12ー2
「────」
そっと、二人が顔を見合わせる。小さく頷きあうと、彼女たちはまた、私へと目を向けた。
「……その、さ。仲間外れにしたいわけじゃないんだよ、本当に」
語られ始めたその言葉に嘘はないように思える。二人の顔には罪悪感のような色が滲んでいた。
「ただ、どうしていいのかわからないんだよ。多分さ、っていうか絶対あたしら蝶に嫌な思いさせてたじゃんか。思い当たることあるもん、あたし。それなのにさ、のうのうと友達続けていいのか、わかんなくて」
「っ、あたしはさ、あたしは蝶と友達やめたくない! でも、どんな顔してたらいいかわからなくて……どうやって謝ったらいいのか、わかんなくってさ……」
何か言葉を返すべきなんだろう。問いかけたのは私だ。でも、その答えは私に向けられたものじゃない。私が受け取るべき言葉じゃない。それを受け取らなきゃいけないのは、受け取るか拒むかを決めるのは──。
「……私は」
一歩を、蝶が踏み出した。私の隣に並んだ蝶はしっかりと顔を上げて二人を見ている。だけど掴んだままの腕からは震えが伝わってきていた。
「私は、これまでと同じように二人と友達でいたいよ。そりゃ、二人の言葉に嫌な思いをしたことはある。あったよ、色々。だから、それを二人に知ってほしい。何が嫌で何がだめなのか、何が嬉しいのか、ちゃんと話したい。二人にもそういうの、教えてほしいって思ってる。けど二人が楽しくないのはだめだからさ、もしめんどくさいとか嫌だなって思うなら──」
「い、嫌なわけないじゃんか!」
「そうだよ蝶、あたしら蝶のこと大好きだから嫌でもめんどくさくもないよ、そんなの!」
大きな音を立てて椅子が揺れていた。勢いよく立ち上がった二人は互いに顔を見合わせると小さく笑みをこぼす。そうして、その笑みを私たちにも向けてくれた。
「よかった。あたしたち、蝶に嫌われちゃったと思ってたから」
「き、嫌いになんてならないよ! 私も、二人のこと大好きだから。でも鈴には、その、ちゃんと謝ってほしいなって」
「……うん、わかってる。あたしたち無神経だった。無神経だったし、ちゃんと話そうとしてなかった。だから、ごめん、二人とも」
ごめん、ともう一度口にして二人は頭を下げる。
そんな二人から目を逸らしてちらと周囲の様子を伺う。蝶のクラスメイトたちは一見気にしていない風を装いながらも、ちらちらとこちらに目を向けていた。もしも私が絡んだ諍いじゃなければ、こうやって目を向けられることはなかったんじゃないだろうか。
蝶はひとりぼっちじゃなくなった、と思う。だけどまだ、このままじゃいけない。講師の彼の言葉は、みんなには、全員には届いてない。
だってさ、届いてたら小声で、修羅場か? 四角関係? 極寂さんってさぁ、とか、馬鹿なこと言わないでしょ。聞こえてんだよ全部。
だからあともう一つだけ、やらなくちゃ。
屋上から叫ぶ声は、果たして地上にいる生徒たちに届くんだろうか。




