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恋愛短編集

淡い恋がのこしたもの

作者: 月影 鈴夜

今回の短編は由菜の淡い恋についての話です。

私の名前は今井いまい 由菜ゆな。ごく普通の中学二年生。


好きな人が居るの。小学五年生の時からずっと好きなのよ。


それでね。その人と最近両想いになれた訳ですよ。嬉しすぎて泣いちゃった。


私は今日はその好きな人と一緒に帰る。楽しくて嬉しくてふわふわしていた。


その時だった。ふと彼が「手、繋がない?」と聞かれて頷く。


彼の温もりに触れた時にドキドキと胸が高鳴る。幸せな日々だったの…。


三ヵ月ほど経った頃だった。彼が他の女の子と一緒に帰っているのを見た。


手をつないでいてその子は彼の肩にもたれていた。茫然と私は立ち尽くした。


どういう事?いわゆる浮気ってやつ?どうして、どうして彼が…。


震えて立ち尽くしていた。そして、パッと学校を飛び出し駅に向かう。


だけどお金が無い事に気づき一度家に帰り着替えて荷物を詰めて飛び出した。


電車に乗りどこか遠くに消えてしまおう。気付いた時にはそうしていた。


気付くと東京から神戸まで来ていた。何時間も経っていたのだ。


夜だった。それでもまだ乗って適当に乗って気づくと終点だった。


静かな落ち着いた場所だった。花山駅と書いてあった。とりあえず駅を出る。


ふらふらと歩いているうちに坂道が多いなと思った。気づくとローソンに居た。


もう夜の十時だ。大人っぽい服装で来たし多分怪しまれないはずだ。


そしてローソンに入り夜ご飯を買う。男子が居た。同い年くらいだろうか。


でも…年上っぽい雰囲気がある。その人を見つめていると彼が気付き振り向く。


そして、「どうかしたん?」と聞かれ「なんでもないの。ごめんなさい」と言う。


彼は「君、中学生くらい?」と聞かれ頷くと「僕は中三」と言う。


私も慌てて「中二です」と言う。彼はクスっと笑い「どこ住んでるん?」と聞く。


東京と答えると驚いて固まっていた。そりゃ無理もない事だよね。


彼は大池に住んでいて家がこの近くだと言っていた。


私はふとこの人に全て話してしまいたいという思いに包まれた。


だから「あのさ、話し聞いてくれないかな?」と聞く。


彼は快くいいよと言ってくれた。ゆっくりと今日あった事と今までの事を話す。


話し終わると彼は「そっか、そりゃ辛かったな」とサッパリした感じがした。


彼は颯爽としていて彼に似合う名はそうまだと思っていた。


その時彼が「そういや自己紹介するの忘れてたな。俺は山田 颯真」と言った。


は?思わず私は彼をまじまじと見つめてしまう。だって…当たり前でしょ?


似合うなって思っていた名前が本当にそうだったのだもの。


こんな偶然あるのだろうか?彼は「君は?」と聞かれ我に返る。


そして「今井 由菜」と言う。彼は「由菜さんはこれからどうすんの?」と聞く。


言われてみればそうだ。これからどうしようか?帰るにしてもどこに?


どうやって?私はついわがままを言っていた。普段の私だったらありえないのに。


「颯真君に着いていきたい」


そう言った私に彼が微笑み「別にいいよ」と言ってくれる。


驚いていると彼は「今から俺、家出するからちょっと待ってて」と言う。


彼も家出しようとしていた所という事だろうか?偶然が重なり過ぎだ。


彼は不思議だ。初めて見た時からそうだった。何故か懐かしくて…。


人を惹きつけるような才能が彼にはあると思う。でも、その彼が家出だ。


一体何があったというのだろうか?こんなにもカッコいいのに…。


ってさっきからただの私の感想なのですがね。彼はローソンで色々買う。


そして家に帰る。親と何か言い合いしている声が門まで聞こえてくる。


彼が最後に叫んだ一言は「いかなきゃならない所があるんだよ‼」だった。


そして家を飛び出してきて私の手を掴み走って行く。こけそうになる。


私が遅いせいで彼に迷惑がかかっているかもしれないと思うと苦しくなる。


そして、もう十一時すぎだというのに大池駅まで行って電車に乗り込む。


有馬口を通って三田(兵庫)に着く。そして二時間後には大阪に着いていた。


その時には終電ばかりでとりあえず大阪で下りると彼は言った。


そして大阪のコンビニに入る。二人して大人っぽい格好をして。


お金は十万円持ってきているから全然大丈夫。颯真君ってやっぱり不思議だな。


彼と居ると怖くない。私は人混みが大の苦手だった。でも、彼と居ると大丈夫。


私は彼に聞く。「どこに向かっているの?」


彼は振り向き「東京」と言った。私は固まる。それってどういう事?


私の事を家に帰そうとしているの?酷いよ。もう知らない。颯真君なんて嫌いだ。


泣きそうな私に彼が気付き「嫌だよな。でも俺東京に行かなきゃなんだ」と言う。


どうして?と思った私に「お前が言っていた彼に言いたい事があるんや」と言う。


え?と思っていると彼が「っていうか今はなんとか夜を乗り越えなきゃ」と呟く。


そして二人で夜の街を歩き電車が始まるのを待った。


電車がまた始まり東京に向かう。三時間後くらいに着いた。


今は夏休みだから学校はない。だから補導される事もなかった。


そして、彼の家に来る。インターフォンを鳴らす。


彼が出てきて「由菜どうした?」と言い「そいつ誰だよ?」と言う。


私が黙っていると颯真君が「由菜さんはあなたのせいで傷ついた。


浮気していたくせにっ!これ以上由菜さんに近づくな。


そして、俺は颯真だ。お前に文句を言う為に神戸から来た」と言った。


私が颯真君を茫然と見つめていると「由菜さん大丈夫?」と聞かれる。


「大丈夫だよ」と言い「ありがとう。私の為に家出なんかしてくれて」と伝える。


颯真君はクスっと笑って「俺がしたくてしただけだっつーの」と言った。


初対面なはずなのにどうしてここまでしてくれるのかな?


そう思った時だった。「由菜さん。俺と今から付き合う?」と聞かれる。


どういう意味なのか分からないまま固まっているとアイツが言う。


「お前何者だよ?俺が浮気ってどういう事だよ?それに付き合うって」


颯真君が「俺は名前を教えた。君だって教えてくれたらいいだろう?」と言う。


アイツが仕方なさそうに「野田のだ 春俊はるとし」と言った。


颯真君が「それで春俊は浮気していないって言うのか?」と聞く。


春俊が力強く頷く。段々と修羅場みたいになっている気がするのは気のせい?


春俊が叫ぶ。「俺はっ!由菜を愛している。大好きなんだよ」


それに颯真君が「俺だって由菜さんがほしいよ」と呟く。


春俊が怒りの混じった声で「由菜はものじゃない」と言う。


やっぱり修羅場?いやそんな事もないような気がする。


一人だけ取り残されている私に颯真君が「どっちを選ぶんや?」と聞かれる。


ドギマギしながら「まずは春俊が浮気していたか確かめようよ」と私は言う。


そして、二人は私の言う事に従った。そして分かった事は私の勘違い。


昨日一緒に帰っていた子は妹だったのだ。確認はもう取れた。


颯真君は悲しそうな顔をした後「で?由菜さんはどうするの?」と聞かれる。


颯真君の事、好きだけど…。春俊との思い出が駆け巡る。両思いだと知った瞬間。


初めて手を繋いで帰った日。雨の中、二人で傘をさして家に帰った日。


初めてデートに行った日の事。散々迷子になったけ。カラオケに行った日の事。


私は決意した。「もう一度春俊と頑張るから」


春俊は嬉しそうに笑った。颯真君は「そっか。頑張って」と言い帰ろうとする。


私はとっさに「いかないで」と言っていた。彼の前だと私、いつもわがままだ。


颯真君は振り向いた。でも、もうこちらには来ない。帰る気なのだ。


私は彼に伝えたかった事を言う。「本当にありがとう。それと…また会いたい!」


颯真君はクスっと笑って「由菜ちゃんは俺の事好きやった?」と聞かれる。


由菜ちゃんって呼んだ。ずっとさん付けだったのに…。なんか嬉しいよ。


一瞬黙り決意して言う。「当たり前でしょ!好きだからまた会いたいの」


颯真君は一瞬真顔になりまた微笑み「ならきっとまたいつか会える」と言った。


そして彼は駅に向かって帰って行った。春俊がこっちを見ている。


だから振り向き「勘違いしてごめんね」と言う。彼は「別にいいけど」と呟く。


「それよりも、颯真って男まじでムカつくなー。絶対もう会うなよ」と言われる。


私は曖昧に笑う。そして夏の空を眺めながらいつか颯真君に会える日を待つの。


そして、時は過ぎて行った。春俊と私は結婚した。私はもう二十五歳だ。


今も東京に住んでいる。私はもう颯真君の事は思い出としてしまっている。


会えないと思っている。春俊はあれからというものずっと私を大事にしている。


嬉しいようで少し重い。だけど…やっぱり春俊が好きだな。


そして、結婚生活にも慣れて来た夏の事だった。春俊が女の人と歩いていた。


浮気⁉それともまた親戚とかだったりして。でも…そんな話、聞いていない。


それにあんな人見たことがない。じゃあやっぱり浮気?帰ったら怒ってやる。


春俊が帰って来たのはいつもより遅かった。きっとあの女の人とどこかに。


私は「どういう事なの!あんた浮気してたの?酷いでしょ!」と叫ぶ。


すると春俊は「は?なんの事だよ」と言われる。誤魔化そうとしたって…。


「もういい!私の事もう好きじゃないんでしょ?」と言って家を飛び出した。


辛い。どうして春俊が…あんなに大事にしてくれたのに。騙されていたなんて。


そして電車に乗って神戸に向かっていた。大池駅に着く。下りると歩く。


あの日のローソンに向かって。そしてローソンに入った瞬間、運命の人が居た。


あれは、颯真君だろう。雰囲気で分かる。私はしばらく彼を見つめていた。


彼は私に気づいて振り向き「また会ったね。由菜ちゃん」と言った。


驚きで固まっている私に彼が近づいて来る。そっと肩に触れられた。


彼は二十六歳なのだろうな。と思っていると「待ちくたびれたよ」と彼が言う。


えっ?それってどういう意味なの。彼は静かに私を見つめている。


そして「今日はどうしたんや?」と聞かれて気づいた。彼は分かっているのだ。


だから話した。春俊と結婚した事や浮気されているみたいな事を。


話し終わると彼が「俺にすれば?」と言った。こう言ったって事は…。


きっと春俊は本当に浮気していたのだろう。違うかったら彼はあの日みたいに。


なら、いいよね。先に浮気してきたのは春俊なのだから。


私は颯真君にあの日のように「颯真君に着いて行きたい」と言う。


彼はクスっと笑って「今から俺、家に帰るんやけどいいん?」と聞かれる。


春俊、ごめんね。と心の中で呟く。そして「いいよ」と言う。


そして彼に着いて行く。彼は大きな一軒家の前で止まった。そして入る。


随分と素敵な家に住んでいた。もしかして…奥さんがいるかもしれない?


その不安に気づいたのか彼が「一人暮らしだし彼女も出来た事ないよ」と言う。


モテそうなのになんでだろうと思っていると「由菜ちゃんが好きだから」と言う。


もう!本当にキザな奴なのだから。そして家に入るとおしゃれだった。


彼は「由菜ちゃんの部屋は用意しているから好きに使って」と言われる。


用意周到すぎるでしょ!じゃあ本当に待ちくたびれていたのかしら?


いやいやあり得ないでしょ。たかが私の為にそこまで尽くしてくれる訳ない。


彼が聞いて来る。「由菜ちゃん俺にしてくれたんだよね?」


頷くとギュッと抱きしめられた。えっ?と思っていると笑われた。


ムッとする私に「嬉しかったからついな」と彼は無邪気に言う。


これは本当に後戻りでき無さそうだった。春俊さようなら…。


その時だった。インターフォンが鳴った。颯真君が出ると春俊が居た。


颯真君は仕方なく彼も家にいれる。お人好しなのかな…?


春俊は私を見つけると泣きながら怒っていた。


颯真君は「春俊、由菜ちゃんはもう俺が貰ったから諦めなよ」と言う。


春俊が「由菜、なんでお前はいつも変な勘違いばっかするんだよ」と言う。


私はただただこんがらがるばかりだった。そこに颯真君が言う。


「今日、決めてくれなきゃ俺、困るんやけど」


なんで?と思っていると「俺さ、実は外国に行かなきゃいけないんや」と言う。


固まる私に「まぁ由菜ちゃんにもう一度会えただけで本当に良かった」と言った。


じゃあもう会えないの?私は颯真君の事がこんなにも好きなのに?


私の疑問に気づいたのか「由菜ちゃんが着いてくれば一緒に居れるよ」と言った。


目の前に広がる颯真君との日々かずっと私を大事にしてくれた春俊か?


まさに究極の選択だった。颯真君が「俺実は、月に帰るんやけど」と言う。


それって…本当にもう会えないじゃん。っていうか私着いて行ったら死ぬ?


すると彼が「死なないよ。行く前に不老不死の薬あげるから」と言われる。


颯真君との永遠の人生か春俊のとの何十年で終わる人生。


そりゃ永遠がいいよ。でも、終わりがあるから人生っていいのかもしれない。


永遠に生きれるからって幸せか分からない。きっとつまらないよ。


ならば決めた。「春俊。浮気してないんだよね?」と聞く。


彼は「当たり前だろ!」と少し怒っている。私、また勘違いしていたのか…。


そして、颯真君は春俊がここに来ると知っていたのだろうな。


きっと彼はなんでも知っているのね。だから…不思議な人だと思ったのね。


あの日私は淡い恋をした。もう消えてしまうけどこの思い出はきっと色あせない。


二人で夜の街を歩いた事。ローソンで話した事。私の為に来てくれた事。


抱きしめてくれた事。私は泣きそうになりながら微笑み「颯真君ごめん」と言う。


私はだって「春俊を選ぶから」春俊はホッとしている。颯真君は寂しそうだった。


そして、彼は「由菜ちゃん。幸せになってや。会えなくても俺は居るよ」と言う。


優しい声に目頭が熱くなる。視界がにじんでいく。気づくと涙が零れていた。


颯真君が「この家は今日から君達のものだよ」と言って私の肩に手を置く。


そして家を出て行く。颯真君の後ろ姿がどんどん光に包まれていくように見えた。


私の淡い恋は終わった。でもなぜか幸せだった。彼は私に幸せをのこしていった。

颯真は何でも知っていたのか?

月に帰るとかすごいこと言ったよな。

めっちゃミステリアスな男子だったな。

由菜はこれで幸せだったのかな。

春俊は幸せだったろうな。

みんなの感想も待ってる!


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― 新着の感想 ―
とても心に残る話でした。 そりゃ永遠がいいよ。でも、終わりがあるから人生っていいのかもしれない。 という言葉がとっても心に響きました。 颯真君ともう会えないのは悲しいけどこれでよかったんだろうなとも…
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