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僕の思い出。

 好きな子に振られた。

 二年間思い続けた人に振られた。

 3月、桜の下、卒業式の日。


「なー鈴乃(すずの)、いつになったら佐々木(ささき)さんに告るんだよ。」

「またその話かよ八橋(やつはし)……まあいつか告白出来たらとは思ってるけどさ。」

 僕、鈴乃和(すずのかず)には好きな人がいる。隣のクラスの佐々木愛(ささきあい)さんだ。

「いつかいつかって、お前それいつから言い続けてるんだよ。明日で中学も卒業なんだからさ。」

 そしてこの少年は八橋光季(やつはしこうき)。優しい性格と優しそうな見た目で一部の女子からは『かわちーはし』なんて呼ばれている。

「ほんと、頭いいのになーお前。」

「お前だって頭いいだろうが。」

「県内公立トップ、他県の人にも名が知られてるような高校に受かったやつに言われてもなぁ。それに……」

「なんだよ。」

「お前、その高校に選んだ理由佐々木さんを養うためだろ?好きな人のために偏差値70越え目指すなんてそうそうできねえよ。それも付き合ってもない女子のために。」

「……うるさっ。」

「まあどっちにしろ、がんばれよ。応援してっから。」

 そう言って椅子から立ち上がる八橋を見送り、考え事をする。

 佐々木愛さん、5月15日生まれ、おうし座。野菜が嫌いで給食はいつも残してる。かなりのオタクで、僕がオタクになった原因。漫画やラノベが大好きで、BL好き。身長が高くてスタイルがものすごくよくて、そしてかわいい。嫌いに思っている人に出会ったことがないほど性格がよく、その上勉強もできる学級委員。絵もうまくて、この前は授業中にバニーガールを嬉々とした目で書いてた。その絵も付箋に書いたとは思えないほどうまかった。天が二物も三物も与えた女神のような存在。考えれば考えるほど出てくるあの人のこと。そのすべてがいとおしくて、好きだった。

「……それに比べて僕はなぁ。」

 身長は高いがそれだけ。顔も体格も並みかそれ以下だと思っている。それに慎重だって高いとは言ったもののギリギリ175ある程度、もう二、三年成長も止まっていて、正直めちゃくちゃ高いといえるほどでもない。だから、佐々木さんの隣に立てるよう努力はした。勉強はがんばって東京の某大学に数十人の合格者を出すような県内トップの公立高校に受かったし、生徒会長も学級委員長もなってきた。でも、まだまだ足りない。こんな人間、佐々木さんの隣どころか足元にも及ばない。何か、何かできることはないものか……


「……それで俺に相談に来たと。」

 悩み続けた結果結論が出そうになかった僕は、恩師のもとに向かっていた。だらけがちだった僕を最後まで応援して合格へ導いてくれた塾の先生。

「いやまあ、一人で悩んでいても永遠に答えが出ない気がしたので、人生の先輩に……」

「いいけど俺未婚ぞ!?ええんか!?」

「はい。言葉一つ一つには重みがあるのに感性が学生のままな山内(やまうち)先生だからこそ相談したいんです。」

「ギリギリバカにしとらんか……?まあいーけどさぁ。卒業前に告白するか悩んでる、でも告白したところで絶対にチャンスはないと思っとるんだろ?それなら、悔い残さんほうがいいと思う。今告らんかったらどうせもう関わる機会なくなるんだから、だったら告ったほうがいいだろ。」

「……なるほど。」

「絶対明日、卒業式、告れよ。結果待ってるからな。」

「……わかりました。先生が言うなら、勇気出してみます。」

 結果はわかりきっている。絶対だめだろう。でも、あの山内先生が言うんだ。逃げないで、告白しよう。



「……この三年間みなさんは……」

 長い長い卒業式も終わり、教室に戻ってきた僕らは最後の学活をしていた。なんだか担任の結婚報告があった気もするが、そんなのはどうでもよくなっていた。今日、僕は佐々木さんに告白する。なにがなんでも。全力で。


 ……そして時はやってきた。卒業式後、教室から出て吹奏楽部の演奏を聴きながら校門前の広場へ。今しかないだろう。でも、今だけは嫌だった。だって卒業生全員が集まってる。120人の卒業生の前で告白するのは……


 ドンッ!

「お前さぁ、今行かなくてどうするんだよ!」

 後ろからの衝撃に驚くと、後ろには八橋がいた。

「今しかないだろお前。行ってこい。応援してるから。」

「……わかった。」


「佐々木さん!」

「……!」

「ちょっとだけ……いいかな。僕は、あなたのことが大好きだ。どうか、付き合ってください!」

 声が震える。指先が震える。足が震える。受験の時も、生徒会の選挙の時も、どんなときにも感じたことのない緊張感を感じながら腰を90度に曲げる。どうか……どうか……



「……ごめんなさい。」

「……うん。」

 審判が下されたとき、なぜか僕の表情はゆるんだ。無感情。でも、真顔にはなれない。その小さな一言で感情がすべて吹き飛ばされたかのような感覚に襲われながら僕はただ力なく立ち去るしかなかった。


 好きな子に振られた。

 二年間思い続けた人に振られた。

 3月、桜の下、卒業式の日。

 きっと僕はもうこの日を忘れられない。それはもちろん、いい意味ではない。悲しい、深い、そんな思い出。

 でも、不思議と肩の荷が下りた気もした。好きな子のために全力を尽くす。それが無駄になったとき、これ以上の努力はいらないのだと感じた。

はじめまして、風斗です。あまり面白くはないかもしれませんが、楽しんでいただけたら幸いです。。。

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