今日こそは失敗しない
ここは山城財閥直系の法人ではないが、山城家とつながりが深く、受付の女性でさえこのカードの色の意味を知っているようだ。
「早く確かめてみてよ」
「は、はい。失礼しました」
受付の女性は俺のカードを受け取り、受付の中にあるカードリーダーに通した。
おそらく、受付のカウンターのどこかに読み出したカードの情報を表示するモニターか何かがあるはずだ。そこに俺の顔写真とかも映し出されているはずだ。
「お返しいたします」
そう言って、カードを両手で持って、俺に差し出してきた。
「行っていいよね?」
「はい」
俺の問いかけに受付の女性が返した。エレベーターを目指そうと、向きを変えた。
そこにはまだ立ちはだかるかのように、二人の体格のいい警備員が立っていて、有栖川が見上げ気味に立ち止まっている。
でかい男二人なら、有栖川にとってみたら、大きな壁のようだろう。
「そう言うわけだから、あなたたちも元の場所に戻ってください」
そう言って、どけと言う仕草で右手を振った。
まだ信用していないのか、どうすべきか迷っているのか、二人の警備員はその場を動こうとはしない。
俺がずいっと、一歩を踏み出し、二人の間を目指していく。
その後に続くのはにへらとした佳織。
早くそこをどけと言うオーラを放ちながら、二人の直前に足を踏み出すと、二人が俺たちに進路を譲るかのように、横にずれた。
二人の警備員を通り過ぎ、俺たちはエレベーターを目指した。
そのエレベーターで目指すのは、昨日の今日もやって来たこの七条科学技術研究所の地下三階。
エレベーターを降りた先のドアを固めているのは、やはり昨日の今日と同じ屈強な男二人。
近づいてくる俺たちの方にぎろりと目を向けた。
昨日は小早川と言うここの来客用ネックプレートをぶら下げた大人を伴っていたが、今日はネックプレートをぶら下げてさえいない子供三人。
昨日の今日以上に、完全に不審者を見る目を向けている。
「何者だ」
そう言って、ドアの前に立ちふさがった。
その仕草も言葉も昨日と同じだが、威嚇度は数倍にレベルが上がっている。
「島原です」
小早川とは違い、俺には名乗る所属がない。桜華学園なんて、名乗ってみても意味がない。
「所属は?」
俺は自分のICカードを差し出した。
一瞬驚いた顔をして、俺の顔とICカードに印刷されている顔とを見比べた後、進路を俺たちに開けた。
「失礼しました」
そんな言葉を聞きながら、俺はICカードリーダーを使って、電気錠を解錠した。
これから先、俺が何かをしでかしたとしても、全ての責任は俺だけのものだ。
小早川も怒られる可能性までは否定できないが、責任と言う点で助かるはずだ。
ドアの向こうの部屋では通路が真っ直ぐに伸びていて、通路の左手にある電子装置のLEDは昨日の今日と同じように明滅を繰り返していた。
そして、これもまた昨日の今日と同じように通路の先には俺たちを迎えるかのように、ありすのホログラフが結像し始めた。
昨日の今日、ここで有栖川が暴走して、失敗した。
だが、今日こそは失敗しない。
ここで、有栖川の願いをかなえて、この人生の繰り返しを終わらせてやる。
そう思い、俺は拳を握りしめた。




