#10見知らぬ朝と貴方
予約投稿が上手くいけば7時に投稿されているはず。
投稿サボっててごめんね!!
こっからペース挽回してくから!!!!
朝、スマホのアラーム音で目が覚める。
寝ぼけながら洗面台まで向かって、寝癖を直して、歯を磨く。
リビングに戻ってきて、カーテンを開いて、陽光に目を細める。
テレビを付ければ、今日もとりとめのないニュースがやっている。
グラスに入った水を片手にソファーに座る。
それが普段の僕のルーティーンであった。
どうせニュースでは今日もやっている。
やれ『怪物』が現れた、『超能力者』がまた発見された、今日も世界は平和だ──だの。
心底興味もない、世界の現状。
あの後、ココンさんから詳細に聞いた話では世間を騒がせる『怪物』も、奇跡の申し子と呼ばれる『超能力者』も全てが『病』による影響で生じたモノらしい。
ココンさん曰く『どう隠しても人の目に触れる』から、仕方なくその2つは公表しているらしい。
『病』の影響であることが秘匿されているのは、『知っていてもどうしようもない』かららしい。
『全ての人間が生まれながらに自分の身体を変容させるウイルスに感染していると知ったらどうなると思います?』
『……どうなるの?』
『分からないから黙ってるんです。まぁ最悪『パンデミック』とかで今以上に手が負えなくなってワンチャン人類終わりますね』
『そんなにヤバいの? 『病』って』
『対処を間違えれば軽く人類なんて滅亡しますよ。過去の先人たちも乗り越えてきた道です。まぁ大抵の場合、不顕性感染ですから刺激さえ与えなければ『病』なんて大人しいもんです──』
『……ねぇ』
『……? どうしました?』
『病が暴走したのってさ、僕が必死に王冠をぶっ壊そうとしてたことと関係あるかな?」
拳で思いっきり王冠をぶん殴ったり、金属バットでカチ割ろうと画策したり、手近な石でどうにかしようとしたときの記憶が頭をよぎった僕は、そんなことを聞いた。
『……あの時は焦っていたというか短絡的なのは認める事実なんですけどでも流石にあの状況で病が暴走するとは思ってなくてというかあれだけが原因とは言い辛いというかいやでもまぁ確かに浅葱くんがいうことも一理あるというかいや──本当にすみませんでした』
僕が死んでなくてよかったな。
全力で謝罪をするココンさんを尻目に、僕はそう嘆息する。
情報の共有を積極的に行わないと割と命に関わる。
そう感じた僕は、とりあえずココンさんが知りうる限りの情報を共有したところで強烈な眠気が僕を襲い──、
──今、ようやく目が覚めた。
夢を見ていたらしい。
視界が開けて、いつもより天井が高く感じたのは気のせいじゃない。
そもそも僕の部屋はこんなシミ一つない白い天井をしていないし、明らかにおしゃれなシーリングファンが回っているはずもない。
「知らない天井だ」
呟いた僕は、自身の体に毛布がかかっていることに気づく。
どうやら自分は寝てしまったらしい。制服のままだ。やけに暑苦しいと思った。
毛布を払いのけて体を持ち上げる。
ソファーに寝ていたようだ。毛布をソファーの隅に追いやって、自分の現状を思索する。
(なんで僕はソファーに寝てたんだ……?)
寝覚めの頭では何も考えられず、思考を諦めてとりあえず立ち上がろうとする──、その時だった。
「──あ、起きましたね」
後ろを振り向けば、そこにはかにもシャワーを浴びてきましたと言わんばかりの、やけに瑞々しいココンさんがいる。動きやすいであろうTシャツとショートパンツに身を包み、タオルで髪を拭いていた。
「ん、ココンさん。僕寝てた?」
その質問に対して、彼女は小悪魔のような笑みを浮かべて、くすっと口元を隠しながら笑う。
「それはもうぐっすりと。可愛い寝顔でしたよ」
「いびきとかかかなかった?」
「いえ全然。静かな寝息でした。静かすぎて死んだかと思いましたよ?」
「えぇ、ちょっと申し訳ないな。いつのまにか寝っちゃってたのか」
「まぁ仕方ないと思いますよ? 浅葱くんが飲んだ薬は副作用で眠くなっちゃう効果があるので」
「それを先に言いなって。知ってたら僕はとっとと帰ってたよ」
「……? なんでです?」
「なんでって……」
ココンさんは僕の言葉の意味するところを良く分からないらしく、こてんと首を傾げる。
彼女には自分の容姿に自覚がないらしい。むしろ呆れを多く含んだ目で彼女を見る。
絹のように肩まで流れる銀の髪、紺色の瞳は星のような輝きを伴って、それに加えてどこかの国の姫かと疑いたくなるような造形だ。小柄な身長も相まって、本当に綺麗な人形のように見えると思う。
彼女は視線が気になったか目を合わせてくる。目が合ったその瞬間、僕は瞬きをして嘆息をした。
「分からない?」
「分からないことは大抵は力でどうにかしてきました」
「『格闘技』だったね、特技」
「えぇ、強いですよ私は。テコンドーで黒帯持ってますから!」
「良く分からないけど相当強いんだろうね……」
小耳にはさんだことがあるが、多彩な足技が特徴の『足のボクシング』とも形容される格闘技であった気がする。
「……というわりに、蹴られた覚えはないけど」
「んー。多分、『病』も私の体の使い方が分からないんでしょうね。運が良かったと言わざるを得ません。次『暴走』したらどうなるか分かりませんけど」
「怖いこと言わないでくれよ。刺激しなければ意外と大丈夫なんでしょ?」
「いや、私の場合多分『病』に対する免疫が低下してて……。放置すると体の主導権を奪われてヤバいことになりかねません……」
「本当にヤバそうなワードが聞こえてきたけど!? 一刻を争う状況だったりする!?」
本気でヤバそうな気がしたので思わず声を荒げて聞くと、彼女は考え込むように顎に手を当てて何事か呟く。
「二日。……いや、三日は持たせて見せます。多分、いけます」
甘く見積もって三日。それがこの状況を好転させるまでのタイムリミットらしい。
真剣な表情から見ても嘘ではないだろう。ヘッドホンでわざわざ聞く理由もなかった。
「大丈夫なんだよね?」
確認、もしくは念押し。
次『暴走』されたら僕の身がどうなるか分かったもんじゃない。
昏睡スプレーとスタンガンを渡されたとはいえあの状態のココンさんに当てられるかは分かったもんじゃないし、またどうしようもなく徹底的に蹂躙されるのかもしれない。それも、前回よりも、手酷く。
あの暴力の記憶は、とてもじゃないが昨日今日では忘れられない。
恐怖が頭に過った瞬間がある。だけど、助けてあげたいと思う。
「はい。……二度と浅葱くんを傷つけたくありませんから」
彼女の決意の言葉はとても嘘には聞こえなかったし、僕はとても個人的かつ感情的な理由で、彼女を助けてあげたいのだ。
助けるなんて傲慢か。犯行計画は何も聞かされていないが、僕たちは『共犯者』だ。
「分かったよ」
決意の言葉に頷きをもって返せば、彼女は満足げに笑みを浮かべた。
「あ、今から朝食の準備しますがシャワー浴びます? パーカーなら貸せますよ? 制服のままはダルいでしょう?」
「シャワーは別にいいかな。制服に関しては同感だけど。というか僕もご同伴に預かっていいの?」
「……すごい当たり前のことを聞きますね?」
彼女は呆れたようで、小ばかにするような笑みを浮かべて冷蔵庫へと歩き出す。
中身の充実した冷蔵庫を見て、どうするべきか考えているようだ。
「適当に目玉焼きトーストでも作りましょうか? あ、アレルギーあります?」
「なんでも美味しく食べれる」
「分かりました。……あ、あとパーカーか」
彼女は了承した後、いくつかの食材を取り出した後にリビングのクローゼットを漁って水色のパーカーをこちらに手渡した。
「はい、ご所望のパーカーです」
「どーも」
「男物のズボンもあった気がしますけどちょっと待ってください。ちゃっちゃとご飯作っちゃいますんで」
「……ありがとね、ココンさん」
その言葉に、彼女はどこか調子を崩したように耳を掻いた。
「これから迷惑をかけるのはむしろ私なんですけど。……まぁ? そうですね。どういたしまして。テレビでも見ながら待っててください。……美味しいの作りますから」
ココンさんはそこまで言って照れたのか、頬を掻いて視線を逸らした。
「期待してるよ」
「……任せてください」
彼女はそう言って足早にキッチンに向かっていて、僕も制服とワイシャツを脱いでパーカーを着る。ズボンの下にジャージも着ているから、脱いで丁寧に畳んでそれを置いて。
カーテンから差し込む陽光に思わず目を細めた。
予報を聞くまでもなく、今日は快晴。
僕の見知らぬ朝は、こうして始まる。
ちなみにココンさんお手製の目玉焼きトーストはめっちゃ美味かった。
今日はあと一話……いけるかな?




