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俺をわなにはめたのは?

 襲われた吉川も山城系列の研究所に勤める者。

 山城の家の意向に従い、俺を犯人では無いと証言してきたらしい。

 そして、あの時、犯人が車に手を付いたとして、新たな証言をした。

 当然、そこに俺の指紋がある訳などない。

 その指紋が俺とは異なると言う事もあって、俺は晴れて解放されたのだ。


 全ては山城の家が仕立てたストーリーだ。

 そんな事は俺だけでなく、警察だって感じていたはずだ。

 だが、そこを突く事は誰にも許されない。

 みな、新たな新証拠を納得顔で受け入れた。



 釈放された俺を迎えに来た山城家の高級車ポールスポイスの後部座席で、すみれ子と並んで揺られている。

 前の席に座っているすみれ子の警護についている男と運転手は黙っていて、車の中は俺とすみれ子の声だけがしていた。


 「佳織さんが記録していた映像で、お父様は無実だと言う事をお認めになられました。

 このような事、一体、誰が仕組んだんでしょうか?」

 「俺が思うに、俺にあの日のアリバイを作らせないようにした田島が一番怪しいんだが、そう簡単な話ではないと思うんだ。

 この事件には、山城の家の事情も知っていなければあり得ない計画だ。そう考えると、田島と言う可能性は低いと思うんだよな」

 「それに、あれはクローンでしょうか?

 だとすれば、かなり相手は絞られると思うのですが」


 俺にはすみれ子の言いたい事が分かった。

 クローンを造れる者。

 それも、山城の家と関係する者で。


 俺の脳裏にも、その名は浮かんではいた。

 動機もありえる。

 俺との対決。

 あるいは、この前の東海化学の事を根に持っていると言う事だって、考えられる。

 だが、その名を上げる事は危険な事だ。

 すみれ子の考えを違う方向に持っていきたい。


 「あれだけではクローンなのか、ただの変装なのかは分からないな」

 「私、大久保のお兄様を疑っているんですけど」


 俺の思いは見事に外され、すみれ子に直球を投げ込まれた。


 「おいおい。そんな物騒な事は言ってはいけない」


 慌てて、俺はその言葉を遮った。

 だが、あれが俺のクローンだとすると、それ以外考えられないのが事実だ。

 心の底で思っている犯人と、すみれ子が思う犯人。

 二人の意見が一致する以上、その確率は非常に高い。


 「でも、心当たりがおありなんですね?」


 そんな事を考えている俺の顔を覗き込むようにして、すみれ子が言った。


 「やはり、大久保の? ですか?」


 図星? と言うような視線を俺に向けているすみれ子に、ちらりと視線を向けた。


 「私、あの方、どうも好きになれないんですの」

 「その発言、危ないだろ」

 「そうですか?」


 すみれ子は少し不満そうだ。大久保が好きでないとして、どうしろと言うんだ。

 世間には隠されているが、あいつが山城のお父様の子供である事は間違いない。いわば、すみれ子や俺とは異母兄弟だ。

 俺は心の中で、大きくため息をついた。


 俺を乗せた車が俺の住むハイツの前に停車した。

 緑広がる広大な公園を背景にこじんまりと建っているクリーム色の建物。


 懐かしいじゃないか。

 そんなに留守にしていた訳ではない。

 なのに、車の窓から見える俺のハイツを見た時、やっと帰って来れたと、胸が熱くなってきた。

 ドアを開けるレバーに手をかけると座席に座ったまま、すみれ子に振り返った。


 「ありがとう。助かったよ」

 「気にしないでください」


 にこりとしたすみれ子の微笑み。

 天使の微笑みにさえ思えてしまう。


 「じゃあ。また」


 そう言って、車のドアを開いた瞬間、俺たちの気配を感じたんだろう、佳織が玄関のドアを開けて、外に出てきた。


 俺は車を降りると、佳織に軽く手を上げた。

 佳織に笑みとか、俺の所へ飛び込んでくるとかの行動を期待していた訳ではなかったが、まさかぷいと横を向くとは思っていなかった。

 そんな佳織に、苦笑いをしながら、車の中のすみれ子に視線を向け、手を軽く上げた。


 「ありがとう。気を付けて」


 にこりとしたすみれ子が軽く頭を下げたのを見ながら、俺はドアを閉めた。


 すみれ子を乗せた車が静かに発進すると、俺はその車の後姿を見送りながら、手を振った。

ついに、主人公とすみれ子の関係が明らかになりました。

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