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いーすぽっ!  作者: ともP
♠ 現代転生(高校生編❷)
94/151

082. STAGE:0(5)


挿絵(By みてみん)


 2試合目が終わり、3試合目が始まろうとしている。


 観客席から教え子の勇士を見守る凌平の隣には牧野と啓介が座っている。牧野はどこか誇らしげに、啓介はどこか心配そうな顔で教え子の雄姿を見守っている。


 初戦の出だし『ARCADIA』は好調な出だしかと思われたが、牧野がコーチしている『龍馬ゲーミング』のM.yuki選手によって壊滅させられてしまった。


 その驚くべき立ち回りは実況席にいた解説者や紅林だけでなく、観客である凌平と啓介も驚かされ、観客席に座っていた牧野だけが平然とそのプレイを小さな拍手で称えていた。


 Deltaを2ショットでダウンにした驚異的な反応速度、カバーに来た選手を次々に破ったフリックショットの上手さ。そして、何より『ARCADIA』があの押せ押せの状況で1人冷静に捌き切ったメンタルが恐ろしい。


「なぁ、凌平」

「なんですか?」


 牧野は教え子の雄姿を巨大なモニターで見ながら静かに呟く。


「アイツさ、なんか感じるだろ。上手いとかそういうレベルじゃないなにかを……」

「……そうですね」


 そんな一言を呟く牧野に凌平は短く返事をする。思わず二人の口から感嘆のため息が漏れる。


(懐かしいものを見た気がする。憧れだった"アイツ"はこんな風にプレイをしてたっけな……)


 そんなことを思いながら凌平は教え子が戦う姿を見ていた。


「でも、牧野さんが教えてるチーム手堅いですよね」

「そうだな。指示を出してるのはエースじゃないからな……」

「え……、そうなんですか?」


 啓介は驚きの声を上げる。啓介の中ではあのM.yukiという選手が全オーダーを出してるイメージがあったからだ。


「エースが必ずしも指示を出せば勝てるわけじゃなかっただろ?」

「そういえばそうでしたね……」

「あぁ、チームプレーなんていう都合の良い言い訳は『NRT』にはない。有るとすれば、スタンドプレーから生じるチームワークだけ……」

「懐かしい台詞ですね。柳町がなんかのアニメに影響されてずっと言ってましたね」

「アイツすぐにアニメに影響されてたからな。でも、思い返すと考えさせられる言葉だな」


 それぞれの能力が尖っていて、お互いに尊重して、自発的に行動し、それをまとめる指示役がいる。それがチームの理想である。


 NRTというチームは非常に尖っていて、お互いが尖り過ぎていて、衝突することも多かった。それでも、不思議と試合になると結束する。


 IGLを牧野に据えてチームは一気に安定し、爆発力の高いチームになった。


 あの時、もし柳町俊吾が生きていたら……。


 こんなことを考えても何も変わらない。変わらないけど考えてしまう。


「彼似てるんだよね。柳町に」


 牧野は画面に映るM.yuki選手の動きを見てポツリと呟く。


「そうですかね。柳町だったらもっと攻撃的なチームを組みそうなもんですけどね」


 龍馬ゲーミングは基本に忠実で、堅実なチームだ。この2試合を見て感じたのはそんなに積極的にファイトを仕掛けるチームじゃないということ。


 『ARCADIA』のように明確に"攻め"のスタイルを貫いているわけじゃない。


 正直勿体ないと思った。


 あんなにフィジカルの強い選手がいるのに、なんで牧野は攻めのチームに育てなかったんだろうと凌平は心の中で疑問に思った。


「どうかしたか?」

「いえ、牧野さんらしいチームだなと思って……」

「そうか?」


 牧野は首を傾げる。なぜ牧野が首を傾げたのか凌平は疑問に思いながらも、教え子の試合をしっかりと見る。3戦目も同じように部隊の減りが遅い。


 その中でもM.yuki選手の正確なエイムと冷静に相手の動きを分析している視野の広さには驚きを隠せなかった。そして、その状況に応じて的確な行動をとるチームメイトにも感心する。


 本当に見事なチームプレイだ。


「NRTの面子で戦ってみたいですよね。あのチーム」

「そうだな。戦いたいな。本当に……」


 お互いに口数が少なくなる。この3試合目に『Delta』とぶつかり合う。これはもはや必然といってもいいだろう。牧野も凌平も彼らの駆け引きにワクワクしていた。


 どうやって、闘うのか、どの試合よりも早くこの戦いが見たくて武者震いするほどだ。牧野は度肝を抜かれることになった。


(笑ってる……、この状況を楽しんでるてわけか守月君は)


 画面に映る守月裕樹は相手チームと戦う楽しさからか、笑みを浮かべる。その笑みはとても狂気的でとても無邪気だ。無邪気な子供が虫を潰すかのような残虐性を秘めた笑いに牧野は鳥肌が立った。


(彼は強い……。間違いない。少なくとも会場にいるどの選手よりも踏んでる場数もメンタルも……)


 1試合目と同じような展開を3試合目でも繰り広げる。会場からは大歓声が響き、それに呼応するように実況席も盛り上がる。観客は"面白い"と感じて、解説席の二人も思わず声を上げて笑っている。二度目の勝利か、逆襲か、どっちに転ぶか分からない状況が牧野にとっては面白くて仕方なかった。


 さて、FPSには『DPS』という言葉がある。英語でDamage Per Second、1秒あたりの与ダメージという意味だ。


 DPSは武器の性能を測る上での指標のひとつとして用いられている。


 Delta選手が愛用している『アサルトライフル』と守月君が使用している『リボルバー』のDPSを比べた場合、アサルトライフルの方がDPSは高い。


 つまり、理論上でいえばDelta選手のが優位というわけだ。だが、これは理論上の話であり、胴体に当て続けた場合のダメージ量を前提として話は成り立っている。


(プロでも常に胴体に全ての弾を当て続けるのは至難の業だしな……)


 さらに、このゲームは胴体とヘッドショットでダメージが変わる。アサルトライフルの弾をヘッドショットで狙い続けるのは不可能に近い。逆に、リボルバーはヘッドラインに一発弾をぶち込めば大ダメージを与えられる。


 ただ、アサルトライフル同様に弾を頭に当てるのは非常に技術がいる。


 そんな"神業"を彼は得意としている。やられた側からすれば一瞬でHPを溶かされるような感覚になる。 


「牧野さん、ヤバイですね」

「あぁ、本当に凄いプレイヤーだよ」


 凌平と牧野は口をそろえてそう答える。何も言い返すことはないし、何なら称賛の言葉しか出てこない。


 2度目のマッチアップも守月君が2発ヘッドショットを入れて、Deltaをダウンさせた。観客のボルテージは一気に最高潮に達し、歓声が響き渡る。


(この状況下で2発ヘッドショットを決めるか……)

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