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破壊者たちの正義の裁き  作者: misato
第一章
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少年の名はワットといった。ワットは胸を張りながら街を歩く。

「求婚する時に渡す物として一般的なのは指輪や花だろ?そんなありきたりな物じゃダメだと思うんだ」

ハチは呆れながらワットに反論する。

「一般化されてるのはそれがベストだからだと思うけどな」

ワットはハチを無視してナナを見上げた。

「姉ちゃんは何を貰うと嬉しいんだ?参考にしてやるぞ」

ナナはうーん、と考えた後にぱっと表情を明るくさせる。

「甘いお菓子が良いな。いっぱい」

その答えにワットは憐れみの目でナナを見る。

「姉ちゃん腹へってるのか?あんまり食べさせて貰ってないのか、可哀想に………」

ハチはナナが持つ紙袋を指差す。

「見てみろ、ちゃんと食ってるよ!人聞きの悪いこと言わないでくれ」

ナナは気にせず「でも」と言って続ける。

「指輪は大事だよ、絶対必要」

その言葉にワットはむくれながら呟く。

「わかってるよ、けど指輪はダメだ」

「なんで?」

ナナの質問にワットはばつが悪そうに答えた。

「指輪はいつか、俺が自分で作るんだ。今はまだ作れないけど………」

ハチとナナの胸がきゅんとなる。ワットは誇らしげに言った。

「じいちゃんは自分で作った指輪をばあちゃんにあげたんだ。ばあちゃんはずっとつけてた。俺も自分で作った物をあげたい」

ワットの心意気を思うとハチの心境は複雑だった。二人はなぜか求婚すれば上手くいくような雰囲気をかもし出しているが、いくら子供だからといえど12才ともなれば結婚の意味を理解しているはず。相手の子がどんな子かはわからないが、普通に考えれば子供二人で街を出る、なんて受け入れるはずがない。里親が決まっているなら尚更だ。

ハチはワットの肩を優しく叩く。

「人生に挫折はつきものだ、頑張れよ」

ワットはハチの手を振り払った。


三人はいろんな店を見て回る。

「大きい物や重い物はダメだ、持って行けない」

「指輪以外のアクセサリーでいいんじゃないか?」

「お揃いがいいよ、お揃い」

市街地はお洒落な人も多く、裕福だと思われるような家々が立ち並んでいた。

「ワットの家もこの辺りなのか?」

ハチは疑問をぶつける。するとワットは信じられないとでもいうように渋い顔をした。

「そんなわけないだろ、ここは商業地区だ。俺の家は採掘場に近い工業地区にある」

ナナは髪飾りを売っているお店を見て提案する。

「髪飾りは?いつもつけてられるよ」

店に入り様々な髪飾りを見る。シンプルな物から派手なものまで多種多様な物が置いてあった。

「あいつよく髪しばってるし良いかもしれない」

「その子はどんなのが好みなんだ?」

ハチの質問にワットは考え込む。

「なんか………メルヘンっぽい感じかな」

「メルヘン」

二人は思わず口に出す。

「あいつ本が好きなんだ。童話?っていうのか、王子と姫が恋するようなつまんねーやつ。昔さんざんままごとさせられてさ、くそつまんねーの」

するとナナは反論する。

「王子様とお姫様は女の子の夢、つまんなくない、素敵」

そしてナナは大きなりぼんを手にした。

「こういうの可愛いよ」

白を基調とした華やかなりぼんだった。

「これ普段使いできるのか?」

「髪いじるの好きな子なら似合うよ」

ワットは表情を明るくさせる。

「あいつに似合いそうだ」

少々値段が張ったがワットは髪飾りを購入した。


「あとは明日の朝に花を買えば完璧だ」

「ちゃんと花も買うんだ」

「まあな。俺は明日のために荷造りしなきゃいけねえ。ここでお前らとはお別れだな」

満足気にするワットを見てナナはガッツポーズをとる。

「頑張って、応援してる」

「おう、姉ちゃんもありがとな!お前も、まあ感謝してやる」

そう言って手を振りワットは走り去っていった。



翌日。ハチとナナはバザーへとやってきた。しばらく広場に滞在しているとワットの姿を見つけた。ワットも二人の姿を確認すると嫌な顔をする。

「お前らなにしてんの?」

「応援に来たんだよ」

「私たちは恋の行く末を見守る義務がある」

「ないだろそんなの」

ワットは呆れたようにため息をつき、

「わかった、見ててもいいけど邪魔はするなよ」

そう言い真っ直ぐにある女の子のもとへと向かった。


少女はワットを見つけると笑顔で手を振った。

「ワット、来てくれたのね。よかった、最後だから会いたいと思ってたのよ」

ワットは緊張した面持ちで少女に告げる。

「あのさ、話があるんだ。ちょっといいか」

すると少女はきょとんとした後首を横に振った。

「ダメよ、お店があるもの。話があるならここで言いなさいよ」

「ここじゃダメなんだよ!ちょっとでいいから」

困惑する少女に隣にいた大人の女性が微笑ましそうに言葉を発した。

「いいわよ、話してきなさい。明日にはこの街を去るんだもの、二人で話したいことだってあるわ」

そう言われワットは少女を連れ出すことに成功した。


「全く、シスターが優しいから許してくれただけよ。お店番は私の担当なんだから。で、話ってなによ」

バザー会場から離れた二人は互いに向かい合っていた。ワットは持っていた花と髪飾りのはいった箱を差し出す。

「フラン、俺と結婚しよう!」

求婚されたフランは驚き、そして眉をひそめた。

「お断りするわ」

「………は?」

ワットは一瞬の間を置いたあと怒りをあらわした。

「なんでだよ!理由を言え!!」

フランはワットを憐れみの目で見つめながら話す。

「ワット、人生ってのはね、甘くないのよ。私たち二人が結婚してどう生きていくの?私もあなたも仕事がない、飢え死にするだけよ」

フランはとてもしっかりした少女だった。

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