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破壊者たちの正義の裁き  作者: misato
第一章
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数日が過ぎ、コクラと男たちは取引相手と顔を合わせていた。

「よおジャック、いつもとは違う場所を指定するなんて、なんかあったのか?」

相手の男は親しげに話しかける。

「ちょっとな。そういうおめえも人数引き連れて来やがって。信用ねえなぁ」

男は不気味に笑っている。胡散臭い笑みはいつものことだった。

「こんなだだっ広い場所での取引だ、用心もするだろ」

ジャックは鼻で笑う。

「そりゃそうか。まあいい、とっとと始めようぜ」

ジャックは銃の売人だった。

ジャックは銃の入ったケースを、相手は金の入ったケースを渡す。それだけだ。

互いにケースを交換した直後、取引相手はジャックに銃を向けた。

「………ドユン、なんのマネだ?」

ドユンと呼ばれた男は嘲笑う。

「悪いな、お前たちよりも良い仕入れ先が見つかったんだ。我々の関係はここまでだ」

ジャックの手下は受け取ったケースが空なのを確認した。

ジャックはおかしくてたまらないとでも言うように声をあげて笑う。

「こりゃ傑作だ!俺たちはどうも気が合うらしい」

余裕を見せるジャックにドユンは眉をしかめる。

「コクラ、やれ」

ジャックがそう命令した瞬間、ドユンに渡されたケースから大量の人形たちが飛び出した。

コクラの作った人形たちはむくむくと巨大化しドユンたちを押さえつける。銃を撃ってもナイフで切っても人形たちはびくともしない。

ジャックは声高々に笑う。

「悪いなドユン、こっちはお偉方と交渉が決裂しちまってよ。ちょいと縄張りを移すとこなんだ。で、お前んとこのコネを頂くことにした」

ジャックはコクラに命じる。

「殺せ」

コクラは震えていた。人を傷つけることが怖い。動こうとしないコクラにジャックは用意していた台詞をはく。

「こいつらを殺ればお前もあいつも自由の身だ」

恐怖にかられながらもコクラは決意する。

ウルススを強く抱き締め手をかざす。人形は男たちの首に手をかけ力を入れた。


しかし次の瞬間、人形たちはもとの小さな姿へと戻った。

「え………?」

意図しないことだった。体から力が抜けコクラは膝をつく。かつてない疲労を感じた。息もあがっている。

大量の人形を動かすことは、コクラにはまだ無理だった。

ドユンは一瞬の隙を見逃さず落ちた銃を拾いコクラに向けて発砲した。


その場にいた者は目を疑った。そこにいたはずの少女が消えたからだ。周囲を見渡しても姿はない。

先に動いたのはドユンだった。

「お前ら、全員殺せ!」

そのかけ声をきっかけに乱戦が始まった。


男たちから少し離れた物陰にコクラはいた。コクラを抱き抱えていたナナはゆっくりと少女を離す。

「お姉ちゃんたち、どうして………?」

コクラは何が起きたのか理解していなかった。ナナは静かに答える。

「ごめんね、ずっと様子を見てたの。ハチは、たぶん、コクラのことを助けたいんだと思う」

そう言ってナナはハチを見る。ハチはコクラに視線を合わせて言った。

「あいつらは勝手にやりあわせておけばいい。残ったやつはあとで捕まえてやる」

コクラは激しく音がする方へ視線を向けた。そこには見知った人が次々と倒れていく光景があった。彼女はふいに慌て出す。

「ダメ!ママがどこにいるか聞かないと!」

駆け出そうとするコクラの腕をナナは掴んだ。ハチはコクラを落ち着かせ問う。

「どういうことか説明できるか?」

コクラは必死に言葉を紡ぐ。

「ママはどこかに捕まってるの。コクラと逃げたからジャックが怒ったの。みんな死んじゃったらママがどこにいるかわからなくなっちゃう!」

ハチとナナは目を合わせた。

「わかった、兄ちゃんに任せとけ」

ハチは立ち上がり戦場へと走った。


二人はハチの戦う様子を見守っていた。ハチは乱戦の中でも確実に敵の攻撃をよけ、相手を気絶させていく。

まるでヒーローだとコクラは思った。彼らは弱い者を助けてくれる、ヒーローなんだと。


意識のある者はジャックのみとなった。それを見てナナとコクラもジャックに近づく。ジャックはすでに負傷していた。

一人で乱闘を制した少年にジャックは不気味さを感じ恐怖する。ハチはジャックに冷たい目を向けた。

「あの子の母親はどこだ?」

見知らぬ少女と共にいるコクラに目を向けたジャックは鼻で笑う。

「おいガキ!言ったよなぁ、誰かに話したらあいつを殺すと!なんだよ、結局自分だけ助かりたかったってことか?薄情な娘を持ってあいつは不幸だな!」

ジャックの言葉にコクラはびくついた。ハチはジャックの指を切り落とす。男のいびつな悲鳴が響いた。

「母親の居場所だけ話せ。切り落とす部位は山ほどあるぞ」

ハチは男の腕に刀を食い込ませた。血が流れ出す。

男は狂ったかのように笑いだした。

「こうなれば俺たちもおしまいだ、知りたいなら教えてやる」

続く男の言葉に冷たい空気が流れる。


「あいつはもう死んでるよ」


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