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第一脱出実験【鬼ごっこ】其ノ4


 【一日目終了】。

 僕たちは、2階の居住区のエリアへと移動していた。

 大きな居間があり、暖炉に火が灯されている。

 そして、女性部屋と男子部屋のエリアに区切られ、更にそこからまた各個人事(かくこじんごと)に個室が用意されていると言うところだな。

 風呂もトイレも個室にそれぞれついている。

 食料も、キッチンの冷蔵庫に一式揃えられてるし、必要に応じてカップ麺とかもある。

 「へぇ~立派だね」

 「そうですね」

 ひと散策終え、居間に集合した僕たちは改めて自己紹介をすることにした。

 まあ、今は染町さんは居ないので、それ以外のメンバーで、と言うことになるけどね。

 ちなみに、染町さんはあの後、確かに生還はした。

 でも、左腕にマネキンの腕を付けられていたためなのか、気を失うように寝てしまった。

 審判者の指示のもと、居住区にある治療部屋で寝かせてある。

 あの治療部屋、凄いのが全てAIで管理しているようで、入室したとたんにロボットアームなどが飛び出てきて、怪我人の染町さんを謎のカプセルの中に閉じ込め治療を開始した。

 次の日になれば、ある程度の重傷ならば動けるレベルに回復させられるという代物らしいのだが、いったいどういう原理なのやら。

 「さて、じゃあ改めまして……僕の名前は鴻上雷といいます。某大学で学生をしてます。えっと、【雷虎事件】の犯人させてもらってます。よろしくお願いします」

 ペコリっと深く頭を下げると、殺人鬼たちは拍手した。

 なんだこれ。

 「私は【鎌鼬事件】の犯人の、如月風といいます。鴻上くんと同じく大学生やってます。よろしくお願いします」

 パチパチ。

 「俺っちは、漣豪雨ってもんだ。現在高校3年生の受験生ってやつだ。【玄武事件】って呼ばれている猟奇殺人事件を起こした犯人です。みなさん、よろしくです」

 パチパチ。

 漣豪雨は高身長、筋肉質の学ラン姿の男の子だ。

 【玄武事件】……それは、浜辺近くで起こる猟奇殺人。

 被害者は、全員が密漁者で、夜中に高級魚や高級食材を無許可で捕る、いわば「海の泥棒」たちである。

 そんな彼らの肉体は、コンクリートで作られた鈍器のようなもので砕かれ、まるで亀の甲羅のような形に丸められ、圧死した死体は浜辺に放置されるという怪奇的な事件である。

 まさかそれをやっているのが、高校生だったとは……驚きだと言わざる終えまい。

 「私は東雲氷河と申します。世間的に言う【雪女事件】の犯人です。一応、図書館で司書やらせてもらってます……よろしく」

 パチパチ。

 東雲氷河は白い高級そうな和服を着こなす大人の女性である。

 【雪女事件】……それは、東北地方全域で冬になるとランダムで行われる猟奇殺人事件の名前である。

 被害者となるのは、30代後半以降の男性で、普段からDVを妻に行っている既婚者ばかり。

 事件内容としては、その男性たちが素っ裸で雪だるまに埋められ、凍死した状態で発見されるという内容だ。

 謎の白い和服の女の目撃情報があげられていたため、雪女事件……という名前が付けられたらしいのだが。

 まあ、確かに……東雲さんは、肌も白く、白い和服がよく似合う上に、美女で巨乳。

 30代以降のおじ様たちには、ストライクゾーンと言える。

 「私は真宮斬姫よ。【刀狩り事件】の犯人……一応、警察公認の探偵をやらせてもらっているわ……よろしく」

 パチパチ。

 真宮斬姫は、諜報員のようなスーツ姿の女性である。

 【刀狩り事件】……それは、日本以外でも行われた、世界最大の猟奇殺人事件で、世界中の諜報機関まで動いて捜査しているという事件である。

 事件にあう被害者は、もの見事に【10代】【20代】【30代】……という風に、これが【100代】まで辿り着いてまた【10代】に戻るという規則性のある数字で行われ、殺人前には予告状が届くという。

 そして、殺人は予告状ピッタリに行われるという。

 それも、警察のいる目の前で……。

 黒いコート姿の人物が、怪盗の如く予告状の届いた人物を殺し、その場でその人物の骨を一本抜き取って、それを死体の心臓に突き刺すという。

 骨を抜き取る、という行為が日本では刀狩りみたいだ、とSNSで騒がれたために名付けられたのが【刀狩り事件】。

 警察は何故この犯人を捕らえられず、みすみす被害者は殺されてしまうのか……それは、殺害時刻と同時に警察官は意識を持たされたまま、地に屈服させられるからだ。

 例えどんなに屈強なエリートでも、例えどんなに強靭な肉体を持っていても……黒いコートの人物は、自身が持っている日本刀で峰打ちをして、警察官たちの神経系を麻痺させその場で意識を保たされたままに、殺害を犯す。

 日本の侍、日本の忍者……なんてのが海外で付けられているから、てっきり男が犯人かと思っていたが、こんな小さくて可愛らしい女性だとは。

 あと、貧乳……。

 「ん?鴻上くん、なにか思ったかな?」

 そう言って、真宮さんは僕の首に刀の切っ先を向ける。

 「いいえ、なんにも考えていません‼」

 「そう……ごめんなさい」

 真宮さんは、刀をすかさず納刀する。

 あっぶねぇ……って言うか、聞こえてるの?これ‼

 気のせいだよね?

 「さて、染町さん以外は自己紹介を終えましたけど……皆さんは、どのようにしてここに?」

 「俺っちは、いつも通り砂浜で死体を作ってたら、急に黒服に囲まれて……」

 「私は、秋田県で殺人を終えて、きりたんぽを食べた帰りに黒服に……」

 「僕は殺人後にバイト先に向かう途中に黒服に……」

 「私は、次の予告状を郵便ポストに入れた帰りに黒服に……」

 「私は、100均でカッターの刃を買った帰りに黒服に……」

 みんな、共通しているのは、殺人に関係のあることをした帰りに、黒服に囲まれたってことだな。

 「いったいなんなんでしょうか、審判者というのは……」

 「うーん……確かに、謎ですね……7日後にここ出られたら、絶対見つけて殺す」

 「「それな‼」」

 おっと、流石は殺人鬼。

 みんな、殺すことしか頭にないな。

 ある意味で面白いメンバーだけど、全員が全員……犯罪者。

 それも、猟奇的殺人を生業(なりわい)とする者たち。

 2日目は、どうなるんだろう……と不安になりながらも、全員個室へ移りそれぞれで眠りにつくことになった。

 もちろん僕もだ。

 それじゃあ、おやすみなさい……。

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