表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いーすぽっ!  作者: ともP
♠ 現代転生(番外編❷)
67/151

055. 特別コーチング(2)

挿絵(By みてみん)

 

 羽田空港に降り立ち、牧野はキャリーバッグを転がして羽田空港の外へと出る。すると、後ろから聞きなれた声が聞こえてきた。


「おーい、牧野さん!!」


 その声は懐かしくも思えたが、すぐに誰なのか分かった。声の主は紅林、TACTICAL GEAR Escapeのストリーマー部門所属で、界隈ではそこそこ有名なストリーマーだ。


 わざわざ迎えに来る必要はないと言ったが、まさか羽田空港まで来てくれるとは思わなかった。


「いや、本当に高知で暮らしてるんですね。昔から行動力は半端なかったですからね」

「まぁ、なんだかんだであっちでの生活気に入ってるよ」


 牧野がそう答えると紅林はいつものように大きな笑顔を浮かべる。彼の笑顔は何故か安心する。安心できる仲間との再会を喜びながら牧野は紅林と一緒に渋谷に向かおうとすると……。


「それで、後ろにいるのは教え子ですか?」


 紅林がそう言って指さす方向を見ると、そこにはフード被った菜希がいた。キャリーバックを持ち初めて降りたつ地に興味津々な様子と、そわそわしているのに一生懸命を隠しているそんな表情が手に取るように分かる。


 それよりも……、今日は普通の平日で守月君たちは授業を受けているはずだ。なのに、彼女が今ここにいるのは……。


「まさか、授業サボったのか?」


 そう聞くと、菜希は目線を逸らすように顔を逸らして、


「ち、違います。サボってないですよ」


 と言ってきた。いやいや、思いっきり目を逸らしてるじゃん……。分かりやすい嘘をつく子だと思った。


 篠宮菜希という子は優等生だと牧野は思っていた。ゲームのプレイも非常に真面目で基本に忠実。


 芽依さんや守月君に比べるとゲームをやっていた時間が短く、まだまだ経験不足な感じは否めないがそれでもプレイ時間が長い二人についていけるだけの実力は秘めていると牧野は評価している。


「学校に電話するけどいい?」


 牧野がそう聞くと、菜希はぶんぶんと首を横に振って後ずさりする。


「私、悔しかった……んです。この前の試合、私何もできなかったから……」


 菜希はこの前の試合を思い出したのか表情が暗くなる。そして、彼女の目には涙が浮かぶ。その様子を見てすかさず紅林が牧野のことを見た。


 その瞳は「女の子泣かしてんじゃねぇよ」とでも言っているようだった。


 確かに、彼女の気持ちは十分に理解できる。IGLを完璧にこなしてみせた芽依さん、決勝ブロックで大暴れした守月君の動き――、ゲーマーは他人と自分をつい比較してしまう。


「私、もっと上手くなりたい……」


 菜希は必死に涙を拭きながら牧野に訴えかけてくる。その言葉から彼女の本気度がひしひしと伝わってくる。そのためだけに見知らぬ地に牧野を追ってついてきたというのなら彼女の思いを踏みにじるわけにはいかない。


「分かったよ……」


 牧野は菜希の思いに答えるべくそう言った。


「だけど、ちゃんと僕と一緒のフライトで高知に帰ること、親御さんには僕が説明するから」

「牧野さん……」


 菜希の表情に少し明るさが戻った。そして、牧野は紅林に目配せして三人で渋谷に向かうことにした。


(本当に世話の焼ける子たちだな……)


 牧野はそんなことを思いながら羽田空港を後にする。ただ、菜希がこうやって行動を起こしたのは驚きだった。まさか、そこまでして強くなりたい理由があるのだろうか……。


「篠宮さんは泊まるとこは大丈夫なの?」

「一応、都内のホテル予約してあります」

「あ、牧野さん。菜希ちゃんのこと夜はちゃんとホテルまで送ってあげてくださいね?」


 紅林がそう提案してきたので、特に断る理由のない彼は首を縦に振った。高知よりも東京の夜は物騒だからな。彼女が一人で出歩くのは不安だろう。


「分かってるよ。何かあったら学校側に怒られるの僕だからね」


 東京に帰ってきたのは親に顔を合わせるのと、東京じゃないとできない仕事の打ち合わせのために戻ってきた。一つ重要な案件も抱えることになるが……。


「まあ、残ってる打ち合わせは全部明日だから今日は観光でもする?」


 牧野の提案に菜希も紅林も賛成して三人で東京観光をすることになった。まあ、東京観光と言っても東京スカイツリーとか渋谷のスクランブル交差点とか……。


「私、スカイツリー行きたいです」


 東京に来たことがない彼女にとってスカイツリーは魅力的に見えるのだろう……。


「じゃあ、スカイツリーに行こうか。菜希ちゃん東京初めて?」

「あ、はい」


 紅林がそう聞くと菜希は少し照れながら頷いた。まさか、こんなことになるとは夢にも思わなかったが……、こうなってしまった以上は彼女のしたいようにさせてあげよう。


(秋葉原にあるeスポーツカフェとか良さそうだな……)


 そんなことを考えているとふと思い出したことがあった。


 紅林は現在スタバトで攻撃的なキャラをピックしているが……、どちらかというと前線を張るキャラではなく、攻撃をこなしつつ敵を味方が攻撃しやすいように援護するキャラをピックすることが多い。


 もしかしたら、IGLに特化した牧野がコーチングするよりも、菜希が得意としてるキャラを普段使ってる紅林が教えた方がいいのか?


 紅林という人物は昔はオールラウンダー。任された場所で、任された役割をこなす器用な奴だった。


 今の龍馬ゲーミングに足りないのは『バランサー』だと思っている。


 絶対的な攻め、的確な指示に加えて必要になるのは状況に応じて動くことのできる選手だ。紅林は攻撃的キャラのスペシャリストでもある。


「どうしたんすか?」


 考え込む牧野に紅林が不思議そうに聞いてきたので慌てて、牧野は「いや、なんでもない」と返す。


(今日の予定はこれで決まったな……。スカイツリーの後は特訓だな)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ