ダム湖の呼び声
記録的な猛暑と渇水により、かつて「水神(みずがみ)の村」と呼ばれた集落を沈めたダム湖が、その湖底を露わにした。民俗学を学ぶ大学生の海斗(かいと)は、ゼミのレポート作成のため、数十年ぶりに姿を現した廃村を訪れる。干上がった地面には、鳥居だけの神社や住居の基礎が不気味に佇んでいた。村の歴史を調べるうち、海斗はダム建設の際に人柱となった巫女の存在と、「渇きの年、水神は生贄を求める」という古い言い伝えを知る。ある日、湖底の神社跡で巫女のものと思われる古い櫛を拾った時から、彼の周りで怪異が頻発する。耳元で水がごぽごぽと湧く音が聞こえ、乾ききったはずの地面に濡れた足跡が出現する。そして、夢の中では水底から無数の手が伸び、海斗を湖底へと引きずり込もうとするのだった。渇水は、新たな生贄を求める巫女の怨念が引き起こしたものだった。ダムに再び水が満ちる時、海斗は自らが水神への次の供物となる運命を悟る。
ダム湖の呼び声
2025/08/15 10:11