表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/74

夏休み明けの朝

 夏休みも終わり、九月になった。

 相変わらず、日差しはきつく、秋の気配はまだ遠い。

 久しぶりに教室に姿を現すクラスメートたち。

 とは言っても、俺や佳織、里保の所にやって来て、この夏の出来事を話すような奴はいない。

 上流階級には上流階級どうしのつながりがある訳で、俺たち庶民とあえて関わる必要などないのである。

 もっとも、庶民の立場に生活基盤をおいてはいるが、俺は本当の意味での庶民ではないのだが、そんな事周りの連中が知る訳も無い。


 ちらりと有栖川に目を向けると、この夏の間にあった出来事など無かったかのように、無表情で難しい本を見つめている。

 さて、どうしたものか。

 有栖川のクローンを一体を助けて、手に入れてしまった。

 そう。手に入れたと言う勇気は無い。

 手に入れてしまった。そんな気分だ。


 有栖川の願いをかなえる鍵とも言える、有栖川のクローン。

 有栖川の願いがかなえられる時、有栖川のクローン達は解放され、二度と有栖川のクローンは作られることは無くなるだろう。


 だが、その代償は大きい。

 俺は頬杖をついて、ぼんやりと黒板を見つめながら、そんな事を考えていた。


 一人、二人とクラスメートたちが、ドアから教室の中に入って来て、俺の視界の片隅に刺激を与えていく。

 ピンク色の移動物。

 そんな色彩に、俺の視線がドアに向かった。

 ピンクのカチューシャをした宮島やよい 2号だ。

 夏休みが明け、再び学校だと言うのに、その表情は夏休み前より生き生きしている気がする。


 「おはようございます」


 教室の入ったところで、明るく挨拶して、自分の席を目指している。


 「何だか、2号がうれしそうなんだけど」


 佳織が振り返ってきた。俺と同じ事を感じたようだが、そんな事を言われたって、その理由を俺が知る訳がない。


 「夏休みにいい事があったんじゃないのか?」

 「宮島の家はお金に困っているから、そんないい事なんてないと思うんだけどなぁ」


 俺の言葉に、すぐ里保が反応した。

 里保は少し首を傾げ気味にして、じっと2号を見ている。

 まあ、俺たちがここで悩んでみても仕方ない事だし、そんな必要もない。

 俺としては有栖川の方が気になってしまう。

 また毎日、有栖川と顔を合わせる訳だし、いつあの話に関して、話しかけてくるか分からない。

 悩ましい思いにとらわれている内に、チャイムが鳴った。


 生徒たちは自分の席に座り、じっと先生がやって来るのを待っている。

 しかし、授業が始まろうかと言うのに、空席が目立っていた。

 誰が来ていないんだ?

 そう思ったのは一瞬だった。教室の中に華やかな色彩が少ない。

 俺の席の位置からも宮島やよいのクローン少女たちのカチューシャがちらりちらりと見えたものだ。

 その宮島やよいのクローンたちのカチューシャが見えない。

 と言うか、宮島やよいのクローン少女たちが2号以外来ていない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ