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『やめて!!やめてよママ!!いたいよ、いいこにするから!!たたかないで!!』


『何て可愛く無い子なの。』


『ママごめんなさい!!ごめんなさい…いたいよ…』


『アンタなんて産まなければ良かった!!』


『おねがい!!ぼくをおいていかないで!!』


目を開くのが先か、上半身を擡げるのが先か、そう叫んでおりました。

危うくソファから此の躰が転げそうになり、躰からは不快な汗が出ておりまして、其の事で先程の出来事が夢であったのだと認識する事が出来ました。数え切れない程見た夢、数え切れない程叫んだ言葉、数え切れない程吐き捨てられた母の言葉−−−肩で息を促しながら、ふと横際に目を遣ると何時から其処に居たのでしょうか、寝室から抜け出た彼女が心配そうに、はたまた不思議そうに首を傾けてこちらを見つめていました。

「あ…大丈夫、です。」

呼吸荒くそう僕は呟き、即座に立ち上がり寝室へと向かうと、ベッド脇のテーブルからリスパダール内用液を取り上げ、其の場で包装を噛み千切り、中身を吸いました。

何度見続けるのだろう、まるで僕のココロはあの時の侭、阿鼻叫喚を続けながら、時を止めてしまった様なのです。振り上げられる手、蹴り上げられる脚、幼い僕は吐き捨てられる罵意雑言から必死に耳を塞ぎ、されるが侭、無抵抗に此の躰を文字の示す通り七顛八倒せざるを得なかったのです。4歳迄の記憶、母との記憶。僕を産んだ母との記憶−。

気息庵庵だった僕は、しばしベッドに腰を下ろしながら呼吸を整え、薬の効いてくるのを待ちました。

人様に弱みを見せるのが怖いのです。

常に完璧で居なければ、きっと落胆され、見捨てられる恐怖に駆られます。

つい昨日出逢った彼女ですら其れは例外で無く−もう誰からにも見捨てられたくないのです。

何分かして効能が顕れ、少し楽になった後、リビングへ戻ると彼女は相変わらずソファの横際に居り、膝を抱えた状態で寝室の扉を静かに閉める僕の方へと顔を向けておりました。

どうしたの、とも言わんばかりの其の表情に、先程述べた類の様な自己嫌悪すら覚えました。覆水盆に返らずとも云うべきでしょうか、完全に先程の僕の奇妙な行為が彼女には決して理解出来るものでは無く、むしろ敬遠されるべく不可解なもので有ったのが手に取る様に感じられたので、完全に意気阻喪させた僕は、とにもかくにも一人になりたくて、気を動転させながらも

「行きたい所が有れば勝手に出ても良いですから」

と冷酷に彼女に言い放った後、転げる様に家を飛び出したのであります。

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