表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/74

かわいいワルたち

 俺が一歩踏み出して近づくと、背後はもうコンビニのガラスだと言うのに、男たちは一歩後退した。中には背後のガラスにぶつかりよろけた奴もいた。


 「ま、ま、待てよ。俺たちはもうお前たちを襲ったりなんかしないよ」


 男たちの一人が両手を差出して、俺が接近するのを拒む様な仕草をしながら言った。

 その声は上ずっていて、あの暑い公園の中で俺に見せた余裕の表情はかけらもない。

 それだけ、佳織に瞬殺された事が恐怖なんだろう。


 「いや、別にそれはどちらでもいいんだが」


 襲えるものなら、襲ってみろ。

 そこまで言っているつもりはなかったが、男たちはそう受け取ったようだ。俺の言葉に威圧されたのか、表情の硬さが増した。

 そんな男たちの横で、佳織はうれしそうににこにこしている。


 一瞬の内に、男たちを瞬殺できる佳織。次の瞬間に、自分たちは襲われて、地に伏しているかも知れない。

 そんな佳織が意味も無く、にこにこしている。

 男たちにとったら、佳織の笑顔は不気味で恐怖だろう。


 男たちをもう少しこのままにして、精神的プレッシャーをかけてもいい。

 日ごろ、ろくな事はしていなさそうだから、逆の立場に身を置くことで、反省の機会になるかも知れない。

 なんて、考えない事もなかったが、この蒸し暑さから、俺はさっさと解放されたい。

 一気に用件を終わらせる。俺の頭の中で、そう結論が出た。


 「俺たちが知りたいのは、俺たちを襲った理由だ。

 誰かに頼まれたんだろ?」


 男たちは固まったまま、ぎごちなくお互いを見合わせたかと思うと、肘でこづき合い始めた。「お前言えよ」 そんな感じだ。


 「教えてくんないって訳?」


 佳織が冷たい視線で、男たちに言った。

 何かしてくるんじゃないだろうな。そんなドキッとした顔つきで、男たちの視線が佳織に集中した。


 「言わないんなら、言えるようにしてあげてもいいんだけど」


 そう言って、右手を少し上げた。男たちの表情が強張った。


 「言います。言います」


 佳織と俺に視線を行ったり来たりさせながら、哀願している。

 佳織はその少し上げた右手で自分の髪をふぁさっと、かきあげただけだった。

 絶好の脅しだ。

 いや、佳織は本心ではからかって弄んでいるのかも知れない。


 「で」


 佳織がそれだけ言った。


 「ネットで誘われたんです。あなたたちを襲えばお金をくれるって。

 でも、相手の素性は分かりません。本当なんです」


 その可能性は十分想定していたが、残念な言葉だ。

 嘘と言う事もあり得るが、こいつらの表情を見ていると、その可能性は低い。


 「つまんないの」


 そう言った佳織の顔は唇を尖らせて不満いっぱい顔で、本当につまんなさそうだ。

 どれだけトラブル好きなんだ。

 佳織に恐怖を抱いている奴らは、その佳織の不機嫌さがより一層の恐怖に感じるらしい。慌てて、あの時の黒Tシャツの男が話しはじめた。


 「あ、あ、あのですね。俺たちをそそのかした相手が何者なのかは分からないんですが、連絡方法はあります。

 と言いますか、あれからもあなたたちを襲うように言われたんです」

 「そうなんだぁ。俺たちは別にいいんだけど。もう一回、遊んであげても。

 どうよ?」


 男の言葉に俺は遊び心でそう返して、睨み付けてみた。

 男はこの蒸し暑さのせいもあるのだろうが、汗を吹き出しながら、俺と佳織に視線を行ったり来たりしながら、言葉を続けた。


 「い、い、いえ。もう充分です。も、も、もちろん、きっぱり断りました。あなたたちなんか、相手にしたら、こっちの命がいくらあってももちませんから」


 そう言った男の顔は引きつっている。

 全く、かわいいじゃないか。予想通りの反応だ。

 ワルにはこれくらいのお灸はすえておいた方がいいだろう。少しは大人しくなるかも知れない。

 もう少しからかってやるか。

 少し斜に構え、目を細め、脅すように言ってみた。


 「で、連絡を取って、その相手を呼び出せるのか?」

 「報酬は現金での受け渡しなので」

 「よし。適当な時間に、適当な場所へ呼び出してくんない?

 今すぐ電話して」


 俺の言葉に反応するかのように、佳織は一番近くにいた男のポケットから、携帯を抜き取ると、男の顔の前に突き付けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ