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容疑者 島原伸?

 自分そっくりな奴の写真を見ながら、黙りこくっている俺に警官はしびれを切らしたようだ。


 「だれだと聞いているんだが?」


 警官は声を荒げた。

 期待している答えは「俺です」なんだろう。だが、俺な訳はない。

 じゃあ、正解は? と言われても、答えは持ち合わせていない。


 「誰なんですか?

 俺にそっくりですけど」


 これ以外にない。これが正直な俺の気持ちであり、俺の答えだ。


 「そっくりときたか。どう見ても、お前なんだが」


 そう言って、警官はその写真を俺の顔の横に突出したかと思うと、写真、俺と警官は視線を行ったり来たりさせている。

 そして、俺を睨みつけながら言った。


 「しらを切るなら、まあいい。

 この写真の少年はな、一昨日、馬町先端技術研究所の研究員 吉川元治を待ち伏せして、車から降りたところをナイフで刺して逃げた男だ」


 馬町先端技術研究所の吉川?

 まずいじゃねぇか。吉川と言えば、あの大久保の管理下にある馬町先端技術研究所のエース級の研究者で、俺がリセットスイッチの開発を頼んでいる今熊野科学技術研究所の小早川淳史にも並ぶ存在だ。

 どう言う事だ? そんな男を俺とそっくりの男が狙うなんて。


 「とにかくだ。署まで来てもらおうか」


 そう言い終えたかどうかのタイミングで、俺の右手を掴んだ。

 その警官の腕を掴もうと佳織の腕が伸びてくるのが、俺の視界に映った。 俺は体を少しよじり、左手で佳織の手を払った。

 俺が振り向くと、佳織が頬をぷぅっと膨らませていた。

 警官も怪訝な顔つきで、佳織を見つめている。

 彼女は一体なにをしようとしたのか?

 その先にまさか女の子が警官の腕をねじ上げようとしたとは思ってはいない。


 「俺、行きます」


 俺の言葉に、警官たちは視線を俺に戻して、うんうんと頷いた。俺は視線を佳織に向けた。


 「佳織はここで普段どおりの生活をしておいてくれ」


 その言葉に、里保も結希も俺のところまでやって来た。

 心配そうなその顔を見ていると、少しうれしい気分になった。


 俺はそのままパトカーに乗せられた。

 いかつい男たち二人に挟まれ、車に揺られている。

 警官たちも何も話しかけてこないので、この空間はロードノイズとかすかなエンジン音だけの結構静かな世界だ。

 俺はひたすら前を見つめながら、この事件の真相を考えていた。


 狙った相手。

 あの大久保のところのエース的研究者。小早川に頼っている俺からすれば、邪魔な存在とも言える。

 知っている者からすれば、動機は十分だ。

 特に山城のお父様も、俺を疑うに十分な相手だ。


 狙った時期。

 すみれ子はお父様と海外に保養に出かけていて、日本にはいない。


 そして、犯人の姿。

 全く、俺ではないか。


 山城の家が捜査に干渉するのを阻む要素がいっぱいだ。

 全てが、俺の素性に詳しい者が、俺を陥れようといているとしか考えられない。


 誰が仕組んだ?

 犯行が行われた日に、俺にアリバイがあれば、この計画は破たんする。

 あの日、あの三人以外に俺のアリバイを作らせない必要があったはずだ。

 そのため、俺をあの家の中に閉じ込めた。

 俺がずっと家の中に、こもる事になったのは田島が原因だ。

 田島か?

 だが、田島は俺の素性を知らない。そんな奴が俺を装って吉川を狙わせる理由がない。

 誰だ?

 それに、あの犯人。あれはなんだ? 変装か? それとも、俺のクローンなのか?

 警察署に到着するまで、十分な時間はあったが、俺はこの謎を解く事が出来なかった。


 その日から、俺は見事なまでに容疑者として、取調べを受けることになった。

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