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三人だけで向かう七条科学技術研究所

 しばらくすると、クラスメートが先生にあてられ、黒板の前で問題を解き始めた。

 黒板の上に増えていく白い文字は数式を描き続けている。

 みんなはその黒板に注目し、自分の考えと黒板に描かれていく数式を確かめている。


 正面を見つめながらも、佳織の後姿を見つめている俺。

 シャーペンを握った佳織の右手が、動き始めた。

 もう調べ終えたんだろう。調べ終えた事をノートに写し始めた。

 多くのクラスメートたちが黒板を見つめている中、佳織は俯いて、視線をノートの上に落としている。


 佳織は書き終えると、右手だけを後ろに回して、ノートを俺に回してきた。

 受け取ったノートをぱらぱらとめくり、文字が書かれている最後のページを開いた。

 白いノートの上には、いつもの佳織の丸文字がぎっしりと並んでいる。

 俺はその先頭から目を通した。


 「建物を警備しているのはポコム」

 そんな話はあまり興味が無いし、すでに俺は知っている。斜め読みの要領で、読みたい内容を探した。


 「各所に設けられている電気錠はICカード認証によるセキュリティシステムで、解錠可否は各ドア毎に中央コンピュータが管理」

 これだよ。これ。俺の目はそこから集中して読み始めた。


 「ICカードシステムは山城グループと同一システム」


 あの時、佳織が言いたかった事はこれだったんだ。俺のICカードがそのまま使えると言うことだ。


 「俺のカードでB3にあるありすのところに行けるのか?」


 佳織のノートにそう書き足して、佳織の横に差し出した。それを受け取り、さっきのページを開いたかと思うと、正面を向いたまま頷く仕草をした。

 どうやら、俺のカードでありすのところにたどり着くことができるらしい。なら、小早川を巻き込まなくてすむ。


 授業を終えると、有栖川の所に向かい、昨日の今日と同じように話し始めた。


 「有栖川。

 あー。信じられないだろうけど、俺は一日時間を戻って来て、今ここにいる。

 それも、実はこれで二回目だ。つまり、君はもう二回もあの計画を失敗しているんだ」


 そして、俺自身が実行する事を前提とした作戦を立てるため、有栖川が警備員を倒した後、何をしたかったのかと言う事、そしてありすについてじっくりと話を聞いた。もちろん、破壊が大得意の佳織も横で聞いていた。




 七条科学技術研究所の正面の大きな自動ドアに近づいていく。

 軽く振り返ると、小早川が自分の研究所に帰るため、タクシーに乗り込もうとしていた。


 俺と佳織、有栖川の三人はさっき出てきたばかりの自動ドアをくぐり抜け、研究所の中に再び入って行った。

 目の前にあるもう一枚の自動ドアを抜けて、研究所のホールに足を踏み入れた。

 正面にある受付カウンターの女性たちが、どうしました? と言うような表情で、俺たちを見ている。


 「今から地下三階に向かいますので」


 俺は受付に向かうと、女性の方に言った。


 「それは困ります」


 女性たちは立ち上がり、驚いた表情で言った。そんな異変に気付いた警備の人たちが、俺たちの周りにやってきた。


 「どうされました?」


 警備員の声にも佳織は全く動じた様子はなく、俺の横でにへらとしている。


 「小早川さんが予約していた時間はまだ1時間残っていますよね?」


 そう言いながら、俺は自分の山城系列のICカードを差し出した。すみれ子やお父様に続くランク2のカードである。

 シルバーに輝くカードに、受付の女性たちが一瞬たじろいだ。

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