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激突の予感

 すみれ子と数m先で向き合っているのは、大久保だ。

 その横には寄り添うように東原が怯え顔を作って立っていた。

 二人の背後には、この研究所の職員らしき人物、そして来客と思しき雰囲気の男たちが数人立っている。

 向き合うすみれ子側にはボディガード二人が、すみれ子のすぐ後ろに立っていた。


 「私はあなたがなされてきた事を反省いただけないなら、お父様に裁定をいただくこととします」

 「何を言ってるのか、分からないなぁ」


 大久保が顔を横に向けながら、うそぶいている。

 俺はすみれ子に向かって、歩き始めた。


 「しらを切られるのですか?」


 すみれ子の口調は厳しい。

 俺の場所からはその表情は見て取れないが、きっと大久保を睨み付けているに違いない。

 山城家の一人娘。

 それも、お父様の寵愛を一身に受けている。

 そんなすみれ子に睨み付けられて、たじろがない者はいないはずだ。

 たとえ、大久保と言えど、俺と同じ所詮は妾腹の子で、修行中の身にすぎない。

 殺生与奪の権はすみれ子にあると言っても過言ではない。


 「はっ。何を言ってるんですか?

 何か証拠でも?」

 「あるから、言ってるんです。

 小山さん。いますよね?」


 その言葉に、大久保の背後から一人の男が進み出て、すみれ子の横に並んだ。

 男は白衣を着ていて、この研究所の職員のようだ。

 それが糾弾されている大久保の側から、すみれ子の側に移動した。


 裏切りの瞬間。

 そんな感じた。


 「この人は、島原伸と言う人物のクローンを私に造らせました」


 やっぱ、そうだったのか。

 あれはクローン。

 自分のクローンの存在。

 そんな話を聞いて、いい気分はしない。

 だが、俺の思考はそれより先、この先の展開をどうする気だ?

 と言うそこに向かっていた。


 「どうですか。

 島原さんのクローンを造るとは、山城家に対する謀反行為です。

 お父様もお許しにはなりませんよ」


 すみれ子がそう言って、ずいっと一歩踏み出した。

 大久保の背後の者たちが動揺している。

 ここの職員たちは俺や大久保と山城のお父様の関係は知らないし、すみれ子も「お兄様」とは言っていない。

 俺のクローンを造る事の意味など、ここの職員たちに分かる訳も無い。


 だが、山城家への謀反行為。

 その言葉は彼らに重くのしかかっているようだ。

 大久保の背後で、お互い顔を見合わせているのは、どうすべきかを確認し合っているのだろう。


 「わ、わ、私は山城家に対し、忠誠を誓います」


 一人の男が真っ青な顔をして、すみれ子に走り寄ってきた。

 その男にすみれ子が、にこりとして頷くと、大久保の背後にいたここの職員らしき男たちが雪崩を打って、すみれ子の側についた。


 その様子を見ていた来客と思われる男たちも、慌ててすみれ子側に走り寄ってきた。

 ここの職員たちも来客と思しき男たちも、すみれ子の前で一礼したかと思うと、危険から遠ざかろうとするかのように、俺たちの背後に回った。


 今、大久保の所には威圧感もなく、怯えた表情で小さく震えている感じの東原がいるだけだ。


 すみれ子のところにはボディガードの二人。

 そして、そのすぐ後ろに俺と佳織。

 さらに背後に大久保のところから寝返ったここの職員たちと、来客の人たちがいる。


 「もう、決着はついたんじゃないですか?」


 すみれ子の言葉に、大久保がとぼけた表情を作り、両手で「さぁ?」と言うようなポーズをとっている。


 「じゃあ、仕方ないですね。

 彩香、島原先輩を連れてきて」


 俺の思考がその言葉に反応しようとした瞬間、俺の横を猛烈な風が通り過ぎた。

 俺の前に立つすみれ子の髪が、その風に揺れたのを見た瞬間、俺たちと大久保の間で、佳織と東原が両手を掴み合っていた。

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