051. 中間試験(1)
五月も中旬に差し掛かり、段々と夏を感じられるような陽気になってきた。
桜が舞う春の穏やかな季節は終わりを告げ、これからの季節はジメジメとした梅雨が待っているのだろう。
五月初旬の大型連休が明け、段々と学校生活にも慣れ親しんできた。そして、そろそろ中間試験が差し迫っている。これから迎える試験週間のことを思うと憂鬱になる。
「はぁ……」
窓の外に見える空を見ながら俺は溜息を吐く。どうにも抱えている問題は盛りだくさんだ。中間試験は言わずもがな、六月初めには例の大会の予選もある。
「いったいどの程度のレベル感なんだろうか……」
考えることがあまりにも多すぎて、休まる暇など到底なさそうだ。牧野という強力な後ろ盾を得られたわけだが、俺たちはそれでようやくスタートラインに立てただけに過ぎない。
これから残りの時間は、ひたすらに練習あるのみだ。
だが、その前に――、
「ねぇ、守月君。中間試験の勉強はしてる?」
「あぁ、全然してねぇ……」
俺の答えを聞いた芽依は「やっぱり、授業いつも寝てるからそうだと思ったんだよ」とあきれ顔を浮かべながらそう言ってきた。
「そういう芽依は、勉強してんのか?」
「そりゃあ、してるよ。 赤点取ったら夏休みは補習だよ?」
「え、そ、そうだな……」
俺が寝こけている授業中も、芽依はしっかり勉強してるという。俺だけ赤点を取ったら牧野に何を言われるかわかったもんじゃない。
「守月君って、やれば出来るタイプなんだから、頑張ってよ」
(美和先生と同じようなことを言うんじゃないよ……)
俺がまだ高校生だった頃――、いや今も高校生なのだが……、俺は、担任だった美和先生にまるっきり同じような台詞を言われたことがある。
あぁ……、懐かしい記憶だ。
「じゃあさ、一緒に勉強しようよ」
「え?」
「だから、私が守月君に教えてあげる。それなら、守月君も赤点を回避できるでしょ?」
確かに芽依に教えてもらえば赤点は回避できるかもしれない。だが、それだと芽依は俺のために時間を割くことになってしまう。それはなんか申し訳ない。
「いや、それは悪いからいいって……」
俺は丁重にお断りしようとするが、こういう時の芽依は頑固で絶対に折れない。昔からずっとそうだし……、こういうところは母親である美和先生にそっくりだ。
「私は守月君に勉強を教えることで、復習できるからいいんだよ」
確かに芽依の言うことも一理ある。
それに、こうなってしまったら芽依はテコでも動かないだろう。
俺だって別に赤点を取りたいわけじゃない。ならば、ここは芽依の厚意に甘えることにしよう。
「じゃあ、お願いしてもいいか?」
「うん!任せておいてよ!」
こうして俺は芽依による個別授業を受けつつ、中間試験に向けて勉強をすることになった。とりあえず、大会の件は試験が終わってから考えることにしよう。




