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奇声を上げる有栖川

 七条科学研究所の地下三階。


 エレベーターの先には一つのドアだけがあった。

 そこのドアの横にはいつものICカードリーダーが設けられているが、それだけではない。屈強な男二人がドアをはさんで、立っている。

 一回目の今日、有栖川を捕まえた二人だ。

 俺たちの方にぎろりと目を向けた。完全に不審者を見る目だ。


 「何者だ」


 そう言って、ドアの前に立ちふさがった。小早川がネームプレートを指し示した。


 「今熊野研究所の小早川です」

 「用件は?」

 「ありすとのコンタクトです」

 「8階ではなく?」

 「そうです。そこを開けてください」


 小早川がそう言って、ICカードリーダーを使って、電気錠を解錠した。

 他のドアと違って、自動で開く構造だ。左右に静かにドアが開いた。

 二人の男たちがドアの前から移動し、俺たちに進路を譲った。


 俺の鼓動が高鳴る。中に有るスーパーコンピューターありすのイメージが脳裏に浮かんだ。


 記憶と演算処理に特化したデジタルブロック。

 他のスーパーコンピューターには無く、ありすの特長となっている創造を得意とする有栖川のクローンたちで構成されたアナログブロック。

 アナログブロックは解決すべき課題に対して、様々な仮説を立て、デジタル部のデータと高速演算を使って、その仮説を検証するらしい。

 密接につながるこの二つのブロック。

 クローンの培養システムが、デジタルのスーパーコンピュータに並んで配置されている光景。

 それが俺が描くありすの姿だ。

 俺は生唾を飲み込んで、その部屋に一歩足を踏み入れた。


 ドアの向こうには真っ直ぐに通路が伸びていて、左手にありす本体と思しき電子装置が並んでいた。

 それは俺が最初にイメージしたデジタルのスーパーコンピューターそのものだ。

 いくつもの金属の大きな筐体でブロック化されていて、その内部に収められている電子装置のLEDの明滅が無数の蛍の瞬きを再現しているかのようだ。

 そして、その先に俺たちを迎えるかのように、ありすのホログラフが結像し始めた。


 有栖川のクローンなんか、どこにもないじゃないか。

 有栖川の妄想か、勘違いじゃないのか。

 そんな非人道的な事を行う訳がない。

 俺がホッとした気分で有栖川に目を向けた時、俺は凍りついた。

 どこに隠していたのか、有栖川は金槌を右手にかまえていた。


 「まじかよ? 金槌で殴るつもりか? そんな事で壊れる訳もないだろう。

 いや、待て。賢い有栖川だ。何か秘策が」


 そう思った瞬間、有栖川は奇声を上げて、スーパーコンピューター ありすにではなく、この部屋の警備員に向かって行った。

 右手の金槌を振り上げながら。

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