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5.【漆黒】

「…はあ」



 私は思わずため息をついてしまった。「今日は用事があるので…」と、いかにもな虚言を言い、部活動から逃げるように去ってしまった。私っていっつもそうだ。肝心なところでの”後一歩”がなかなか踏み出せない。明日こそは絶対に活動しよう。そう心に誓い、私は街の帰路を辿っていた。


 しかし、どこか風景に引っかかりを感じた。今日はやけに人がいない。いつもこの時間ならを考えると帰る人はたくさんいるのに…すると、空が一気に暗くなった。夕焼けの光をも瞬く間に侵食した。



「やあ、初めまして」



 その声は、私の目線の上からあった。視線を向けると、そこには全身が黒に覆われた少年がいた。椿さんとは対の、暗い色のキラキラが見えている。



「君はこんなところで何をしているのかな?…なのに、」



 …?途中の部分が聞き取れなかった。

 それが表情やら動作で読み取れたのか、少年は「…あーなるほど」といい、




 そう言った瞬間、私の後方からキラキラした光と共に何かがやってきた。白い羽が舞う。後ろを振り向くと、あの椿さんがいた。屋上で見た、あの椿さんが、



「つ、椿さん!?」



 そんな私の姿を椿さんはスルーして、少年の方へと向かった。



「あなたは懲りませんね。私を呼ぶためですか?」



少年は「チッ、もう来たか」と言いながら迷惑そうな顔をし、



「…まあいいよ、いつか必ず真実を教えてあげる。それじゃっ」



 少年はそう言いながらもとからそこには何も無かったかのように消えてしまった。

 その瞬間、外は明るくなり、車や人通りがいつも通りに戻った。

 少年のいた場所には、多くの白い羽と、たった一枚の漆黒の羽が残されていた。

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