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いーすぽっ!  作者: ともP
♠ 現代転生(番外編❷)
72/151

060. 月の名所は桂浜(1)

挿絵(By みてみん)


 翌朝鳥の鳴く声と共に目を覚ました。結局、昨日の出来事が尾を引いてしまってなかなか寝付けない夜を過ごした。


「ひっでぇ顔だな……」


 結局、芽依の告白に対する返事を出せていないまま俺は朝を迎えてしまった。どんな顔をして彼女に会ったらいいのか分からない。俺は寝起きのまま学校に行く準備を適当に済ませて家を出た。


(芽依の奴……、もう学校にいるのかな)


 そう思いつつもまだ時間は朝の7時15分だ。流石にこんな早い時間には登校していないだろう。俺はいつもと変わらない通学路を歩く。いつも歩いている通学路だがいつもよりも足取りが重く感じる。


 学校について早々、俺は教室の扉を開くとそこには既に芽依の姿があった。教室にはまだ俺と芽依しかいない。


「おはよう、守月君」


 芽依は俺の顔を見るなりすぐに挨拶をしてくる。その声色はいつもと変わらず。あの告白がまるで夢であったかのような感覚に陥る。


「おう、おはよう……」


 俺も彼女と同様に挨拶を返すと、彼女は俺の席の前にやってきて椅子を俺の方に向ける。そして、隣に座るように促してきたので俺は促されるままに彼女の隣に座った。


 いつもと変わらないはずなのに隣にいる芽依の存在に俺は自然と緊張感を覚える。昨日の告白の返事、そろそろ決めておかないとな……。


「あのさ……」


 俺がそう言いかけた瞬間だった。教室の扉が勢いよく開かれたと思ったらそこから人影が入ってくる。


「おはよう~、早いね。二人とも」


 そう言って教室に現れたクラスメイトの姿を見て、俺は芽依に伝えようとしていた言葉を飲み込んだ。


 続くようにしてぞろぞろと教室にクラスメイトが数人入ってくる。静寂に包まれていた教室はいつの間にか喧騒に包まれた。


 芽依は何事もなかったように椅子を元の向きに戻してノートを広げ授業の予習を始める。俺は彼女に話しかけるタイミングを失ってしまい出かけた言葉を飲み込んで同じように授業の準備をする。


 昨日、芽依に告白された。でも、返事を返すならその場だったはずだ。


 だが、そのタイミングを逃してしまった以上、俺は彼女に何も言うことができないでいた。そんな思いもあってか俺の頭の中はぐちゃぐちゃだった。


(なにやってんだよ俺……)


 そんなことを思いながらも時間だけが過ぎていき、あっという間に昼休みに入っていた。


「今日って菜希ちゃんなんで休みなんだろうね。風邪かな?」


 昼休み、俺と芽依で昼食を取りながらそんな話を始める。確かに、菜希は今日学校を休んでいるようだった。授業に出席する彼女の姿がないことが気がかりだった。


 ブロック代表決定戦の後から彼女の様子がおかしいことに俺は気づいていた。


 牧野が帰ってきたら相談するか……。そんなことを思いながら何も考えずに軽々しいことを口走る。


「まぁ、元気になったら学校来るだろ」

「うん……」


 菜希が学校を休んでいるうんぬんかんぬんよりもまずは自分の今抱えている問題を処理すべきだ。自分の性格上ずっと宙ぶらりんの状態で答えを保留し続けるのは苦手だ。


 ずっと頭を悩ませるぐらいなら早めに答えを出したほうがいい。


 だけど、時と場所くらいは選びたいという変なプライドがあった。


「あのさ、芽依。放課後空いてるか?」

「え、あ……うん」


 芽依は視線を逸らしながらそう返事をする。気にしないでと言ったものの、やっぱり告白の返事が気になっているのだろうか……。


「じゃあ、放課後ちょっと付き合ってくれるか?」


 俺がそう言うと芽依は少し間を置いてから首を縦に振る。その動作を見た俺は少しほっとしたような気持ちになった。


 放課後になり、俺と芽依は高知駅から電車で乗り継いで「桂浜」に向かった。


 お互いに家からチャリを持ってきて、集合場所から桂浜に向かって数十分ペダルを漕ぎ続けると小さな浜辺と遥か先まで続く広大な青い海が見えてくる。


 チャリを適当な場所にとめて、桂浜に降り立つ。


 東京と比べてとても空気が澄んでいて、風も海も心地がいい。


 桂浜は高知県民謡の『よさこい節』に「月の名所は桂浜」と歌われている。そんな桂浜の南端には朱色の社が鎮座する「海津見神社」が聳え立つ。


 浜辺の南側の石の階段を上ると太平洋を一望できる景色が広がる。橙色の夕焼けと青い海とのコントラストがとても美しい。


 芽依も夕焼けと広大な海に目を奪われているようだった。


 そんな芽依の横顔を見て俺はふっと微笑む。彼女が不意にこちらを振り向くと亜麻色に輝く長い髪が揺れる。そして、彼女は小さく呟いた。


「綺麗だね……」


 彼女の瞳には広大な太平洋が映っている。その瞳はキラキラと輝いていて海を映しているかのようだった。


 そして、意を決してようやく俺は芽依に向かって言葉を返す。


「あのさ、芽依……」

【コラム】

月の名所である桂浜。広大な海と小さな朱色の社、波の音と潮の香りがするロマンティックな場所だと個人的には思っています。後書きまで読んでる方がいれば、ちょっとリアルな愚痴になりますがこの場で書かせてくださいと思ったんですが長くなりそうだったので気が向いたら書きます!

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