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いーすぽっ!  作者: ともP
♠ 現代転生(高校生編❷)
99/151

087. 夏季休暇(1)


 挿絵(By みてみん)


 八月中旬、まだ暑い日々が続く中、俺は牧野と一緒に桂浜花街道を車で走っていた。何が面白くて野郎二人でドライブをしなければならないのか、という思いが一瞬頭をかすめる。


 そんなことを考えているとも知らず、牧野は「桂浜は変わらず綺麗だな」なんて言いながら、窓から海を眺めている。


 しかし、こうやって牧野と二人で話すのは思い返せば久しぶりかもしれない。


 練習の時は話してはいたが、チームの実力向上のために芽依や菜希に割と付きっきりでアドバイスをしていたので、あまり二人きりで何か話をするという機会はなかった。


 まあ、これは仕方がないことではあるが……。


 そして、STAGE:0で優勝した後も、牧野は東京での仕事を片付けるために居残りをしたので、顔を合わせてゆっくり話をする機会がなかった。


 んで、東京での仕事を片付けてきた牧野はまた高知に戻ってこうやってドライブをしているわけだが……。


「仕事はもういいんですか?」

「あぁ、東京でやるべきことはもう済ませてきたから大丈夫」


 ていうか、コイツの仕事内容を聞いてなかった。何をしてるんだか知らないがeスポーツのイベントに関わってるって言ってたから、その関係だろうか。


 県道14号を走る車は左側に広がる海を視界に捉えながらゆっくりと進む。


「『Alice of Battle』の大会を主催している、GHOって会社、聞いたことあるかい?」

「……あ~、なんか聞いた事あるような気が……」


 牧野が突然そんなことを聞いてきたので記憶を辿る。ゲーム会社からの直接受託ではなく、独自でeスポーツのプロリーグを主催している企業だ。


 既にいくつかのゲームタイトルのプロリーグを運営しており、『Alice of Battle』は2年前に人気になった5対5のマルチプレイヤーFPSである。何回かプレイの動画を見たことある。


「へぇ、牧野さん、あそこの関係者だったんですね」

「まぁ、いろいろあってね」


 牧野はそんな返事を返す。企業が元プロ選手を囲うなんていうのはよくある話だ。GHOも、もともと牧野が所属してたNRTのスポンサー絡みで関わっているんだろうか。


「あそこの会長に気に入られててね、いろいろお世話になってるんだ」

「へぇ……」


 そんな話をしつつ、牧野は窓の外から海を覗いている。


「やっぱり、ああいうイベント運営って大変なんですか?」

「あぁ、マジで大変。何が大変ってもう全部だよね。ノウハウほとんどないからね」


 eスポーツのイベントは普通のイベントを開催するのとはわけが違う。ゲームをつつがなく進行するというのはどのくらいのスペックの機材が必要で、ルールはどうするだとか、ゲームのタイトルによっても知識がないと設計できない。eスポーツの運営というのはそれこそ今までゲームで培ってきた廃人レベルに近しいレベルの知識を持っていないと成り立たない。


「デバイスとかルール関係の知識はやっぱりかつて選手として現場を分かってる人間が取り仕切らないと地獄を見るからね。分かっていない人間がルールを作ると誰もが不幸になる結果になるのは目に見えてるし……」


 牧野はそんなことをしみじみと語った。色々苦労してきたんだろうな……。


「今も企画とかの統括してるんですか?」

「まあ、今は企画半分とプロチームの管理・折衝とかがメインだね。特に今はプロ選手の『発掘』っていう部分に重点を置いてる」


 そう、牧野は昔、日本で活躍していたプロゲーマーだ。そのプロゲーマーだった男がいま任されてるのが未来の選手の「発掘」という仕事。


 龍馬ゲーミングのコーチをこうして引き受けているのは牧野自身の強い希望もあるが、こういう「未来の有望な選手を見つける」という名目で、将来活躍するだろう選手とのコネクションを作る意味もあるという。


「世界で活躍する未来ある選手を日本から排出したい、っていうのが僕の夢だから。僕が果たせなかった夢を誰かに託したいんだよ」


 牧野はそんなことを言いながら海をまた見る。日本選手は近年では結構粒ぞろいの選手がゲームタイトルによっては揃っている。それでも、世界では勝てていないのが現実である。


 それは俺が競技をやっていた時代と何も変わっていない。


(NRTがその壁を破るはずだったんだけどな……)


 それは置いておいて……、こういう風にeスポーツのリーグを国内で開催できる企業がいるのだ。なら、意外と近いうちにどうにかなってしまうのかもしれないと俺は思ったり思わなかったりする。


 でもまあ、課題は山ほどある。


「こういう地方のイベントは選手が集まりにくいし、イベントとかも開催しにくいんだよね」

「そうでしょうね、わざわざ東京から来るのも大変ですし……。それが課題ですかね?」

「う~ん、本質はそもそも地方ってこういうeスポーツの大会やらイベントやらを企画してもノウハウがなくて仕掛けられないんじゃないかって思うね」

「あー、そういうことなんですね」

「さっきも言った通りeスポーツのイベントとか大会運営って少なくともプロに近しい知識を持ってないと計画できないからね」


 そんなプロに近しい知識を持ってる、なんていうのは一朝一夕で獲得できるものではない。そのノウハウを持っている会社はほとんど東京でイベント運営会社とかが囲っているわけで、地方でそういう風に企画・実行できる人材がいないというのが現状だろう。


 日本のeスポーツの環境は俺が競技をやっている時よりはましにはなったが正直まだ整っていない。ゲームタイトルにもよるが多額の賞金がかかっている大会はまだ開催されていないし、大会の質もお世辞に良いとは言い切れない。


 海外では環境が整っていて、高額の賞金が出ている大会もある。そして、大会そのもののクオリティも高いのだが……。


「まあ、日本も競技としてもっと世間的に認知されたり、熱狂できたりするような状態になってくれると嬉しいんだけどね」

「そう、ですね……」


 牧野はそんなことを言いながら車のスピードを上げる。目的地はもう少し先のようで、窓から見える風景も山の中に入っていっているのが見える。海沿いの風景からまた自然の多い環境に変わっていく。


「ほんとに高知は景色が綺麗で良いところだね。都会よりも全然運転しやすいしね」

 

 しかしながら、牧野がこうやって選手としてではなく別の形で、eスポーツに関わっているのがちょっと嬉しかった。確かに、日本のeスポーツはまだまだ後進的で環境が整っていなくてまだまだ課題が残っているが、それをどうにかするためにこうやって企業が前を向いているというのを知れたのも良かった。


「さて、そろそろ着くよ」


 牧野はそう言いながら目的地が目の前に迫っていることを俺に告げる。車は仁淀川にかかる橋を抜けていった先にある小さな小屋の前の駐車場に停車した。


 ここが牧野が向かっていた海鮮の美味しい店だという。俺は来たことがないが、牧野は何度か来ているようで慣れた様子で車を駐車場に停める。


「続きの話は店の中でしようか。未来の若者に今のeスポーツの現状を伝えるのも僕の仕事だからね」


 牧野はそんなことを言いながら車から降りていく。俺もそれに続くように車を降りて店の中に入っていった。

【コラム】

牧野の仕事の部分にもフォーカス当てながら日常パート執筆していきます。高知県の描写に戻ってきましたがリアリティ重視でいきますのでよろしくお願いします。内容も結構ディープかもしれません。もし、何か思うところがあればぜひ感想いただきたいです。また、ブックマークや広告の下にある評価の欄で★×5を頂けると執筆の励みになります!

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