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ありすの正体

 二度目の今日が始まった。


 一回目と違うのは、有栖川自身もありすを前にしていると言う点である。

 ありすは変装した少女が有栖川だとは気付いていないらしい。


 「そうですね。この事象は非常に興味がありますので、場合によっては研究をご一緒させていだたきたいと思うようになってきました。

 その結論が宗教的な面に踏み込むことになってしまったとしても」


 一回目の今日、俺が聞いたありすの言葉はそれが最後だった。


 「宗教ですか? それは未来を決めているのは神と言う意味ですか?」

 「世の流れとでもいいますか、何かそう言ったものがあると言う可能性です。それを神と呼ぶのかも知れませんが。

 そんなものがあるとしたら、世の流れを変えられるくらいの決意とでも言いましょうか、行動とでもいいましょうか。そう言った力が、未来を変えるためには、必要なのかも知れません」


 ありすと小早川の話はそれからもしばらく続いた。

 俺は小早川にありす本体を見せてもらうと言う話をしていた。

 やがて、話が終わり、小早川が切り出した。


 「で、ありす。今から、我々はあなたのフロアに向かいたいのです」

 「それはかまいませんが」

 「では、よろしくお願いします」


 小早川がそう言い終えると、ありすのホログラフ映像は霧が風に流されて薄れて行くかのように、俺の目の前から消え去った。


 「では行きましょうか」


 小早川がそう言って、エレベーターを目指す。


 この世に存在するコンピューターに思考能力は無い。

 計算能力は高いが、小学生ですら理解できる1+1の意味すら理解しちゃあいない。

 単に全ては人間が作り上げた、ただの電気計算の論理回路にすぎない。

 たとえ、疑似的な思考ができたとしても、それは人間が作り上げたプログラムと言う信号の処理手順を忠実に実行しているにすぎず、人間には可能な創造などと言う高尚な事は行えない。

 一方、人間の記憶は不確かであり、計算能力も半導体で構成された電子回路の速度に遠く及ばない。

 この二つを組み合わせれば、最強のコンピューターができる。

 そのアーキテクチャーを考案し、実現したのが有栖川夏帆である。

 人間とデジタルデバイスの融合。

 とんでもない事だ。

 その性能を左右するのは、そこに使われる人間の性能。

 俺が有栖川だったら、そこに使われるのが自分か、自分のクローンと言う可能性を推測した。

 だが、有栖川はそんな推測もせず、ありすプロジェクトを進めていき、最後になって、そこに使われるのが自分のクローンと知って、驚愕したらしい。

 学問はともかく、現実社会の事に関しては、ちょっと有栖川は詰めが甘い。そんな気がしないでもない。


 さて、全員でそんなありすの前に立つ事になるが、有栖川はどうやってありすを破壊して、クローンたちを救い出すのか?

 いや、その前に本当にありすには有栖川のクローンが使われているのか?

 そんな思いで、ちらりと有栖川に目を向けた。


 普段から笑顔のような緩んだ表情を見せた事の無い有栖川の表情は、今も真剣そのものだ。

有栖川の願いと、ありすの正体が明らかになりました。

現実社会の行動において、つめが甘い有栖川では、ありすを破壊することは出来なさそうです。

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