2、レミリアちゃんは思う
あたしは、今日も思った。
ご主人様って奥様に弱いわねと。ちなみに、あたしのご主人様は名前をグリーン・キアンという。奥様はかの白の大魔女だった方で名前は、ブランカ・サディ様だ。
ご主人様はブランカ様にタジタジというか。まあ、仕方ないかと思っていた。
「んふふ、レミリアちゃん。今日も可愛いわねぇ」
「……はあ」
「あたしからしたら、羨ましいわ」
ブランカ様はにっこりと笑うが、あたしは苦笑いする。あたしからすると、スラリとした彼女の方が羨ましい。色気もあるしね。
「レミリアちゃん、クレアは元気にしているかしらね」
「元気にしているでしょう、クレアさんはあたしよりも強いですし」
「だといいんだけど」
ふうとブランカ様はため息をつく。その表情は、本当に心配そうだ。あたしも窓をそっと見やった。クレアさんは今頃、どうしているだろう。ふと、思った。
グリーン様は執務室にて侯爵としての役務に精を出している。今は、魔術師団長を辞してキアン侯爵として一家を支えていた。ブランカ様との間には、長女のブレンダ様が生まれている。ブレンダ様は凄く元気な女の子だ。
「……レミたん、今日も遊ぼ!」
「はい、ブレンダ様」
ブレンダ様はまだ、4歳だが。あたしの事を「レミたん」と呼んで慕ってくれている。なかなかに将来有望なお嬢さんだ。あたしはブレンダ様と一緒にお庭に出る。
ブレンダ様はキャッキャッとはしゃぎながら、走り回った。あたしは傍らで見守りながら、付いて行く。
「レミたん、あっちにタヌキがいたの!」
「タヌキですか、珍しいですね」
「そうなの?」
ブレンダ様は首を傾げる。あたしは頷く。
「はい、珍しいですよ。普通は人間を嫌がって出て来ない事がほとんどです」
「そうなんだ、私。知らなかったなあ」
「じゃあ、タヌキを探しに行きますか?」
「うーん、探しには行かないでおくわ」
「わかりました、お屋敷に戻りましょう」
あたしが言うと、ブレンダ様は頷く。一緒にお屋敷に戻った。
その後、ブレンダ様はお昼寝の時間になったので自室に行く。あたしは休憩時間と称してご主人様の部屋に行った。服を脱いだら、モルモットの姿に戻る。
(あー、疲れたわ。ちょっと、眠ろっと)
あたし用の小さなベッドに行き、丸くなった。瞼を閉じるのだった。
夕方になり、目が覚める。奥様であるブランカ様が起こしに来てくれた。
「レミちゃん、夕方よ」
『……奥様』
「さ、夕食を食べましょ。人の姿に戻って!」
あたしは渋々、呪文を唱える。人の姿になるとブランカ様は躊躇う事なく、服を手渡す。
「一応、着替えを持ってきわたわ」
「ありがとうございます」
「じゃあ、あたしは廊下に出ているわね」
ブランカ様はあたしが受け取ると廊下に出て行った。急いで、手渡された衣服を着たのだった。