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第7話:小さな異常

朝の光が城下町に差し込む頃、リリエルは街の広場に立っていた。

足元の石畳は冷たく、歩くたびに微かな響きを返す。

その石畳の上に、小さな異常の兆しが広がっていることを、彼女は感じ取っていた。


水路を流れる水の流れが、いつもと少し違う。

波紋は小さく揺れ、光を反射する角度が微妙にずれていた。

子供たちの遊ぶ声も、どこか鈍く、跳ねる音が弱い。

人々は何も気づかず、笑い、働き、生活を続ける。


「聖女を追放した結果……?」

カインは城の書庫で呟いた。

冷たい風が差し込み、書類の端がひらりと舞う。

目の前の数値は正常のまま、異変は見えない。

しかし、彼の心の奥には確かな違和感が残る。

後悔と焦燥が、じわじわと胸を締め付ける。


騎士団長レオンハルトは、城のバルコニーから城下町を見下ろしていた。

「……何かがおかしい」

街の人々の歩き方、声の張り、商店の魔力の揺らぎ。

すべてが微かに狂っている。

だが、数値には現れない。誰も気づかない。

焦燥と苛立ちが胸に積もる。自分は何もできないのか――


リリエルはその街を、静かに歩きながら観察する。

風の匂い、鳥の声、遠くの噴水の水面、瓦の微かな傾き。

すべてが異変の兆しを示している。

しかし、彼女の動きは穏やかだ。

触れた魔力を整え、壊れかけた水路の流れを微かに修正する。

誰にも気づかれない、しかし確実に世界は救われていく。


広場の角、古びた井戸の水がわずかに濁る。

人々は首をかしげるが、理由は分からない。

リリエルは手を差し伸べ、静かに水を清める。

微かな魔力の波が水面を伝い、井戸は元の清らかさを取り戻す。


「まだ、間に合う」

小さく呟き、彼女は歩みを進める。

街を行き交う人々には、何も変化は見えない。

だが、世界は確実に動き始めていた――

静かな聖女の手によって、確実に、ゆっくりと、壊れた秩序が修復されつつあった。


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