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いーすぽっ!  作者: ともP
♠ 現代転生(番外編❸)
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070. あの頃の記憶(7)


挿絵(By みてみん)


 週明け、凌平は「ARCADIA」のチームメンバー、春風涼太、舘脇翔也、榛原結弦を「eスポーツ部」の部室に集め、岡田啓介、東條麻里の二人を紹介した。


 まあ、ゲームをやってる人間がこの二人を知らないわけがなかった。特に、翔也は目を輝かしながら二人のことを見つめていた。


 鈴木凌平、岡田啓介は元NRT所属のプロゲーマー、東條麻里は現役の女子プロゲーマーだ。


「えっと、皆さん初めまして……。東條麻里です」

「岡田啓介だ。よろしくな」


 二人ともどこか緊張しているようで少し表情が堅いが、翔也の熱気にその硬さは崩されていた。eスポーツの選手がここまで知名度を上げてることに凌平は驚いていた。


 NRTで競技をやっていた頃はeスポーツの競技をやってる人間が表舞台で活躍しているイメージはなかった。だけど、最近では少しずつその状況が変わってきている。


 テレビへの露出やSNSでの発信、Youtubeでの配信など徐々にその知名度を上げつつある。


 もし、柳町が今の時代で活躍していたらどうなってたんだろう……。


 そんなろくでもない妄想が少しだけ頭を過った。きっと、称賛されていただろう。世代の中でもずば抜けて本当の「天才」は柳町だった。その「才能」を凌平は羨ましく思っていた。


 だが、柳町はもうこの世にはいない。


(もし、あいつが生きてたら……)


 凌平は柳町が今でもプロゲーマーをやっている姿を想像して、なんだか少し悲しい気持ちになった。今の時代には「天才」なんて一握りしかいない。皆、凡人の集まりだ。それでも必死にもがいて、足掻いて、夢を叶えるために生きている。


 凌平もその凡人の一人だった。でも、結弦は違う。アイツは持っている側の人間なんだ。だから、こんなところで燻っていていいはずがない。


「で、俺たちはなんで集められたんですか?」


 翔也がそう質問してきた。そう今日集めたのは顔合わせのためではない。彼らに知ってもらいたい。いや、見せつけたいものがあった。


「これから練習カスタムをやろうと思う。俺を含めた即席のチームと『ARCADIA』で」


 麻里と啓介以外の全員が顔を強張らせた。全員が一気に真剣な眼差しに変わり、「マジかよ……」と声が漏れそうな様子だった。


「手加減はなしだ。お前らは俺たちに実力を示せ」


 凌平がそう言い放つと、涼太と翔也は顔を見合わせていた。そして、結弦はどこかその台詞を胡散臭そうに聞いていた。


 その様子を隣で見ていた麻里が笑みを浮かべる。その笑みの意味はどこか不敵で、対戦に心躍らせるようなそんな感じだった。


 元プロ、現役プロ連合との練習カスタム。チーム内での仲の悪さと天秤にかけても「受けない」という選択肢はなかった。ただ、結弦はこう言い放ってくる。


「挑戦者はそっちだから」

「いいねぇ、強気な子嫌いじゃないな~」


 麻里は不敵な笑みを浮かべながら結弦にそう告げていた。これで完全に手加減する気がなくなった。というか、端からそんな気はなかっただろうが……。


 まあ、麻里のことだ、本気で潰しにかかるだろう。


「じゃあ、みんな。それぞれ、席について準備をしてくれ!」


 部室は非常に環境が整っている。学校側もeスポーツの事業に力を入れており、様々な環境が整えられている。ちなみに、大きなプロジェクターも完備されていて戦闘の振り返りもできる。


 NRT時代の活動部屋よりも設備が充実していて正直羨ましい。


 さて、「ARCADIA」と凌平たちの即席チームはお互いに離れた位置に座った。ちなみに、結弦は他の二人とは離れた席に移動した。ヘッドセットを付けていないところを見ると連携する気は毛頭ないのだろう。


「じゃあ、アリーナモードでやろう」


 アリーナモードとは、普通のバトロワのモードとは違って、制限されたマップ内で相手のチームを全滅させるか、自分のチームが全滅させられるかで勝敗が決まる。


 マップが通常のバトロワより狭く、より戦術と連携力が必要になるこのモード。スタバトではおまけのモードのような扱いを受けているがバトロワよりもこっちのモードの方が凌平は好きだった。


「さて、真剣勝負だ。負けるわけにはいかないからな」


 凌平がそう言うと、麻里は表情を引き締めながら「当たり前でしょ」と呟く。啓介も言葉こそ発さないが、その視線から伝わる闘志に圧倒されそうになる。まさか、啓介ともう一回組むことになるとは思わなかった。


 さぁ、敵が連携してこないとなるとやることはただ一つだ。実力差のある二人を早々に潰して人数有利を作り出して倒す。または、孤立した結弦を三人で叩くかの二択。判断はIGLである麻里に全権を委ね、凌平と啓介は全力でサポートに徹する。


 マッチが始まり、カウントダウンがスタートする。


「3……2……1……」


 バァァァァァァァァァァン!!!


 初期リスポーン地点から勢いよく飛び出したのは啓介と凌平だった。二人はそのまま結弦がいるであろう後方の拠点に走り出した。


 その判断は正しかったようで拠点には結弦がいた。啓介はアサルトライフルを撃ちながら距離を詰めていく、それを後方から凌平の援護射撃が援護する。結弦も黙ってやられているはずがなく、すぐに後方の拠点を手放して前拠点へ移動して行った。


 結弦をカバーするような動きはなく、前の拠点にいた麻里との戦闘になる。


 麻里は結弦の照準をずらすだけの動きを見せ、近距離でショットガンをぶっぱなす。ダメージを入れ続ける麻里に遼平のカバーに入り、人数有利の状況を作り出す。


 悠長だなと思ったが……、残りのメンバーである涼太と翔也がカバーしに来る。だが、警戒していた啓介が的確に2vs1を捌きながら結弦のカバーを阻害する。


 結弦も持ち前のフィジカルでどうにかしようとするが……、麻里の弾除けと戦闘の引き出しの多さにうまく対処できない様子だった。


「クソ……」


 結弦が向かい側からそう呟いたのが聞こえた。


 すかさず、麻里が詰め寄って至近距離でショットガンをぶっぱなす。その後も執拗に攻め立てる麻里の前に結弦はなす術もなかった。


 ゲーム開始からわずか数分で決着がつくことになったのだが、終わってみると啓介も遼平もほとんどダメージを食らうことなく、エース兼司令塔に据えたプロゲーマー「東條麻里」の独壇場のような試合運びになった。


「やっぱり、啓介と凌平の連携はチーム組んでただけあって息ぴったりだね」


 麻里はそう言って満足気な表情で答えた。正直、ここまで圧倒するとは思ってなかった。まあ、どんなに強いプレイヤーでも人数不利になれば、勝率はぐんと下がる。1人に対して2人で相手をするのはどんなFPSにおいても定石である。


 だから、啓介と凌平の連携はこういう状況にめっぽう強いし、連携をまとめる司令塔の存在はどんなチームであっても欠かせない。


 チーム性の強いゲームは連携力が命だ。お互いがお互いの弱点を補いながら戦っていく。麻里の指示は的確でわかりやすく、動きを的確に言語化できる能力を持っている。


 ちなみに、牧野も同じような才能を持ち合わせてるな。


(これで、結弦も少しは周りを見れるようになってくれればいいんだが……)


 そんな期待を込めながら凌平は一人そう思っていた。「一人じゃゲームはできねぇんだぞ」というのが凌平が結弦に言いたかったことだった。


 結弦は席を立ち、部室から逃げ去るように飛び出していった。


 その様子を黙ってみてるわけがなかった。凌平も同じように部室を飛び出し、麻里に「あとの繋ぎは頼む!」という言葉をかけ、結弦の背中を追いかけた。

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