちに言う。

 特殊奇襲部隊……と言うこともあって、防刃、防弾装備が整っていると言う状態で、かつ戦闘スキルも並の警察官に比べて高いと来ている。

 迂闊に動けない……と言うのが、普通だろう。

 だが、僕たちは殺人鬼……それも猟奇的な殺人を得意とする者たちだ。

 どんな相手でも殺せる、というのが僕たちの自信と誇りであるがゆえに、答えは決まっている。

 「正面突破して、バラけるしかないですね」

 と言うのが、僕たちの答えだった。

 「じゃあ、僕が照明落としますので、その隙に……」

 「「殺るか」」

 という意思の元、猟奇殺人鬼たちは動き始めるのだった。

 いや、動き始める……だなんて、可愛い言い方ではないな。

 蠢く……と言った方がいいのかもしれない。

 人間社会における、道を外れたものたちの殺戮ショーの始まりだ。

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