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戻せるのは一日だけ?

 俺がこの世界に戻って来るために使った装置とは雲泥の差だ。

 俺が使った装置は一見タブレット端末のようだったが、アプリが選べるようなものではなく、専用のソフトだけが動いていた。

 その画面で、戻す時間を指定できるようになっていた。


 あのタブレット端末のようなものでさえ、最初に見た時の俺の感想は「まじかよ?」だったが、今、目の前の物は開いた口がふさがらないほどのものだ。

 あの装置を経験していなかったら、「ざけてんじゃねぇよ!」と言いかねないところだ。


 「これがワーキングサンプルなんですか?

 本当に動くのですか?」


 自分で言うのも何だが、あまりのお粗末な物を目の前にして、ちょっと声が震えている。


 「信じてませんね。

 見た目がよくないですからね。

 ですが、動作は確認ずみです」


 そう言って、二台の内の一台を小早川は手に取った。それを俺に差し出しながら、小早川は話を続けた。


 「これは動作原理を検証するためだけのものですので、一切の付加機能を付けておりません。なので、見た目もシンプルなんですよ。

 あるのは起動のためのスイッチだけです。

 ですので、戻る時間は指定できません。ちょうど一日だけ戻せます」

 「一日だけ?」

 「はい。これはあくまでも、動作原理の確認用ですので。

 試してみられますか?」


 「どうぞ」と言わんばかりに、小早川は差し出していたその装置をぐいっとさらに突き出してきた。

 俺は戸惑いながらも、その装置を受け取った。

 俺はその装置を裏返してみた。装置の横も裏ものっぺりとした一面樹脂の筐体で、ねじ穴さえない。

 このしょぼい装置のどこに、そんな力があるんだろうか?


 「どうぞ、ご遠慮なく。安全も確認済みです」


 小早川に視線を向けた。

 自信に満ちた笑みを俺に向けている。


 俺はこの装置よりももっと発展したものが、動作するのを経験済みだ。

 そして、小早川はこのしょぼい装置の動作は確認済みだと言った。

 これでリセットできるのは疑う余地は無いだろう。

 とすれば、俺としてはあえて、ここでこれを試す理由は見つけられない。

 それどころか、ここで一日リセットするなんて、時間の無駄だ。

 だが、ここで試さないと言うのも、不自然な気もする。


 「そうですね。後で、試してみます」


 とりあえず、「後で」と言う事で、俺はお茶を濁すことにした。 


 「そうですか。驚きますよ」


 少し残念そうな表情の中にも、小早川の目は輝いている。


 「この二台はお借りしていいのですか?

 ワーキングサンプルは二台だけなんですよね?

 なのに、二台ともお借りして、大丈夫ですか?」

 「ええ。一週間でしたですね。そう予定しております」


 俺は手にしていた一台をポケットにしまいこむと、手を伸ばして机の上に置かれたままのもう一台をつかんだ。

 これで俺の計画実行をリセットする邪魔者を自分の管理下におけた事を確信した。

 有栖川のとんでもない願いを手助けして、それをかなえたとして、それを無かった事にできる者はいない。

 俺は自分の顔が少しにやりとしてしまった事に気づいた。


 あとは最後の計画の実行である。


 「こんなものを造れるなんて、ありすって、本当にすごいですね。

 明日、そのありすを見学できるでいいんですよね?」

 「ええ。ありすの予約をしていますので」

 「ありがとうございます。

 明日は、よろしくお願いします」


 少し興奮気味の口調になっていた。

 きっと、小早川は、この国が誇る世界で唯一の超スーパーコンピューター ありすをこの目で見れると言う事で、俺が興奮気味なんだと思っただろう。

 何しろ、科学者たちにとってはそれだけの価値のあるものだろうから。

 だが、科学と言う面からは、一般人でしかない俺はそれほどの価値を感じちゃいない。

 俺の口調が興奮気味なのは、自分が加担するであろうとんでもない事件を思っての事だった。

 まだ引き返そうと思えば引き返す事もできる。

 だが、有栖川夏帆の幼女のクローンを助けてからと言うもの、いや、もっと以前、宮島やよいのクローン 5号を助けてから、運命とやらは俺の背中を押し続けている気がしてならない。


 最後の作戦。決行は明日の土曜だ。

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