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みんな一緒の登校

 今日はお弁当を持って、登校だ。

 クローンと言う存在だった頃、行った事の無かった学校。

 そこに行くことは結希にとってはとても楽しい事らしい。


 しかも、今日は高等部、中等部との合同行事である。結希は興味津々で、朝からハイテンションである。

 とは言え、そんな大したものではない。

 単に中等部と高等部が初等部の児童たちに開放されるだけのものだ。

 部活や施設も開放され、初等部の児童たちが自由に動き回り、中等部や高等部のお兄様、お姉さま方と触れ合うと共に、中等部、高等部に親しみを持ってもらおうと言うのだ。それでも、普段とは違うと言う事で、結希は楽しいのだろう。


 いつもなら俺たちより早く玄関に立っている事など無いと言うのに、今日は靴まではいて、俺たちを待っている。


 「ねぇ。早く行こうよ」

 「はい、はい」


 俺はそう言いながら、食卓の上に並んだお弁当を鞄に詰め込む。佳織は水筒を手にして、玄関に向かい始めた。

 結希が玄関のドアを開けると、夏の日差しと暑い熱気が一気に部屋の中になだれ込んできた。


 「今日も暑くなりそうだ」


 思わず口に出てしまった。何もこんな暑い日にしなくても。そう思わずにいられない。

 玄関に立って、靴を履いた段階で、すでに額に汗がにじみ始めた。


 学校への道のりは緑あふれる公園の中だ。

 アスファルトの焼けるような暑さは無いとは言え、湿気と熱気を含んだ空気が俺たちを包みこむ。

 おまけに、耳をつんざかんばかりの蝉の声。めっきり夏である。


 俺はすでにへばり気味である。

 俺の前を歩く白いブラウスにチェックのスカートと言う制服姿の里保も、かなり暑さのダメージを受けていそうだ。

 白のブラウスに濃紺のスカートの制服姿の結希は楽しみの方が勝っているのか、体が小さいと言うのに、俺たちの真っ先駆けて学校を目指している。

 俺の横を歩いている佳織は髪をなびかせ、何事も無いかのような汗一つ流さず、涼しげな顔つきだ。こいつが一番ダメージを受けていない。


 「ねぇ。今日は何をする?」


 一歩先を歩いていた里保が振り返って、たずねてきた。はっきり言って、俺には何のイメージも無い。きっと佳織もだ。


 「うーん。そうだなぁ」


 とりあえず、場をつなぐために、そう呟いてみた。


 「何、その気の無い返事。

 何も考えていないってわけ?」

 「はい?」


 お前も考えてないだろうがとは思うが、それを言ってもめるのも嫌だ。


 「もしかして、里保のブラウスから透けて見えるブラに妄想を抱いて、ぼぉーっとしていたんじゃないわよね?」


 確かに俺は里保の背中を見ていたが、それは俺の前を歩いていたからと言うだけだ。

 佳織の観察力には参ってしまう。しかも、それに対してよくもまあ、そんな言葉が出て来るものだ。


 「はい?

 俺は中坊じゃねぇよ」

 「えっ?あ、あ、あの、そのう」


 佳織が余計な事を言うから、里保が真っ赤になっているじゃねぇか。


 「俺も考えていたんだよ。でも、俺はこの行事に参加した事が無いから、イメージがわかなかったんだ」

 「あ、そっか。

 島原君と西野さんって、高等部に編入してきたんだよね?

 だから、この行事に参加した事無いんだ」


 そうなのだ。初等部から、この学校に入っていれば、当然初等部の時に参加しているはずだ。

 だが、俺たちのような途中編入組は実際のイメージがわかない。


 「まあ、心配しないで。私が結希ちゃんと一緒に回って行くから。

 島原君と西野さんは好きに回っていて」


 そう言ってから、ねっ! って、感じで、里保が首を傾けた。


 「いや、まあ。とりあえず、一緒に回ろう」


 俺がそう言うと、振り返って俺たちを見ていた結希が少しにこりとした。

 やはり一緒がうれしいのだろう。

 さっきの言葉は嘘ではなかったが、少しためらいもあった。だが、今の結希の笑顔で、俺は本当に一緒にいる気になった。

 俺は結希の所まで行き、手を差し出した。

 俺の手をうれしそうに掴む結希。かわいいじゃないか。

 俺が結希に微笑むと、結希も微笑み返した。


 「行こう」


 そう言って、小走りに駆けだしはじめた。

 手をつないでいる俺も少し早足で学校を目指す。

 暑さが体を痛めつけるが、気分は軽やかだ。

 緑に囲まれた公園の中の道を進んで行く。俺たちの後を佳織と里保が続いていた。

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