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第22話:崩壊の加速

街全体が、目に見えて揺れ動いていた。

瓦が次々に落ち、井戸の水は泡立ち、街灯は瞬きながら不規則に光を放つ。

人々の足取りは鈍く、表情は硬く、子供たちは遊ぶことをやめ、親は何かに怯えたように見回す。

世界は、確実に崩れつつあった。


城内のカインは机に突っ伏し、額に手を当てる。

「聖女……俺たちは……何をしてしまったんだ……」

数字上の異常は一切ない。

だが、胸の奥に押し寄せる焦燥感と苛立ちは、理屈では抑えきれない。

正しいと思った判断が、街と世界を狂わせていた現実が、痛すぎるほどに目の前にあった。


レオンハルトもバルコニーから街を見下ろす。

歩く人々の微妙なリズム、商店の魔力の揺らぎ、街灯の瞬き。

数値では表れない異常が、確かに存在していた。

「聖女……まだ間に合うのか」

無意識に視線が街角のリリエルに向く。

直接的には気づかない。しかし、街の異変を止める鍵が目の前にあることを、潜在意識の底で理解しかけていた。


街角ではリリエルが立ち止まり、微かな魔力を指先に集める。

濁った井戸の水はゆっくりと清らかさを取り戻し、商店の魔力は安定する。

街灯は光を取り戻し、瞬きは消える。

瓦の落下は止まらないが、被害を最小限に抑え、街の人々を守る力となる。

誰もその変化には気づかない。

しかし、確実に世界は救われていく――静かに、決定的に。


風が街を通り抜け、冷たく人々の肌に触れる。

瓦が崩れ、街灯が瞬き、水面が大きく波打つ。

街の人々は日常を送る背後で、聖女の手は今日も世界を守り続けていた。

誰も気づかない。しかし、この静かな救済こそが、街と世界の未来を繋ぐ唯一の力であった。


カインとレオンハルトは、潜在意識の奥底で、目の前に立つ聖女こそが世界を救う希望であることを、初めて理解しかけていた――

そしてその瞬間、世界の運命を左右する新たな兆しが、街全体に広がり始めた。


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