081. STAGE:0(4)
今大会の注目選手として挙げられていたのは『Delta』で会場も他のチームを圧倒するんじゃないかという期待感を持っていた。
だが、一試合目で『ARCADIA』のエースであるDeltaが一瞬の隙を突かれて撃破される展開になり、会場のボルテージは一気にあがっていた。
さて、守月裕樹のアドバンテージは『経験』である。
人生の中でFPSというジャンルを何年プレイしてきたか……。少なくとも、この会場にいる奴ら以上の時間をFPSに費やしているという自覚はある。
だから、誰よりも負けられない。負けてはならないというプレッシャーが常にあった。俺は実況席から聞こえる声に、耳を傾けながらモニター画面に集中した。
(2試合目が始まるな……)
『さて、皆さん。お待たせしました! それでは二試合目の幕開けです』
『皆さんも驚きの結果になりましたね』
『さて、早くも二試合目が始まりますがどうですか?』
『そうですね……。やはり、どの高校もレベルが高いという印象を受けますが、「ARCADIA」を破ったチームには注目したいですね』
『中国-四国ブロック代表の「龍馬ゲーミング」ですね』
『はい』
紅林は、この立浪アナウンサーの言葉にすぐに反応する。龍馬ゲーミングが一位を取った時のどよめきは凄まじかった。
ネット上で良くも悪くも『ARCADIA』というチームとDeltaは大注目を集めている。注目騒ぎの元凶となった死体撃ちの炎上騒ぎもDeltaが正式に謝罪をし、炎上は収まっている。
元々、ネット上でプロレベルと言われていた彼が活躍して大会優勝するだろうとeスポーツのファンなら誰もが安直に予想するだろう。
だが、現れた"伏兵"によって試合は予想外の展開を迎えた。
四国-中国ブロック代表のM.yukiという選手。正直、試合を見るまではDeltaの圧勝だろうなと思っていた。だが、蓋を開けてみればどうだ。試合は"龍馬ゲーミング"今も堅実に勝利し、且つ優勝候補である『ARCADIA』を撃破しているではないか……。
『龍馬ゲーミングは予選を見る限り、堅実な立ち回りをするチームという印象が強いですが、今大会の注目であったDelta選手を撃破したことで勢いに乗ってますね』
『そうですね……。正直、ここまでの連携というかM.yuki選手の立ち回りとエイムは見入るものがありますね』
立浪アナウンサーも「そうですね」と答える。何かを引き付けるカリスマ性というのだろうか、彼にはそんなものを感じる。
『さて、一試合目とは違ってゆっくりとした立ち回りになっております。どの高校も探り合いと言ったところでしょうか』
『そうですね。キルを取ることに注力していたARCADIAがちょっとおとなしい立ち回りになってますね』
『なんとなくM.yuki選手を警戒してそうですね』
『我々外から見てる人間があれだけ驚くので本人としてもどこか思うところがあるのかもしれません』
『なるほど、確かにそうですね』
【STAGE:0 スタバト部門ルール】
試合数:5試合
それぞれの試合で得られるポイントの内訳は以下の通りである。
順位ポイント:1st/12pts、2nd/9pts、3rd/7pts、4th/5pts、5th/4pts、6-7th/3pts、8-10th/2pts、11-15th/1pt、16-20th/0pt
キルポイント:1kill/1pt
※キルポイント上限あり:マッチ1/上限6pts、マッチ2,3/上限9pts、マッチ4,5/上限無し
『キルポイント制限がある中で1試合目のARCADIAが攻撃的だったのは驚きでしたね』
『牽制という意味合いがあったんだと思いますね』
大会というのはeスポーツじゃなくても初戦が大事だ。スタートダッシュを決められるか否かは、その後の展開を大きく変える。
ARCADIAの誤算は『龍馬ゲーミング』が想定していた以上に強かったこと、M.yukiのエイムがブロック代表決定戦よりも更に磨きがかかっていたことだろう。
『さて、試合も中盤に差し掛かってきました。龍馬ゲーミングは1試合目と同じで堅実的な戦い方をしますね』
『そうですね。ARCADIAも生き残ってるので2ラウンド目があるかもしれませんね』
紅林が求めていたのはこの試合展開だった。『ARCADIA』の連携は予選よりも問題はなく、個人個人のスキルもDeltaは別格として他も高い。だが、如何せん連携力に不安がある。
仲のいい友達同士ならそれで良いだろうが、チームメイトとして長い時間を共に過ごしているわけではない。学生で組むようなチームならば尚更だ。
チームワークとは信頼関係と努力なしでは絶対に身につかないもの……。さっきは龍馬ゲーミングに一方的にボコられる形になってしまったが、連携さえしっかりすれば必ず互角の勝負ができると紅林は思っている。
(ただ、ちょっと気がかりなのが……)
龍馬ゲーミングの彼――、M.yuki選手本名は守月裕樹。今大会のダークホースであることは間違いないが、あの一瞬で見せたエイムが未だに脳裏に焼き付いている。あのエイム以外にも引き出しがあるとするのであれば、相当厄介な相手だ。自分が同じ場所に居ても圧倒されそうなそんな気配がある。
『最終の縮小が始まり、部隊が6つに絞られました』
『この段階ではまだ、どのチームにもチャンスがある状況ですが……』
立浪アナウンサーがそう話しながら紅林のほうを見る。彼の思いは一緒だろう。
(やっぱり、大会って面白いよな)
紅林はこれまでに感じたことのない高揚感を抱いていた。もう何年もこの業界に身を置いているが、ここまで"面白い"と思える選手はなかなかいない。牧野が心動かされる理由も分かる。
競技をやってた頃の自分が見たらきっと「負けられない」と思うのだろう。
『さて、各高校どこの部隊を狙っていくか』
『そうですね。ここの状況だときついのは……、龍馬ゲーミングの位置取りですね。挟まれてると流石に辛いですね』
紅林の予想通り、龍馬ゲーミングは囲まれてる状況になり、後退しながらも的確に動いていく。
『おっと、龍馬ゲーミングは押されてますね。しかし、後退しながらもカバーはできてますね』
『そうですね。M.yuki選手を軸にアタッカー二人とIGLで連携もしっかりとできていますし、後退しつつも受けきってる印象です』
だが、デスゾーンの収縮が更に早くなり、強引にもゾーンの内側に入らないといけないような場面になってきた。
『さぁ、いよいよ最後の縮小が始まりました』
『龍馬ゲーミングが攻め込みに行きましたね。これは結構ギャンブルプレイですね』
龍馬ゲーミングが攻め込もうとするが、相手チームも待ち望んでいたかのように激しく応戦してくる。
『ここで両チーム衝突! これは激しい展開になりましたね』
『龍馬ゲーミングのフォーカス凄いですね。ちゃんと仲間が削った相手を的確に狙ってます』
そして、龍馬ゲーミングは端に居た部隊を一気に壊滅させる。だが、残ったチームの集中砲火を喰らう形になり、脱落してしまう。
『龍馬ゲーミングはここで脱落ですが3位で6キルですので悪くありません』
『そうですね。これARCADIAが勝つと面白くなってきますよ』
紅林がそう言った瞬間に試合は決着を迎える。
『おおっと! 最後はDeltaが攻めた! ARCADIAが二戦目はトップ、部隊としても7キル獲得してます』
『いや、本当に流れが良かったですね。最後まで撃ち合いでしたけど、最後はDeltaの狙いが定まったという印象です』
まだまだ、試合は残されているが、この2試合の紅林の感想は「面白い」の一択だ。
『さて、これで2試合目が終了しました』
『はい。次の試合はどの高校がトップを取るのか楽しみですね』
【速報】
1位 中国-四国ブロック代表 『龍馬ゲーミング』(31ポイント)
2位 オンライン高校ブロック代表 『ARCADIA』(29ポイント)
3位 関東ブロック代表 『道を開けろ』(27ポイント)
4位 オンライン高校ブロック代表 『ネット軍団』(25ポイント)
【コラム】
一息つきながらコラムを書いています。予定では3試合目はサラっと流して、キル上限がない残りの試合で龍馬ゲーミングの視点、ARCADIAの視点を執筆していきたいと思ってます。




