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破壊者たちの正義の裁き  作者: misato
第一章
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黙りこむミセリアに別の男が口を出す。

「お前、ずっと変わらないよな。薬屋だしそういう人もいるんだろうと思ってたが、よく考えればおかしいことだ。十年前に20代だとしたら今は30代のはず。なんで歳をとらない?」

正確にはわからないが悪魔はだいたい五百年ほどは生きるといわれている。ゆえに人間から見ると悪魔は老いないのだ。

「見た目が変わらないだけで悪魔だと決めつけるな」

ヤナギの主張にまた別の男が口を開く。

「その女はめったに姿を見せない。人を喰いにいってるからじゃないのか」

「何言ってるんだよ!ミセリアさんはここでずっと薬を作ってるんだ!みんなだって使ってるだろ!?」

すると村人の顔色が一気に悪くなった。

「最悪だ、悪魔が作ったものを飲んでたなんて」

「変なもの入れてないだろうな!?」

村人たちの態度に子供たちは全員恐怖を覚えた。

あんなに良い薬だと言っていたのに、あんなに良い関係を築いていたと思っていたのに。

「ミセリア、お前が犯人なんだろ?それともヤナギ、お前たちも共犯か?」

もう何を言っても無駄だとヤナギは思った。なぜかは知らないが彼らはミセリアを悪魔だと思っている。

「昔死んだ子供も、お前が喰ったんじゃないのか」

男のその言葉にヤナギは激怒した。

「ふざけるな!ミアは病気だった!病院にも連れていった!でも治らなかった!ミセリアさんも俺たちもどれだけ悲しんだと思ってる!!」

飛びかかりそうなヤナギを子供たちが押さえる。

ヤナギに圧倒されそうになる男たちだったが、彼らはしっかりとミセリアを睨み付けた。

「悪魔かどうか確かめれば済む話だ、そうだよな」

男たちは武器を構える。数名は刀を持っていた。

「悪魔は怪我を負えば人を喰うらしい。重症を負えば正体があらわれるだろ」

ヤナギとファティは短刀を取り出す。

「そんなこと許されるわけがない」

「ヤナギ、お前も容疑者の一人だ」

一触即発の状況を近くで見ていたハチに限界が訪れた。ハチは静かに刀を抜き村の男たちに向ける。

「それ以上はやめろ、俺は真実を知ってる。彼らは犯人じゃない」

ハチの言葉に男たちは動揺する。ハチはその場にいる一人の男へ視線を向けた。

「犯人はあんただよな、ヒース」

みなの視線が一斉にヒースへと向かう。刀を構えていたヒースは一瞬の間をおいて苦笑した。

「僕が犯人だって?何をてきとうなことを言うんだ」

男たちははっとしてハチに敵意を向ける。

「嘘をつくな、ヒースがあんな残酷なことをするわけがない」

「でも事実だ」

「疑わしいやつの言うことなんか信じられるか」

「だろうね」

そしてハチは怒りを村人へと向けた。

「あんたらが何を信じようが勝手だ。だけど罪のない彼らにこれ以上危害を加える気なら、お前たちを『悪』とみなす」

ハチの異様な雰囲気にその場の全員に悪寒が走る。


年老いた男性はハチに問う。

「旅人さん、あんたらが来た日に殺人が起きた。偶然とするには無理がある。あんたも容疑者の一人だよ。でも一応聞こう、なぜヒースが犯人だと?」

「俺は能力者だ。ヒースが男を殺す場面を視た」

ヒースの表情がわずかにゆがむ。村人はヒースへ視線を向けた。ヒースは笑って否定する。

「やめてくれ、一番力のある僕を犯人にしたいのか?君が能力者だと証明できるのかい?言うだけならなんとでも言えるだろう」

ハチは表情を変えない。

「証明は出来ない」

ヒースは笑う。

「僕が犯人だという証拠は?」

「ないな」

ヒースは男たちへ言葉を紡ぐ。

「聞いたかい?彼はなんの根拠もなくただミセリアさんたちを庇うために嘘をついてる。なぜ彼女を庇うかは知らないが、どちらを信じるかはみんなの自由だよ。でも僕は犯人じゃない、それだけは言っておく」

するとヒースと共に雑貨屋で会った男性が口を開いた。

「そうだ、昨日の夜俺とヒースは一緒に遅くまで飲んでた。あんな酒が入った状態で人が殺せるとは思えん」

村人たちはまたしてもハチたちを睨む。

「あんたも悪魔か?だからミセリアを庇うのか?」

「捕まえればいい、これだけの人数がいれば悪魔だろうと関係ない」

ヒースは可笑しそうに笑っていた。


するとずっと口を閉ざしていたミセリアがついに言葉を発した。

「私たちはクニさんを殺してはいません。けれどこの村を出ていきます。それで許していただけないでしょうか」

その言葉にヤナギは反論した。

「なんでだよ!俺たちは何も悪いことなんてしてないのに!警備隊が来れば犯人だってわかるはずだ、そうだろ?」

ミセリアはハチに聞いた。

「ハチさん、犯人は捕まると思いますか?」

「………証拠がない。たぶん、無理だ」

ミセリアは悲しそうに微笑んだ。

「だとすれば、彼らはずっと私たちを犯人だと思うことでしょう。今ここで戦闘が起こればみなさんが怪我を負うことになります。そうですよね」

向けられた言葉にハチは頷く。

「私は争いを好みません。この事件が解決出来ないのであれば私たちはここを出るべきです。悪魔かもしれない者が村に居ては、落ち着いて暮らせませんからね」

それに、そもそもミセリアは紛れもなく悪魔だ。悪魔に居場所がないことを、ミセリアは痛感した。


「わざわざ犯人を見逃せっていうのか」

その言葉に答えたのはヤナギだった。

「俺たちと戦ってもあんたらに勝ち目はないぞ。俺とファティが戦えることを知ってるはずだ。力で勝てるのはヒースさんくらいだろ」

ヤナギの言葉にヒースは少し考え込んだのち提案をした。

「みんな、確かにその通りかもしれない。もし本当にミセリアさんが悪魔で、そこの少年も悪魔だとしたら彼らを捕らえるのは厳しいだろう。ヤナギとファティまで敵対してる。僕たち全員殺されるかもしれない。ここは見逃してもいいんじゃないかな、いずれ警備隊が捕まえてくれる」

村人たちは顔を見合せたのち、しぶしぶヒースの意見に賛同した。

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