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談話部  作者: BlueTlue
談話部~部長が○○すぎて困っています~
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「ふむ。まだ時間があるな」

 部長は袖をずらしてつぶやいた。

 俺は生返事をし、頭上に伸びる高速道のさらに先――赤と青のグラデーションを振り仰いだ。

 場所はカフワの前の四ツ辻であり、店を出てから十分も経ってはいない。

「どこか行きたいところはあるか?」

 向き直って訊いてきた。

 そうだなあー……あっ、ぼく、ゆうえんち行きたい! ね~ね~、ゆうえんちゆうえんちぃー。おーねーがーいー! ……ああ、マジで遊園地行きたいな。女子と。……部長? いや部長は女子じゃないから。地球外生命体だから。俺こんな人間見たことないしね。地球外生命体なら俺はETをデート相手に選ぶよ。ETマジ心の友。

「そうですね……」

 行きたいところ。うーん、家って言いたいけど、そう言うと家に来そうだしな。食べるところはもう行ったし。……ゲーセン? それもどうよ。……ないな。ない。この人とゲーセンとか。どうなるかはわからないけど、どうにかなってしまうことはわかるし。そうなると……。

「図書館に行こう」

 考えあぐねる様子を見かねてか、案を提示された。

「何か用があるんですか?」

 そんなガリ勉タイプのチョイスしなくても。遊ぶとこなら他にあるだろうに。いや、部活だから遊んじゃだめなのか。いやいや、喫茶店でくっちゃべっといて何をいまさら。だめも何もないじゃないか。――よし、じゃあ行こう。ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッターに。いやマジでさ。

 修学旅行どこだったかなあ? と割と真剣に頭を捻っていたら、なんとETがしゃべった。

「君が借りている本は明日が返却期日だから、早いに越したことはないかと思ってな」

 おお、そういやそうだったわ。確かに一度返しておいたほうがい……。うーんと、どういうことかな、それは。

 不意に、空恐ろしいサジェスチョンがさりげなく与えられた。

「なんでそれを……」

 俺の中で部長のストーカー疑惑が浮上中。ゴゴゴゴゴゴゴゴ、という擬音付きで。

 容疑者は指で髪を後ろにやりながら目をそらし、

「いや、鞄開けたままトイレ行くからつい……」

 プリン。

「ついじゃねえよ!」

 もう怒った。すでに怒った。もう部長だからって遠慮しない。知ったこっちゃないよそんなの。ていうか――そんな出来心で人のカバン物色すんなッ! 

「ということでだ。その中のめくるめくカンノウ世界とはおさらばしてもらおう」

 急に態度を変え、俺の鞄をジョジョ立ちで指差す。

 かんのう? 感応……完納……間脳……。エロス!? この人なに言ってんだ!? 

「そ、そんな言い方したら、俺がエロ小説持ってるみたいじゃないですか」

 持ってない。持ってないからね? 少なくとも鞄の中にはない。それだけは断言できる。

 部長は視線を逸らしてもじもじし、

「だって……」

「だって……?」

 猛烈に嫌な予感がする。だってってなんだ……だってって……。そこでだってはおかしくないか……? だってそう言うってことは――

「私は与えて震え、彼女は受け止めて震えた、とか書いてたし……」

 いやあああああああああああああああああああああああああ! 

 俺は顔を覆って天を仰いだ。

 そして思考した。

 いかん! いかんいかんあかんあかんあかんぜよ! これでは俺の趣味がエロ小説になってしまう。釈明を。釈明をせねば。今すぐに! 

「あ、あれは、外国のラブストーリーだとよくあることで……その……」

 そうなんです。だから別にエロってわけじゃ……。エロと純愛は別物だと思うし……。だからいやらしいものじゃないっていうか……。

 ――って。

「読んでるやあああああああああああああああああああああん!」

 絶叫(さけ)んだ。ひとしきり。人目も(はばか)らず。

 がっつり目を通してるよこの人! しかもよりにもよってそんなところだけピンポイントで! ……ああ、最悪だ。親にエロ雑誌見つかった時より気まずいよこれ……。うう、ぐすっ。

「すまない。だから私は、少しでもお詫びになればと思って……」

 本当に、すまないと思ってる……! とジャックさんみたいに言う。

 それを聞いて俺は開き直った。

 ははあん。読んじゃったから、せめてもの罪滅ぼしに返却期限を教えてあげようって? そりゃありがたい。じゃあ行こうか、入部届の返却をお願いしに。

「はぁ、わかりましたよ。行きましょうか、返しに」

 とまでは言わない。言わないけど、そんなお詫びするくらいなら最初から読むな。

 うんざりした気持ちを言葉に込め、図書館に足を向けた。

 すると、

「志津摩君」

 だしぬけに呼ばれた。

 俺は振り返り、

「なんです」

 まだ何かあるの? もうこりごりだよ……? プライバシーの侵害は。

 冷めた口調でそう訊くと、

「もう一冊の方も読みたいんだが」

 すってんころりんすってんころりん。

「……反省してないだろあんた」

 連れ回す、と言いながら、「どこに行きたい?」と部長が聞いてきて、考えるも結局部長の案に乗っかってしまうの巻。

 禎生はエロ(?)小説を読んでいたことを知られ嘆きますが、部長と図書館に行くことを決めます。

 さて、図書館ではどのような中ボス(え)が待ち構えているのでしょうか。

 メラゾーマぐらいは使ってくる誰かが待っているのでしょうか?

 それとも、指先から小さな火を放って誰かさんの遺体にすごい火柱を発生させてから、「今のはメラゾーマではない……メラだ」とか言う誰かさんが出てくるのかしら? 

 怖いわあ。

 序盤からそんな御方が出てきたら詰むだけじゃないですか。まだろくにパーティも揃ってないのに……。

 と、そんな大冒険の話は長くなりそうなのでここまでにしておきます。

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