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桜と雪が舞う夜に  作者: かるら
第一幕 朽ちない桜と百鬼夜行
8/12

幕間 和の消失

大事なところが本編で言及できなかったので、補足的に。

 皆は、日本という国から、真っ先に何を想像するだろうか。

 ある人は、『侍』という。江戸時代頃に存在した、刀を持ち、髪を特徴的な丁髷で整えた武人のことだ。

 ある人は、『寿司』という。魚介の生の切り身を、白米とお酢で味を整えたものに乗せて、大豆から作った液などで食す、日本特有の料理のことだ。

 ある人は、『漫画やアニメ』という。日本のアニメ・漫画文化の発展は目を見張るものがあり、海外で大人気な作品も多々存在している。

 他にも、蕎麦、相撲、スカイツリー、富士山、鰻、日の丸…挙げればキリがないだろう。

 少なくとも、『日本』という国を全く知らないという人の方が、世界的に見ても少ないはずだ。国土面積としては他国に劣るものの、その独特な文化と発展力により、先進国へ比較的早く名を連ねた実力は伊達ではない。

 そのはずだった。



 2028年4月17日。中国の都市部で、とある少女が街中を歩いている。桜色のその髪は手入れされていないみたいでボサボサ、服も洗ってある様子が見られず泥まみれ、本当にみすぼらしい格好で見るに絶えない。

 途中、少女は誰かに石を投げられた。結構な痛みらしく、頭を手で押さえている。少女はそのまま、避難するように路地に入った。

 しばらく走ったのち、息を切らせて少女は立ち止まる。壁にへたり込むように座り、しばらく空を見上げていた。その後、急に何かを思い出したようにポケットを弄り出した。取り出したのは、メルカトル図法で表された、航海でよく用いられる世界地図だった。

 世界地図はところどころに折り目は残っているものの、見た目の印象としては綺麗な方だった。ただ、一つだけ違和感がある。


 日本列島が存在していない。


 中国の東に、主要な四つの島と、数々の小さな島で構成された国が見当たらない。

 少女はため息をついた。


 「みんな、日本のことを知らない…。いや、元々なかったみたいになってる…?どうして…?」


 少女は街中の人々に、「日本はどっちの方向!?」と尋ねて回ったのを思い出す。相手から帰ってくる返事は、決まって「そんな国聞いたこともない」とのことだった。

 少女は途方に暮れた。行く当てがないのだ。未成年であることを偽って働こうにも、流石に身長が足りない。

 少女は結局、座り込んでじっとすることで、エネルギーの消費を抑えることにした。

 この後すぐ、少女は40代ほどの男性に無理やり弟子にされ、生活を共にするようになるのはまた別のお話。



 ケトルが沸く音がした。私は、コーヒー豆を砕き、フィルターに入れて、熱々のコーヒーを注いだ。

 私はコーヒーを淹れたマグカップを片手に持ち、壁にかけたクシャクシャの、今となっては小さく感じる世界地図を見る。

 やはり、日本列島はなく、太平洋がちょっとだけ広く感じた。


 「…元に戻さないとね。」


 私はコーヒーを一気に飲んで気合いを入れようとする。当然、熱々のコーヒーは私の口の中を蹂躙した。

最後まで読んでくださりありがとうございます!次回は土日のうちには出したいなぁ…(遠い目)

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