運命かもしれない
佳織に出していた最後の指示。
それは、もしこの場に有栖川のクローンがいたら救出して、手に入れろと言う事だった。
有栖川の願いを聞くために、俺が頭の中で描いた計画。
それに必要な有栖川のクローンが手に入ってしまった。
まるで、運命は俺にそれをさせようとしているかのようじゃないか。
そんな想いで立ち止まり、階下を眺めている俺のところに、すみれ子がやって来た。
「被害は相当ですね」
「ああ」
すみれ子はここの設備の甚大な被害を気にしているらしい。
まあ、山城財閥の一人娘としては、当然の事だ。
「佳織さんが抱えているクローンは何でしょうか?
怪我でもされたんでしょうか?」
「すみれ子!」
運命かもしれない。
これから先、俺を断念させる事態が起きるとしても、今はそう思う事にした。
そんな思いが、俺を決意させた。
すみれ子に言わなければならない。
すみれ子の協力なしには、何も進まない。
「実は俺も迷いに迷っていたんだが、俺はクローンを救いたい。そして、あの子を連れて帰りたい」
すみれ子の目が点になって、固まっている。
すみれ子は反対なんだろうか?
すみれ子が一度瞬きをして、B2を見下ろして、ぼそりと言った。
「はい? あの姿のままですか?」
いや、それでは変態だろ?
「いや。それはちゃんと服を着せてだが」
そして、俺は有栖川のクローンを助けると言う願いだけでなく、クローンに対する俺自身の想いを語る事にした。
クローンを使った非人道的な人体実験。
落伍すれば処分すると言う、宮島やよいのクローン少女たちの未来。
そんなクローン達への扱いは、人の道を踏み外している。
クローンだって、俺たちと同じように生きているんだ。
「クローンたちを単なる製造物として扱うような事は間違っていると思うんだ。
人として扱ってやるべきだと思うんだ。
すみれ子だって、少しはそう思ってくれているはずだ。
だから、俺の頼みを聞いて、あの二人のクローンを人間にしてくれたんだろ?」
「はぁー」
すみれ子は大きく息を吐き出してから、俺を見た。
「お優しい事です事。まあ、そんなところが好きなんですけど。
この場にいるクローンたちは助ける事に協力いたしますわ。
ですが、ここの設備もいずれ復旧する事になると思いますけど。
そうすれば、再びクローン達が製造されましてよ」
「ああ。分かっているよ。
でも、大久保からこの会社は俺か、すみれ子の管理下に置かれるはずだ」
「私も協力して、クローン製造を取りやめると?」
「それは任せるよ。すみれ子の管理下になったんなら、すみれ子の判断で決めてくれ」
「困った方です事」
すみれ子はそう言って、肩をすぼめてみせた。
大久保は全てを自白させられた後、山城の家から追放された。
すみれ子のクローンは、すみれ子が自分と同じ顔のクローンが殺されるのは気分がよくないと言ったため、処分は免れた。
ただ、顔は整形され、記憶も書き換えられ、ただの孤児としてどこかの地方に追放されたらしい。
俺のクローンも東海化学の地階で発見された。
山城のお父様は一応俺にも気を使ってくれたのか、すみれ子のクローンと同じく、処分を免れ、整形と記憶の書き換えを施して、孤児として追放されたらしい。
偽物のすみれ子の車に乗った時に、主人公が打ったメールの全てが明かされました。




