01 橘綾乃
5月6日
母が御飯が出来たと私を呼ぶ。
御飯を食べたら、家の周りをうろついて友達と遊んだり、野良猫を追いかけたりした。
同じ日常の繰り返しだった。今ではそう思った。
11月7日
株が暴落したと伝えるニュースが聞こえる。私はコンクリートの地面に座って街を眺める。通りすぎる人々は蔑んだ目を私に向ける。所持金は150円。
私は社長から無職のホームレスにまで引き摺り下ろされた。 大型不況により会社は倒産した。缶ジュースでも買おう。その後は・・・そう思った時、ポケットの小瓶に気づく。
死神からもらったあの薬。そうだ。これで楽しい夢を見て、それから死のう。
公園のベンチに寝転び、私は買ったジュースと一緒に薬を飲み干した。
母が御飯が出来たと私を呼ぶ。
御飯を食べたら、家の周りをうろついて友達と遊んだり、野良猫を追いかけたりした。
二つ年上の姉は、本を読んでいた。
ちょっかいを出して、よく殴られた。
学校から帰っても、すぐ遊びにいった。
夜御飯を食べて、風呂に入って、歯を磨く。テレビを見ながら家族と喋り、そのまま寝床についた。
母の声がする。
私にもこんな日々が、あったのか。
気づかず過ぎてしまった日々。
どうして死のうとしたんだろう。
毎日が退屈だったから。
私はなにを求めていたのだろう。
「綾乃、起きなさい、綾乃、」
・・・
「綾乃さん?」
黒いパーカー。
「2年と何ヶ月ぶりですね。会社、倒産しましたね。後缶ジュースもらいましたよ。飲んじゃった。」
私はなにを求めていたのだろう。
「大丈夫ですか。しんでません?」
死神に手を取られ、立ち上がる。
あんな日常なら、今でももう一度見れるかもしれない。
「綾乃さん?おーい、ニホンゴワカリマスカー」
今日も、空は青かった。




