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破壊者たちの正義の裁き  作者: misato
第一章
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ミセリアは悲しげに言葉を発する。

「子供たちは私を善良だと思っています。でも私は悪魔で、人を殺してきました。それも事実です」

「だけどそれは俺と会う前の話だ」

「過去の話だとしても、犯した罪が消えるわけではありませんよ」

ミセリアはハチを見つめる。

「ヤナギと出会う前までは、私は身寄りのない残りわずかな命の人間を探してはその者を喰べました。たとえいずれ死ぬ命だったとしても私が殺したことにかわりありません。ヤナギはそれを知っていますが他の子は知らないでしょう。嫌われたくなくて言えないんです」

ミセリアのような悪魔に会うのは初めてだった。人間と悪魔の共存。

「食欲は抑えられるものなのか?」

それが出来るなら、人間と悪魔が共に暮らせる未来だってありえる。

ミセリアは首を横に振る。

「厳しいですね。悪魔にとっての人間は栄養源です。空腹は思う以上につらいものです」

それを聞いたハチはおもわず目をふせた。そう簡単に希望が見つかるわけはない。

ミセリアは持っていた疑問をハチにぶつける。

「あの、お二人はその………子供たちを、どうにかしようとしているわけではないのですよね?」

恐る恐る二人を伺うミセリア。ハチは「ああ」と呟いた。

「悪かったな、あんたを疑って。あの子たちにも謝らないと」

ハチの言葉にミセリアはきょとんとした。

「私を殺さないのですか………?」

「殺さないよ。あんたは悪じゃない」

ミセリアはなぜか温かな気持ちに包まれた。ずっと罪悪感があった。人を喰べることに。悪魔だということに。けれどヤナギと出会い、子供たちと共に生活し、会ったばかりの少年も私を悪ではないと言ってくれる。

ミセリアの目に涙が浮かんだ。私はなんて幸運なのだろう。ミセリアは流れそうな涙を我慢し、かすかに微笑みながら言う。

「私たちは、本当に素敵な人間に出会えたのですね」

彼女の言葉にハチとナナも微笑んだ。


ハチたちは子供たちと共に食事をとっていた。ミセリアに招待されたのだ。

「お姉ちゃんが持ってる人形面白いね」

「友達が作ってくれたの」

「へえ、すごーい!なんで蜂なの?お兄ちゃんがハチだから?」

「うん」

「あはは、単純ー!」

ナナは少女たちと楽しそうにしている。年上組の子供は幼い子たちの面倒をみていた。

「良い家族だな」

ハチの呟きにミセリアは嬉しそうに微笑む。

「この子たちのおかげで私はいままで正体がばれることなく過ごせてきたんです。助けられているのは私のほうなんですよ」

「村の人が言ってたぞ、ミセリアたちが来てから生活が楽になったって」

「ああ、ヤナギのおかげですね。ヒースさんが来てからは私たちもずいぶん楽になりました。彼のお店は三日ごとに営業なんです。明日は休みになりますから何か必要な物があれば言ってください。キササゲまでは遠いですからね」

彼女はとても善良だった。ここにあるのは普通の温かな家族。幸せそのものだ。ハチはみんなを見て微笑んでいた。


すっかり夜となりハチは帰り支度をした。

「ナナ、そろそろ帰るぞ。あんまり長居しても迷惑になる」

するとナナに懐いていた少女が不満をあらわす。

「えー、泊まっていかないの?だって宿屋なんてないでしょ」

「ダイさんって人の家を貸してもらったから大丈夫」

するとミセリアはハチに提案した。

「では明日、また家に来て頂けませんか?簡単なものにはなりますがお弁当を持っていってください。ユカ、お二人のお弁当作りを手伝ってくれますか?」

ナナにくっついていたユカは「わかった!」と元気よく返事をした。



夜中。眠っていたハチははっと目を覚ます。それにつられてナナも目を開けた。

「どうしたの?」

ハチはゆっくりと体を起こし頭を押さえる。

「………嫌なものを視た」

ナナも起き上がりハチを見つめる。

「珍しいね」

ハチは出かける準備を始めた。

「お前はまだ寝とけ、調べてくる」

するとナナは「私も行く」と言ってハチと共に家を出た。



日が昇り始めたころハチとナナはミセリアの家へと向かった。するとそこには十数人の村人が集まっていて、異様な雰囲気を漂わせていた。

ヤナギと子供たちはミセリアを庇うように村人と口論している。

「俺たちはみんなで家に居た!誰かがいなくなれば気付く、俺たちじゃない」

「お前は昨日帰って来たばかりで疲れてたんだろう、あてにならん」

「だからってなんでミセリアさんなんだよ!おかしいだろ」

ハチとナナは走って間に入る。

「待った、なんで村の人がここに?」

村人は今、こんなところにいる時ではないはずだった。ハチはみんなの顔を見る。村の男たちはそれぞれ武器や農具を持っていた。

一人の男が二人を見て敵意を向ける。

「あんたら、今朝じいさんの家にいなかったな?どこに行ってた」

ハチは冷静に考える。自分たちに容疑が向くのは仕方がないことかもしれない。

「少し調べたいことがあった。だから家をあけた」

「こんな何もない田舎で何を調べる?お前らが犯人か?クニさんを殺ったのは誰だ!?」

村人たちは怒りと恐怖で支配されていた。

年老いた男性が冷静に場をしずめ、ゆっくりと口を開いた。

「今朝早くにクニさんが自宅で殺されておった。おそらくクニさんだ。頭がなかった」

その言葉に子供たちの顔色が悪くなる。

「あんな残酷な殺し方、悪魔の仕業じゃないかと思っておる。この村に悪魔などおらん、そう思いたいが」

男性はミセリアを見た。

「お前さんがここに来て十年ほど経つが。お前さん、今いくつになった?」

その質問にミセリアの顔色は悪化した。


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