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いーすぽっ!  作者: ともP
♠ 現代転生(高校生編❷)
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077. 龍馬ゲーミング(2)

 放課後、俺は言われた通りに部室に向かう。鍵は開いていたので中に入ると、菜希がいつもの場所で座っていた。

 

 そして、俺を見ると「遅い」とどこか不機嫌そうにそう言った。


「いや、早いだろ。まだ、授業終わってから五分しか経ってない」


 俺はそう菜希に言った。菜希は何も言わずに、対面に座るように促した。俺が座ると、菜希は口を開いた。


「射撃訓練場でタイマンして欲しいんだけど」


 まあ、そう来るとは思った。菜希は自分の実力を試したいはずだ。実力を試すのに手っ取り早い方法が俺との一対一であることは理解している。他にも理由はありそうだが……。

 

「そうだな。やろうか」


 菜希がわずかに口角を上げる。その表情はどこか嬉しそうにも見えた。芽依も部室に合流し、面白いものが見れそうと呟きながら俺らの戦いを見守る。芽依もどこか楽しそうだった。


 射撃訓練場の設定を終え、お互いに所定の位置につく。バトロワゲームはフィジカルだけでは決まらない。


 だが、撃ち合いが強いプレイヤーの方が有利。それは事実だ。


(さて、お手並み拝見といこうか……)


 両者互いに岩場に隠れ、頭上にグレネードを放り投げる。爆発が戦闘開始の合図。2本先取で勝ち。単純明快なルール。


 グレネードの爆発音が訓練場に響いた瞬間、俺と菜希はお互いに岩場から飛び出した。俺は一気に距離を詰めていく。愛銃であるリボルバーを片手に、菜希に接近する。


 FPSは動体視力が命だ。人間の知能は「流動性知能」と「結晶性知能」とがあり、それぞれ加齢による変化に違いがある。


 前者は年齢に大きく依存し、後者は経験によって維持が可能だ。FPSにおける重要な知能は前者であるがため、競技で活躍することのできる選手寿命は極端に短い。


 具体的に年齢をあげるとすれば、10代から20代後半までだろう。


 それ以降は加齢による衰えによって、競技を続けていくことは難しくなる。


 柳町俊吾として競技をやってた頃はそんなに衰えというものを大きく感じたことがなかった。それでも、高校生に転生してみてはっきりと分かる。


 FPSに必要な感覚は年を重ねるほど、衰えていく。そして、競技という場から一度離れてしまっても、それは顕著に表れる。身体がイメージ通りに動かなくなっていき、さらには自分のイメージよりも遅い速度でしか動かせなくなる。


 転生した初めは自分のイメージと体の感覚が結びつかずに苦労した。


 菜希の動きを予測しながら岩場で撃ち合う。前世のFPS経験と10代の動体視力。それを存分に活かして、俺は菜希の動きを読む。菜希は機敏な動きで俺の射線を躱しながら反撃してくる。


 しかし、その銃弾は俺の身体を捉えない。


「くっ……」


 と菜希が忌々しげにつぶやくのが聞こえる。これはマグレなんかじゃない。単に俺の経験による技術だ。


 この感覚を体が思い出すのに、前世では少し時間がかかってしまったが……。


 俺は一気に菜希に詰め寄り、リボルバーを撃ち込む。菜希はそれに反応することができず、俺に敗北を喫した。


 しかし、菜希の表情に悔しさはない。どこかスッキリしたような顔をしていた。


 すぐに、2ラウンド目が始まる。グレネードが頭上にもう一度投げられて爆発する。


「なるほどな……」


 と、俺は思わず呟いた。このゲームにおいて最も重要な才能は「適応力」だ。相手の動きのパターンを把握することで優位に立つことができる。


 菜希のプレイスタイルは明確に変化していた。前よりも、銃を撃つことに対して躊躇がなくなっている。躊躇うこともなく、しっかりと銃を構えて撃ってくる。


 俺が銃口をずらしてもそれにきちんと対応してくるし、実際に銃の角度やエイムを置く位置などを速攻で修正してくる。


 そして、何よりも「読み」が深い。相手の考えていることを全て読むかの如く、こちらが手を変えるとそれに合わせてくる。


 そして、思い切りが良い。


「菜希ちゃん、凄いね……」


 芽依がポツリと呟く声が聞こえた。俺は心の中で同意する。数週間前とは別人に仕上がってる。だが、それでもまだ負ける気はしなかった。


 俺の方が前世を含めて経験が1枚も2枚も上手だからだ。それは単純な技術だけに留まらない。 


「ふう……」


 と俺は息を吐く。すぐに距離を詰めて、菜希にリボルバーで狙撃する。菜希は落ち着いてそれを回避しながら、反撃してきた。俺はそれをギリギリのところで躱しながら反撃する。


 ちゃんと、俺が頭だけを狙ってることを理解してるのか、しゃがみ入力を入れながら攻撃を回避してくる。やはり、菜希は強くなった。


「さすがだな、菜希」


 俺は素直に称賛の言葉を口にした。俺の余裕な表情に、菜希は訝しげな表情を浮かべた。


(いい顔だ)


 俺はふっと笑い、再び銃を構える。菜希もそれに応じて構える。菜希が使ってる武器はショットガンとSMGという流行りの武器構成だ。


 菜希は一気に距離を詰めてこちらに接近戦を挑んできた。


 ショットガンは近距離戦でその真価を発揮する。ショットガンは弾の拡散範囲が広いため、遠距離攻撃には向かず、至近距離で絶大な威力を発揮する。


 ショットガンが威力を発揮することができる最大の条件は「()()()()()()」だけである。


(まあ、これはどんな武器にも言えることだがな……)


 俺は菜希に距離を詰められながらも冷静に応戦する。菜希はヘッドショットを警戒し、小刻みに左右に動いて弾を躱そうとする。


 そして、決着は意外な形になったすれ違いざまに撃ち込んだ銃弾は菜希のキャラに見事着弾したが、同時にショットガンの弾が俺のキャラに命中し、互いにダウン状態に……。


 お互いにダウン状態になった瞬間、何が起きたか理解できなかった。


「まさか、両方ともダウンとはね……」


 と、菜希がクスクス笑いながら言った。俺も思わず笑みがこぼれた。


「相打ちなんて珍しいこともあるんだな」

「そうだね」


 仕切り直しで3ラウンド目をやってもよかったが……、これは白黒をつけるためのタイマンじゃない。それを菜希も理解しているのだろう。もう一勝負とは口にしなかった。


「守月君、どうかな?」


 ここまで無言を貫いてきた牧野が口を開いた。正直なところ本気で驚いている。ここまで菜希が化けるとは思っていなかった。


「十分だ。これなら、次の大会でも戦える」


 と、俺は言った。菜希はどこか満足そうにしている。手ごたえもあったのだろう。そして、芽依もどこか安心した表情を浮かべている。


「じゃあ、この後は連携の部分でどうしていくかを考えていこう!」

【コラム】

次回から「STAGE:0」の全国大会編になります。物語も大きく展開させていきたいと考えていますので引き続き応援よろしくお願いします!

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