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いーすぽっ!  作者: ともP
♠ 現代転生(番外編❸)
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066. あの頃の記憶(3)

 翌日、凌平は新しいクラスである1年E組の教壇の上に立っていた。


 通信制の高校は全日制高校や定時制高校とは違いって毎日学校へ登校する必要はなく、レポートやテストを郵送やパソコン通信で行うことによって高卒資格を取得することができる。学校は誰もが必ずしも校舎に通いクラスメイトと一緒に机を並べて勉強するというだけが全てではない。今までの時代にはなかった学業への取り組みだと凌平は考えている。


 当然、通信制の高校に登校する生徒はいる。


 通信制高校の教員は生徒に対してカウンセリングやイベント等で交流する機会が十分にあるので、普通の高校と比べて生徒の心のケアという面に関してかなり力を入れている。


(別に一般高校が生徒の心のケアしていないというわけではないが……)


「初めまして、1年E組の担任を勤めることになった鈴木凌平です。よろしくお願いします」


 挨拶を済ませると生徒たちからは拍手が送られた。ここにいる生徒たちの中は通信制高校を選んでいる”理由”がある。過去になんらかのトラブルや病で心に傷を負った生徒だったり、何かしら特別な夢があり、ここでしか学べないものを得ようとしているそんな生徒たちだ。


 そういった生徒たちそれぞれに対して『手を差し伸べる』のも教員の仕事だ。


 榛原結弦はプロゲーマーを目指している。凌平は彼に足りないものは「社交性」、その一点だと感じていた。


 社会に出ると否が応でも「社交性」というのが重要になってくる。学校という空間から離れ、同学年だけではなく、年の離れた先輩や年下にも積極的にコミュニケーションをとらなければならない。


 これは、たとえ『プロゲーマー』になっても同じことだ。


 NRTで競技選手として活躍していた鈴木凌平も人間関係とコミュニケーションというものに非常に悩まされた。そして、競技選手を辞め、教員になってからもそれは同じ。


 世の中には色々な人間がいる。


 真っ向から意見を言わずに裏でグチグチ文句を垂れる人間、ちょっとしたことですぐにブチ切れる人間。


 本当に世の中には色々な人間がいる。本当に面倒くさいと思う。


(まあ、学校生活という場でもあんま変わんないけどな。人間関係って面倒くさいし……)


 そして、プロゲーマーという職業は安定しているとは言い難い。選手を辞めれば、第二のキャリアを探さなければならない。そんな時に救いの手を差し伸べてくれるのは「社交性」を持った人間だということ。


 天賦の才を持つ彼だからこそ、人間関係というつまらないことでキャリアを潰して欲しくないというのが凌平の本音である。


「さて、今日はスクーリングの日だから呼び出された人は面談室に来るように!」


 通信制高校には必ず登校しなければならないスクーリングという所謂面接指導日が存在している。今日の該当者は榛原結弦が含まれている。凌平は連絡事項を済ませるとそのまま面談室へ向かった。


「本当に担任なんですね。競技はもうやんないんですか?」


 学校という空間が彼を縛っているのか分からないが口調はどこかたどたどしく、どこか他人行儀で壁があるような感じがする。


「まあな、意外とプロゲーマーって厳しいんだぞ?」

「そうなんですか」


 NRTが解散になって競技から解放された時に体がフッと軽くなった。肩の荷が下りたような、そんな感覚だった。期待されて、応援されて、信頼されて競技に取り組んでいたからそういったものがなくなった瞬間に何もやる気がなくなってしまった。


「俺が言うのもアレだが、悩んでるなら相談しろ。人生相談でもいいし、ゲーム関係なら俺が大抵のことは答えられる」

「別に悩んでなんかないですよ」


 瞳を逸らす結弦を見て凌平は直感的に何か"抱えてる"と感じた。


「なあ、なんで普通の高校じゃなくてさ、通信制の学校を選んだんだ?」

「なんでって……」


 彼は少しだけ言い淀んでから、口を開いた。


「普通の高校なんか通ったって面白くないからに決まってますよ」

「そうかい……」


 結弦の目はどこか冷めていた。人と関わることに対する拒絶がそこにはありそうだった。


(これは、一筋縄ではいかないかな……)


 凌平はそんな結弦を見て心の中で深い溜息を吐いた。通信制高校であるこの高校は「eスポーツ」に非常に力を入れている。高校生対抗eスポーツ大会への出場も二つ返事で了承をもらえるくらいだ。


 そんな中で現校長からチーム内の「メンター」という役割を引き受けた凌平は結弦に対して自分ができることを模索していた。校長からは結弦のことを「どうにかしてくれ!」と懇願されていた。チームメンバーからは「あいつがチームに馴染めないのは、いつものこと」と呆れられていたが……。


 凌平はそんな結弦を何とかしたいと思っていた。


「とりあえずだけどさ、放課後に大会メンバー同士で話し合いをするから参加しない?」

「いや、俺は別に仲良しごっこがしたいんじゃないんで……」

「そか、まあ無理にとは言わない。気が向いたら来ればいいよ」 


 そう言って凌平は面談室から出て行った。


(どうしようかな……)


 現状では問題は二つある。


 一つ目は、結弦の炎上騒ぎの鎮静化。この問題を解決するためには本人が直接謝罪するのが効果的だ。オフラインイベントである「STAGE:0」の大会に臨むうえで炎上の鎮静化は急務だ。


 二つ目は、チームメンバーの結束だ。間違いなく今のままだと「STAGE:0」はボロ負けする。それは目に見えている。結弦とチームメイトとの間に溝ができて、チームが空中分解してしまっては元も子もない。まずはそこを修復する必要がある。


(でもなぁ……)


 結弦が抱えているものはそう簡単に解決するものではない。これは長期戦を覚悟する必要がありそうだと思った凌平だった。

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