083. STAGE:0(6)
会場のボルテージが上がっていく中、牧野は会場の中で戦ってる彼に感心した。
平然とやってるように見えるがこれは簡単なことじゃない。舞台が大きくなれば周囲からの期待は高くなり、プレッシャーに押しつぶされそうになるはずだ。
しかし、彼の目は楽しそうにそしてギラギラと輝いている。まるで獲物を狩る肉食動物のように……。
(さて、本番はここからだな。キル上限がなくなる……)
牧野と凌平は試合を見ながら、守月君がどのように攻撃をしてくるのか想像し、いつの間にか試合そっちのけで試合の反省会をしていた。
「あの駆け引きとんでもないですよ。自分が弾を外さないっていう自信がないとできませんよ……」
「まぁ、それに関しては自信があるだろうな間違いなく」
「もうちょっとああいうタイプへの対応を教えておくべきだったかもしれない」
フィジカルでゴリ押しするようなタイプのDeltaにとって、守月裕樹のようなプレイヤーは天敵だ。天性の感覚と当たればとんでもない火力を出す単発銃、驚異的な反射神経と判断能力。守月裕樹は間違いなくこの会場で一番のプレイヤーであることは間違いない。
正面からぶつかれば返り討ちに遭うだろう。
「正面から撃ち合うことはもうしないほうがいいでしょうね……」
「そうだな、間合いに入ったら確実に落とされる」
しかし、だからと言って距離を保ったまま撃ち合いを続けたらそれこそ守月裕樹の思うツボだ。後衛に控えている二人はどちらかというと中距離から遠距離の攻撃を得意としている。あまり積極的に仕掛けにいかないような立ち回りをしている。
これはIGLの芽依さんが意図的にやってる動きだ。
彼女は頭が良い。戦略を立てて、その戦略通りに物事を進めるようなプレイヤーだ。だからこそ、守月裕樹というプレイヤーを輝かせるためにはどういう動き方をすればいいかよくわかってるはずだ。
「試合が動くかもな……」
そんな予感がした。試合が大きく動いたのはキル上限が撤廃された4試合目――、牧野は心の中で何度も頷いた。そうだ、僕も同じ状況ならそうする。
今まで手綱を引いてきた守月君からリードを外して暴れてもらう。これが一番面白い。何より、守月君だってこの機会を好機と捉えるだろう。
予想通りの行動を見て牧野は笑みがこぼれる。
(やっぱり、IGLを芽依さんに置いたのは間違いなかったね)
龍馬ゲーミングの降下ポイントはマップの端側、安全地帯はマップの逆側の工場エリアになっている。最速で物資を漁り、龍馬ゲーミングは一気に南下していく。
南下していく途中で遭遇した部隊は全てキルし、あっという間に南側の工場エリア高台の拠点を制圧した。この時点で既にチームで10キルを達成。
「この動きは流石にヤバいんじゃないか……」
そう漏らしたのは隣にいた凌平だった。
エースを筆頭に攻めに転じた龍馬ゲーミング。守月裕樹は必ず敵を一枚落としきる。人数有利の残りの二人がちゃんとフォーカスして、リロードする彼のことをきちんとカバーしている。
キルの上限が撤廃された4試合目はチーム全体で10キルしてエリア取りも完璧。とんでもない連携だ。3試合目を終えての戦績は龍馬ゲーミングがトップだったが、キル上限もあり『ARCADIA』と拮抗していた。
ただ、この4試合目で10キル以上して且つトップを取ろうものなら……、この試合でほぼ確実に龍馬ゲーミングの勝利が決まってしまう。
(完全にARCADIAが出遅れる形になってるな……)
エリア取りに合流したのは、西側の降下ポイントから安全地帯に入ってきた『ARCADIA』だ。別に移動が遅かったわけじゃない。
北側の一番奥から部隊を壊滅させながら降りてきた『龍馬ゲーミング』のスピードが異次元すぎるのだ。物資の位置、自分の漁るポイント、移動のルート、戦闘時間、全てを網羅して動いている。
なんか、牧野みたいでちょっと嫌だなと思った。
さて、今大会3回目の『龍馬ゲーミング』とのマッチアップ。終盤まで生き残るような強いチーム同士はやはりこうやって直接ぶつかることになるんだなと牧野と凌平は改めて痛感する。
「結弦、頼むから正面で絶対にやりあうなよ」
「やるべきことはいつもと変わらないからね。正面から撃ち合え守月君」
正面に移される大きな観戦画面を見ながら、牧野と凌平はお互いに祈るように戦況を見守る。
【コラム】
皆様、明けましておめでとうございます。新年明けてから時間が経ちましたが、執筆活動再開させていただきます。今年の目標は定期的に話を考えてこまめに更新することです。大会の話はあと2話くらいを予定しています。ブックマークや広告の下にある評価の欄で★×5を頂けると執筆の励みになります!




