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いーすぽっ!  作者: ともP
♠ 現代転生(高校生編❶)
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044. 準備室の掃除(1)

挿絵(By みてみん)


 時間はもう最終下校時刻に近づいていた。放課後が終わって、牧野を出迎え、学校に戻ってくるというのは結構な時間を要し、更にかなり疲れた……。


(まぁ、たまにはこういう忙しさも悪くないか……)


 俺はそんなことを思いながら、芽依にメッセージを送る。既読はすぐにつき「まだ、コンピューター室に菜希ちゃんといるよ。新コーチには会えたの?」というメッセージが返ってくる。


 良かった……、まだ部室にいるようだ。俺はスマホで「すぐにそっちに向かう」と連絡を入れると、コンピューター室のある方角へ牧野を誘導する。


「じゃあ、入ろうか……」


 中を開けると、二人が待っていた。牧野は中にいた二人を見ると「この子たちがチームメンバーで合ってるか?」と聞いてくる。まさか、女性だとは思わなかったらしい。


「ということで、今日から正式に龍馬ゲーミングのコーチに就任することになった牧野隆史さんだ。皆も知ってる通り、元プロゲーマーなので色々と教えてもらおう」


 二人とも入ってきた牧野に気を取られて、俺の話が全く耳に入っていないような感じだった。


「えっ、()()ですか?」

「本当に知ってるんだね。まだ、知ってる人がいることに驚いたよ」


 この空間は確かに異色ではある。だが、俺たちが残した功績は意外と世間から認知されていて、コアなゲーマーからは「伝説のチーム」と語られることが多い。


「へぇ、これが部室か……。このスペックでゲームをやってるの?」

「流石にそれじゃあ動かないのでここでは反省会をしてます」

「反省会?」

「毎日ここで夜に一緒にやった試合の反省会をしてるんです」

「実践は各々の自宅でやって、反省はこの部屋を使っているということか……」


 牧野は「なるほど……、そうだとすると難しいな」と呟いた。


「この教室は同好会の『部室』として学校側から用意されてるものかい?」

「いえ、許可を貰って毎回借りてるだけですけど……」


 そう俺が答えると牧野は少しだけ考える素振りを見せ、


「なら、ちょうどいいだろうな……。あぁ、悪いけど、俺はもう一度下の職員室に行ってくる。皆はいったんこの教室で少しだけ待っててくれ!」


 そう言い残すと、牧野は教室の扉を開け、足早に教室の外に出て行ってしまった。俺は待たされている間にことの経緯を芽依と菜希に話しておいた。


 牧野が戻ってきたのはちょうど昨日の出来事を話し終えるくらいだった。


「活動場所を変えよう。ここのパソコンは使い勝手が悪そうだからね。どうやら特別棟の三階に掃除もしてない空き部屋があるらしいからそこの鍵を借りてきた」


 という牧野の言葉に俺たちは乗せられるまま教室を移動する。窓の外を見ると、野球部がグラウンドの整備を始めているような時間帯だった。


 夕焼け空が徐々に暗闇に侵食されていく中、俺たちは三階の空き教室へとやってきた。


「うわ、何ここ……埃がすごい……」


 芽依が真っ先に言葉を漏らす。確かに、学校の施設とは思えないくらい埃まみれで、他の教室とは一線を画する様子だった。


「まぁ、これはしょうがないか。そりゃあ簡単に貸してくれるわけだ」


 牧野は笑いながら言った。なるほどな、確かにこの場所ならすんなりと鍵を貰えたのにも合点がいく。次の牧野の言葉も容易に想像ができた。


「明日はここの片づけをしようか。部屋はかなり広いから掃除すれば見た目は良くなると思うし……」


 芽依は「あはは……」と苦笑いを浮かべた。菜希は「コイツ、正気かよ」と言いたさげの表情で俺のことを見ている。なんで、俺なんだよ……。


「さて、部屋の様子も分かったことだしひとまずは解散にしよう。明日は何時に授業が終わるかな?」

「いつもと同じなら16時くらいですかね……」

「なら、終わり次第、汚れても良い服装でここに来てくれるか?」


 まあ、そうなるわな。俺は牧野に「了解です」とだけ言い残す。芽依も菜希も若干引き気味に「わかりました」と返事をしていた。


「明日には届くと思うから部屋の掃除はすぐに済ませておきたいね。じゃあ、また明日!」


 牧野はそれだけ言い残すと足早に教室を後にし、その背中はすぐに見えなくなってしまった。


「なんか……、すごい人だね……」

「ま、まぁ、そうだな……」


 牧野が去った後の空き教室は静寂に包まれていた。既に部活の時間は終わりを迎えており、オレンジ色の夕日が段々と陰ってきている。


「とりあえず、帰るか……」

「そうだね……」


 俺たちは部屋の電気を消し、そのまま帰宅することにした。


(なんか、一日ずっと疲れっぱなしだった気がする……)


 だが、牧野がいるという空間に不思議と違和感はなく、俺はその時間が少しだけ楽しみで明日からの活動に期待を寄せていた。こんな感情は久しぶりだ。

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