049. ブロック代表決定戦(2)
予選に向けての準備を進めつつ、練習も日々こなしていく。そんな日々が続き、気が付けば予選当日となっていた。
STAGE:0ブロック代表決定戦に参加する学校は、全国から900校以上ある中でも上位20校しか本戦には出場できない。
「いよいよだな」
俺は部室のモニターに映し出されたステージと、画面に表示されたトーナメント表を何度も確認し直す。予選は北海道ブロック・東北ブロック・関東ブロック・中部ブロック・関西ブロック・中国-四国ブロック・九州-沖縄ブロック・オンライン高校ブロックの8つのブロックに分かれて行われる。
それぞれのブロックで抜けられるチームは2つのみ、関東ブロックおよびオンライン高校ブロックは母数が多い為、全国へ抜けられるチームが1つ増えて3チームとなる。
「まあ、中国-四国ブロックのレベル帯ってどの程度なんだろうな」
eスポーツは国家間でのレベルがかなり顕著に差として出やすい。STAGE:0は国内大会、地方と都心部でどれほどの実力差がどのぐらいか正直分からない。
ただ、今回オンライン大会ブロックや関東圏のブロックからは同年代でゲームがそれなりに自身がある層……、つまり次世代の競技になりうる人材がエントリーする可能性もある。
個人的にこれは楽しみでしょうがない。
「こればっかりは出てみないと分からないというのが本音だね」
牧野はそう言うと、パソコンに向かって作業を継続する。
「関東ブロックはチームが多いからブロック数が多くて、予選は上位数チームが入賞して、最後に決勝で全国に出場する高校を選ぶような仕組みか……。甲子園みたいなもんだよな」
スポンサー企業もかなりついているし、業界的に注目度の高い大会となるのは間違いない。
「とりあえず、予選を突破することを考えないとね」
芽依はそう言うと、自身のディスプレイに目を移した。俺はそんな芽依の顔を見てフッっと微笑む。
(芽依もなんだかんだで緊張してるんだな……)
「じゃあ、僕は見守ってるからね」
牧野がそう言うと、芽依と菜希が頷く。俺も静かに頷く。中国-四国ブロックは第一、第二ブロックでそれぞれ上位半分のチームが決勝ブロックに進む。
試合は1ブロックで3戦行われ、決勝も3戦で決着し、キルと順位ポイントが高い一位と二位のチームが予選を突破するような仕組みになっている。
(さて、集中……)
ディスプレイには見慣れたスタバトの画面が起動されている。マッチングは運営がそれぞれ対象のチームに割り振りをしてくれている。
龍馬ゲーミングは4チーム目に割り振りが終了し、試合の待機画面で待機する。マッチ時間は平均でだいたい30分、インターバルも挟み、午後から全国切符をかけた決勝を行う。
「ふぅ……」
俺は息を吐く。緊張感はない。そもそもオンラインでの大会なんて今まで何度も経験してきた。それでも、どこか不思議な感覚があった。それが久しぶりの競技だからなのかは分からない。ただ、ワクワクしていた。
「始まった……」
画面では試合が開始され、各チーム自由に落下するが流石に初動で被せようとするような無謀なチームはない。
「物資漁ったらすぐに安地(安全地帯)に向かおう」
デスゾーンの収縮まで時間はそんなに残されていない。だが、芽依も菜希も落ち着いていて物資の漁る時間はスムーズに進んでいた。既存のマップの練習や座学はほとんどこの一ヵ月で詰め込んだ。牧野はまだ足りないと嘆いていたが、俺としては充分だと判断している。
明確に最初の時よりも建物を周回して物資を拾う速度が速くなっている。物資を拾うのが速くなればバトロワの性質上物資を十分に蓄えたうえで安地に素早く移動できる。
「お、敵来た……」
デスゾーンが収縮していく中で相手チームも物資の回収が終わったのかこちらに向かって走ってくるのが見えた。初めての接敵……。俺は潰すことを考えていた。
(相手は近接二人と遠距離一人か……潰すしかないな!)
「待って……、まだ接敵はしないで安地入ってからにしよう」
芽依がスモークグレネードを投げて視界を塞ぐ、敵も視界を奪われたようで、その場に立ち止まりながら敵の位置を把握する。
(スモークグレネードの視界が晴れるまであと数秒……)
「右側の建物から安地向かおう。ピンのところに向かって。追ってきたときに備えて感知タレット置いて」
そう練習で一番変わったと実感したのは芽依のオーダーだ。IGLは実践経験がものを言う。練習で何度もやるのは前提だが、実際に敵と戦闘しながら状況判断ができるか、それが一番のカギとなる。
芽依は大会を見据えてオーダー方針をしっかりと決めてきていた。それがしっかりと分かる。
(狂犬をできるだけ抑えつけて最終盤で暴れさせろっていうな……)
前世で牧野が同じようなことを言っていたのを思い出す。あの時はいやいやと思ってたが牧野は正しかった突っ込み癖のある二人を上手く掌握する術をよく知っている。
俺たちは安地に向かって走り出す。安地に入ると芽依は偵察ドローンを起動して、周囲の建物を警戒する。大量の情報を頭にインプットしながら戦況を把握する能力……。それは俺が持ち合わせていないものだ。芽依は画面から目を離さないまま俺に指示を出してくる。
「北に見える建物の左側から3人来てて、一人が多分スナイパーだね。あの高台から狙われてる部隊撃って」
そう指示するとドローンとの接続を解除して飛び降りる。俺と菜希も指示された高台から逃げ損ねた敵を狙う。俺が一発で仕留めると、その直後に獲物をなくした狙撃手がこちらを狙って来ようとする。
「奥にいる部隊は相手しなくていいよ。内側に入ろうとしてくる敵を捌いて!」
芽依が指示を出すと、俺たちは芽依の背後を守りながら敵チームを迎え撃つ。バトロワにおけるスナイパーはそんなに脅威ではない。もちろん、デスゾーンの収縮前はかなり怖い。だが、収縮と同時に近距離での戦闘が増えるとただの的になる。
最終盤、普通ならキルを取るために突っ込みたい衝動を芽依は必死に抑えつけ、確実にキルを取っていく。俺たちはそんな芽依のオーダーに応えながら、敵をしっかりと倒していった。
「よし、勝った!」
残り3部隊で他の部隊が戦闘を始めたのを見て、俺たちは戦闘が終了する直後を狙って勝利を奪い取った。回復する暇すら与えずに速攻で決着を付けたので芽依のオーダーは完全にハマっていた。
「ナイス!」
「ナイス連携……、勝てたね」
そんな三者三葉の反応を示す。俺は自分の手のひらを見ながら少し考える。
(なんだろう変な感じだ。まだ、体と戦闘が馴染んでいないようなそんな感じだ)
そう考えていると牧野がこちらにやってきた。
「いやぁ、勝ったね。完璧な試合運びだったよ」
チーム連携は完璧だ。俺の銃を撃ってる時の違和感さえ解消されればもっと舞える。ただ、前世の感覚も捨てきれない自分がいる。それが今の違和感の正体だ。
「まだまだ、これからだね」
そんな芽依の言葉にはハッキリとした自信があった。迷っていた彼女の姿はもう既にそこにはない。
「次も勝つぞ」
俺はそう言って拳を突きだす。すると、芽依と菜希も同じように拳を突き出して俺の拳にぶつけてきた。




