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序章【殺人鬼の非日常】

 猟奇殺人鬼。

 それは、殺人を異常な方法で殺した者に与えられる称号である。

 いや、称号だなんて光栄な言い方をするべきではないだろうな。単に猟奇的……つまりは、面白おかしく人殺しを行う愚か者に与えられるものだと註釈しておくとしよう。

 そんな猟奇殺人鬼の1人である、この僕もまた、そんな愚か者であると言えるだろう。

 僕の名前は鴻上雷(こうがみらい)

 世間で騒がれている「雷虎事件(らいこじけん)」の犯人でもある。

 「雷虎事件とは?」と疑問に思う方もいるので、説明しよう。

 雷虎事件……それは、1日に1件老若男女問わず、背中に虎に引っ掛かれたような刺し傷を負わされた状態で感電死させられている連続猟奇殺人事件である。

 警察の調査では未だに犯人は特定されていない。

 そりゃそうだ。

 だって、証拠が何一つ見つかっていないのだから。

 指紋や毛髪、その他の要因も何一つ見つかっていない。唯一というか、共通なのは虎の爪で引っ掛かれたような刺し傷と感電死させられていると言うことだけだ。

 そして、今日もまた……その犯罪は今まさに犯されようとしているのだった。

 猿轡(さるぐつわ)された被害者は僕の目の前に無理矢理座らせられ、涙涙ながらに必死に命を助けてくれと懇願(こんがん)している。

 だが、残念ながら止めるわけにはいかない。

 だって、これが僕の趣味なのだから。

 普段はおとなしくしている大学生……バイトバイトの毎日。たまには、息抜きで殺人しないとやってられないって。

 友達と遊びにいくより、こうして誰かを殺す方がなんか心がスッキリするんだよね。

 「さて、言い残すことはあるかな?」

 「んー!んー!!!!んんん!!」

 「あ、ごめん。何いってるのか分からないわ」

 猿轡をしているから当然……というか、僕が猿轡してあげたから当然なのだけどね。

 泣きじゃくって泣きじゃくって、仕方がないし、漏らしてしまっているけど、関係ない。

 「さようなら」っと僕は笑顔で被害者に電流を流して殺した。

 ビリビリっと。

 被害者は、白目を向いて、痺れながら焦げ臭くなって死んでいった。

 ミディアムレアってところかな。

 「殺れ殺れだぜ……」

 と、決め台詞のように言葉を吐き捨てて、僕はその場を後にするのだった本来、その場を後にすると言った以上は何事もなかったかのようにすんなりと元の憂鬱な大学生生活に戻れるはずだった。

 だが、今回だけは違った。

 事件現場から出てすぐ、僕は黒い服の集団に囲まれてしまったのだ。

 某逃走番組に出てくるような黒スーツ、黒眼鏡。

 なんだこいつら。

 「あの、僕に何か御用ですか?」と僕は平然と笑顔で彼らに言う。つい数分前まで殺人を犯した、だなんて信じられないほどの笑顔と平常心だ。

 「鴻上雷……だな?」と黒スーツは言う。

 僕は冷静に笑顔で「いいえ、僕の名前は……」っと、先程殺した被害者の名前を言う。

 幸運なことに、先程殺した被害者は僕と同じ性別なゆえに、歳も近い。だからこそ、抜かりなくこの偽名を名乗れるのだ。

 「……そうですか」

 「あの、申し訳ないです。僕これからアルバイトがあるので、道を開けていただいてよろしいですか?」

 そう平然とにこりと笑っている僕を不審に思わずに、彼らはすんなりと道を開けてくれた。

 なんだ、ものわかりのいいやつらじゃないか。

 なんて、思ってしまったのが僕の誤算であったことをこの数秒後に僕は知ることになる。

 何故ならば、この数秒後に僕は黒い服の集団の1人にスタンガンを当てられて気絶してしまったからだ。

 感電死させて猟奇殺人を演出する「雷虎事件」の犯人である、この僕が電気で眠らされてしまうだなんて、なんとも間抜けな話であると言わざる終えまい。

 完全に自身の絶対的な自信と慢心が生み出してしまったこの状況を、僕は意識が薄れていく中、僕は反省していたのだった。

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